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「ぷはーっ!水うめぇ!!」



革袋の水筒に入った水を飲み、マイルが声を上げる。あの後しばらく歩き、小休憩を挟んでいる。…あと30分も歩けば森を抜けられそうだな。俺は現在地を確認し、マップを閉じる。



「!…誰か来る!…」


「!?」



表情を変え、大剣の柄に手をかけるマイル。マイルの視線の先に注意を向ける俺達。数秒後、落ち葉を踏む音が聞こえ…




「あらら、バレたか」


「誰だ?お前ら」



木陰から三人の男が現れた。警戒しろ!アド!



「おいお前ら…痛い目に遭いたくなかったら、金とアイテム置いてきな」



三人の内の一人が前に出て睨む…。



――――――――――――――

  クロム   Lv33 

 [上級剣士]  ランクC

 ギルド : 無所属

――――――――――――――



え?ジョブもギルドも見える…【隠蔽】のスキルを持っていないのか?


グレージュ色のウルフカットヘアーに整えられた顎鬚あごひげ、ワイルドな印象の男性、クロム。二十代後半くらいかな?赤褐色のライトアーマー装備、手には大振りのバスターソード…いや、それにしても…



「あぁ?…たった三人かよ?」



マイルが大剣に手をかけたまま、クロムと対峙する。


いや、そうなんだよなぁ…レベルも俺達とそう変わらないし、後ろの二人はクロムよりレベルが低い。子供のルルアを戦力外と見たとしても…俺達を襲うには見立てが甘くないか?


後ろの二人は共にレベル30…

一人は背が低い小太りのソフトモヒカン…【重戦士】ランクC、名前はボン。もう一人はボンとは対照的に細長い体躯で、顔も細長い…【槍使い】ランクC、名前はキョン。


魔法職もいない見るからに物理一辺倒のパーティ…いやー、なんというか…負ける気がしない。



「ナギ、コイツらはオレに任せろ…久々に暴れてやる」



マイルがニヤリと笑みを浮かべながら大剣を抜き放つ。



「なっ!!…待てお前ら!オレ達はあの極悪非道の犯罪ギルド!“”のメンバーだぞ!?痛い目に遭いたくなかったら、金とアイテム置いてきな!」



先ほど聞いたばかりのセリフを、再び吐くクロム。なんだろう…なんかこの人…



「フッ……そんなハッタリかましたって無駄だぜ?」


「な、なに!?」


「お前のステータスは“ギルド無所属”になってるからなぁ!!」



鬼の首でも取ったかのようなドヤ顔で言い放つマイル。ビシッとクロムを指さしてポーズを決めている……気分は名探偵ですか?



「……あ、いや…シェンフールは犯罪ギルドであって、センターギルドに認可された正規のギルドじゃねぇから、なんていうかその…グループ?的な?だからステータスには表示されないわけで…言ってることわかるか?」


「え?そうなのか?」



ご丁寧にあれこれと説明するクロム。…うん、やっぱりこの人……お馬鹿さんの匂いがする。…顔は結構ワイルド系でイケメンなのになー。



「フッ……だがそんなこと言って、オレを脅しても無駄だぜ?」


「な、なんだと!?」



不敵に笑う、マイル…



「なぜなら……オレは…」



ごくり…とクロムが息を吞む。



「…その“”とやらを知らないからなぁ!!!」


「な、なにぃ!!?」



再びドヤ顔の笑顔を振りまくマイルさん。そうだった、マイルこいつもお馬鹿さんだった。



「はっはっはー!!」


「く…くそぅ…」



高笑いを上げるマイル…何故かひるんでいるクロム…いや、もう、なにこれ。



「お前らごとき、このマイル様だけで充分だ…」



マイルが三人ににじり寄る。



「なんだとー!!」


「こ、後悔させてやるっ…」


「待て!!オメェら!!」



武器を構え、打ち合おうとするボンとキョンを片手で制するクロム…。



「向こうが一人でやるって言ってんだ…こっちだって一人で相手するのが筋だろうが!」


「で、でも…」


「安心しろ…オレは負けねぇよ」



ボンとキョンの二人に微笑むクロム。



「つ、ツヨシさん…カッケーっす!!」


「…おうよ」



……へぇ、クロムの本名ツヨシなんだ。



「…って、ばっ!ボン!…こっちの世界で本名で呼ぶなって!!」


「あっ!!!すいやせん!!」


「早くやろうぜ?…ツヨシくん?」



マイルが煽る。



「ちっ…仕方ねぇ…覚悟は出来てんだろうな?クソガキ…」



マイルとツヨ…クロムが睨みあう。早く終われ。



「ナギ…いいの?」



ルルアが不安そうに俺に尋ねる。



「あぁ、いいのいいの…ああいうのは、マイルに任せよう。じゃあよろしく、マイル」


「おうよ!…マイル兄ちゃんのカッコいいところ見ててね!ルルア!」



あーはいはい早くして。



「………」

「………」



マイルとクロム、睨み合う二人が、同時に地を蹴った。



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