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昼を過ぎ、森の中を進む俺達。背の高い木が群生し、少しひんやりとした空気を肌で感じるこの森は、ルルアの故郷であるクルド村を守るように取り囲む針葉樹林だ。
まぁ正確には、この森の中央を切り拓いて造られたのがクルド村、ということになるのだが。シャロ―の森と呼ばれるこの森が、クルド村の人々の生活基盤を支え、恩恵をもたらしているのだという。
そんなシャローの森を、進んでいる訳なのだが…
「【エレクト】!!」
ルルアが雷の魔法を放つ。青白い雷が杖の先から奔り、ゴブリンの胸を
「ガギッ…」
ゴブリンは絶命し、倒れる。…凄い。ルルアの成長スピードは恐ろしいものがある。全属性に適性があるとかで、下級魔法のみとはいえ、5つの属性の魔法を扱えるルルア。そのルルアのレベルは現在21…使える魔法が増えたわけではないが、戦闘での立ち回りや、攻撃タイミング等の基礎戦闘能力が格段に上昇しているのが分かる。
もうすぐクルド村に到着するってことで、ルルアも張り切っている…のかな。それにしても…
「どこにでも居やがるんだな、ゴブリンって……にしてもやるなー!ルルア!」
「ルルアたん…ぐっじょぶっ」
「えへへ、ちょっと待ってね…【エンビアンド】!」
ルルアが倒したゴブリンの亡骸に手をかざし、魔法を唱える。ゴブリンの身体が淡く光りだす…。これだ…
これも
俺達転移者が魔物を攻撃すると、攻撃箇所がしばらく赤く発光する…ゲームで言うならダメージエフェクトってところか。だが、現地人が攻撃するとこうなる。俺たちの住む現実世界のように、傷が肉体に刻まれる……バトスさんが剣でサイクロプスに攻撃した時なんて、血が噴き出していた。
…この違いはなんだ?
何か分かるか?アド?
『
!…どういうことだ?
『現地人は生身の肉体を持っているのに対し、マスター含むプレイヤー…つまり転移者の身体は全て“
命力…確か、現地人はHPの事を命力、MPを
『はい。この世界の生命体は、肉体の中に命力が入っているとするならば、マスター含む転移者の身体は命力の塊…命力体と言えます』
なら、敵への攻撃の影響が現地人と違うのは……
『本来であれば肉体が傷付き、それに
なるほど…俺達はこの世界ではまるで実体のない亡霊のようだな。アリシアさんの、“
…待て、なら武器の攻撃はどうなる?俺達の身体が命力体って言うものだってことは分かったが、俺達が使っている武器は元々現地人が作製した物ではないのか?
『武具に関しては、転移者のアイテムストレージに保管され、装備される時に純粋な物質から命力体へと変換されているようです』
俺達の武具も命力で出来ている?…これは……面白い
「安らかに眠ってください…」
ルルアが祈るように目を閉じる。ゴブリンの亡骸は光の粒子となって消えていく…。
転移者が魔物を倒すと、自動的に敵の身体は消滅するが、現地人が命を奪うと亡骸が残る…ルルア曰く、現地人は【エンビアンド】という“葬送の魔法”を使って亡骸を自然に還すのだという。
現地人は肉体を持ち、血が通っている…設定、と言うにはあまりにも……やはりこの世界は…
「……実在する…?」
「おーいナギ!?…まーた何を考えこんでんだ?」
「あ、お…悪い」
また考え込んで、自分の世界に入ってしまっていたようだ。注意しなきゃな。だが今回分かったことは情報としては大きい。色々と試して調べてみるか…。
「終わったよ」
ゴブリンの“葬送”を終え、ルルアが立ち上がる。
「…よし、クルド村まであと少しだ。行こうか、ルルア」
「うん!!」
俺達は再び歩き出した。
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