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「ここから先はしばらく荒野が続いてる…この荒野を抜けた先にリシングの街があるはずだ」


「何もないけど…視界は良好…索敵には苦労しないかも…」


「ハリスさんは、この荒野に魔物はほとんど出現しないって言ってたから、比較的楽には進めると思う」



 リラの山道を抜け、荒野へと入った俺達。所々ひび割れが目立つ、乾いた大地。周囲に敵影もなし。一時間も歩けばリシングの街が見えてくるはずだが…


 俺は歩きながらツールボックスからスキルリストを開き確認。複数のパッシブスキルを習得したが、スキルポイントが残り10ポイントか…スキルレベルを上げるのは後回しにするか。


【HP自然回復】Lv1…60秒毎にHPを1回復する。【MP急速回復】Lv1…30秒毎に1ずつ回復するMPが、稀に2ポイントになる…か。この辺は有難いスキルだが、レベル1だと微妙な性能だな。スキルポイントが溜まるのを待つしかないなー…。



「後はー…」



【気配感知】Lv1…集中することで周囲半径5mの敵の気配を察知できる。…いや5mって…目視可能な距離だなー。まぁ、暗闇とか視界が悪い場所で…んー、色々試してみないと分からんな。



 俺は考えるのを止め、先に進むことへ専念した。予定通りならこの旅も、明日で終わる…ルルアの故郷、クルド村…そこに着いたらルルアともお別れか…。


 若干の寂しさを感じながら、楽しそうに歩くルルアを見て、俺は微笑んだ。






 ♦



「で…ほんとに何事もなく」


「…着いたな」



 あれから2時間足らずでリシングの街にたどり着いた俺達。街に近づくにつれ、人影はちらほらと目にしたが、魔物とは一切出くわさず、あっさりと街に到着した。



「キレーな街だね…」



 ルルアがキョロキョロと辺りを見渡し、ポツリと呟く。クランツと比べると規模の小さな街だが、レンガ調の家が立ち並び、整備された石造りの道の脇には水路が流れ、緩やかな水音が安穏とした雰囲気を醸し出している。日が傾き、おもむろに薄暗くなっていく街を、点在する街灯が優しく照らす。


 落ち着いた雰囲気の街だな…。人々がせわしなく行き交い、喧騒にまみれていたローユの街とは対照的だ。でも、こういう静かな街もいいよなぁ…。



「さてと、とりあえずリシングのセンターギルドに行って、飛翔石板を開放しよう」


「ほいほい!」



俺はマップを開き、拡大しセンターギルドを探す。それはすぐに見つかり、俺達は足を向ける。



「んー、どこの街でもセンターギルドは似たような見た目してるんだな」


「そう…だね…」



割と簡素な造りの木造で赤い屋根、取ってつけたような看板が目印。冒険者御用達のセンターギルドである。


中に入ると、ちらほらと冒険者がいる程度で、テーブルには空きが多い。ローユの街のセンターギルドはあんなに騒がしかったのにな。



「いらっしゃい…おや?見かけない顔ですね?新人さんですか?」



店の奥のカウンターからまだ幼さの残る少年が話しかけてくる。

上品なシルクの様な輝きを持つ金髪、整った顔立ち、蒼い瞳…そして尖がった耳…え?この男の子ってもしかして…



『解析終了。マスターのお察しの通り、エルフ族です。リシングのセンターギルドのマスターのようです』



アドの声が頭に響く。おぉー!エルフ族!ファンタジーと言えば…の王道種族!…え?この子がマスターなの!?




「僕はここのマスターのフィルと申します。何か御用ですか?」


「うぇ!?君がマスター!?」



マイルが驚きの声を上げる。



「あはは、エルフ族は長命ですので。これでも僕は60歳を超えてるんですよ?」


「エルフ族!…感動っ…」


「うおぉー!!初めて見る!!」



…うんまぁ、この世界に来てから見るもの大概初めて見るもんだしな。



――――――――――――――――――

 フィル=ファインズ Lv???

 [センターギルド:マスター] NPC

――――――――――――――――――



やっぱりレベルも見えない…

って、俺の【識別】スキルは無くなったんだっけ?

アド、お前の解析スキルなら見えるか?



『解析出来ません。高位のスキルによりブロックされているようです』



そうか、やはりセンターギルドの人達は高い【隠蔽】のスキルを所持してるってことか?



「クランツのハリスさんに紹介して頂いて、お訪ねさせてもらったんですが…」


「あぁ…あの偏屈へんくつジジイの言ってた」


「え?」


「あ、いえ!何でもありません。話は伺っております。宿をお探しですね?此処の向かいに宿屋がありますよ」



そう言って微笑むフィル…なんか今黒いものを見たような気が…。それにしてもセンターギルドには色んな人がいるんだな。


俺達はリシングの飛翔石盤を開放し、フィルに紹介してもらった宿へと向かった。

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