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夜が来た。
俺達はまだリラの山道を抜けられずにいる。日が落ちてから、魔物との遭遇率が格段に上がった。敵のレベルは20足らずで戦闘自体に苦労することはないが、次から次へと現れるモンスターに足止めされ、なかなか先へ進むことが出来ない。
「もう少し行けば、ハリスさんに教えてもらった野営地があるはずだ。そこなら魔物の出現率が低いらしい。今日はそこで休んで、夜が明けてから進もう」
「オッケー!」
「ルルアたん…大丈夫?」
「うん…まだ、頑張れるよ」
…流石にルルアにも疲れが見えるな。早く休ませてやらないと。俺達はアイテムショップで購入していた松明の明かりを頼りに、先を急いだ。
♦
焚火がパチパチと音を立てる。俺達は野営地を見つけ、そこでテントを張り、暖を取った。テントの中ではルルアが静かに眠っている。時刻は午後10時。ここからは交代で見張りを立てながら休むことになる。
「ほれ、ナギ。ハーブティーだ」
「お、ありがとう」
マイルが金属製のマグカップを手渡してくる。中にはアイテムショップで購入した茶葉を煮出したハーブティーがいい香りを立てている。マイルはそのまま俺の隣に腰掛けた。
「しっかし、驚いたぜ。宿屋でナギの話を聞いた時は…まさかお前があんな事考えてたなんてな」
マイルがハーブティーを一口啜り、言葉を溢す。
「でも…ナギらしい…」
ルルアの様子を見ていたノノがテントから出てきて、俺の向かいに座る。この旅へ出発する前日、俺はノノとマイルに俺の考えと仮説を話していた。二人共最初は目を丸くするばかりだったが、直ぐに俺の考えに賛同してくれた。本当にこの二人が居てくれて心強い。
「…多分、九ノ原先輩も何か気付いているはず。その内合流したいとは思うけど、俺達はもっと強くならないとな」
「そうだな!なんたって、目標がアレならなー!」
マイルがニヒヒ、と笑う。
「でも…プランは…あるの?」
「…これを見てくれ」
俺はツールボックスからマップを開き、最大縮尺で表示する。マップは所謂世界地図のような状態に。
「この世界には5つの大陸と100以上の国が存在する。広さは現実の地球と変わらない。前にも言ったが、俺はこの世界が単なるゲームだとは思っていない。おそらく九ノ原先輩も同じ結論に至っているんだと思う」
「だから…この世界の秘密を…探る」
「そう…でもこれだけ広い世界だ。俺達個人が地道に動いたところで、得られる情報には限りがある。だから、動かずとも情報が集まる体制を整える」
「つまり?…」
「この世界に…俺達の国を創る!」
「だっはー!!何度聞いても…」
マイルが手で目を覆いながら、顔を天に向ける。
「「ワクワクする!!」」
ノノとマイルの声が重なり、目を輝かせる。ホント…良い仲間に恵まれたな。
「この世界でプレイヤー…つまり
「人や物資…情報も…集まる」
「その通り。だけど、それには今の俺達では、力も財力も人材も…何もかもが足りない。だからまずはセンターギルドで名を上げる!」
「有名ギルドになって、仲間を集めるんだな?」
「あぁ…で、その仲間についてなんだが…」
「「?」」
「
パチン、と焚火の火が大きく弾ける。
「この世界にはまだ転移者と現地人の間には隔たりがあるようだ。お互いに牽制しあっているように思える。今居るクランツ王国は転移者ともそれなりに上手くやっているみたいだけど…ハリスさんによるとそもそも転移者入国禁止の国も存在するらしい」
「そこも…ゲームとしては…不自然」
「そう、プレイヤーが楽しむために作られた
「「………」」
二人がまじまじと俺の顔を見つめてくる。
「ほんと、ナギって…たまーにそういう突拍子もないこと言うよなぁ!」
「なっ…」
「でも…仕方ないから…付き合ってあげる」
「気になったら納得するまで調べつくす…ナギは探究心の猛獣だからなー!」
「なんか言い方悪くないか!?…プレイヤーが国を治めている実例もあるし、この世界の数日以上が、現実世界の一晩に集約されるって性質なら可能なんじゃないかって…」
「「はいはい!」」
「む…」
二人が茶化してくる。まぁ…突拍子もないことだってのは分かってるんだけどな。
「でも、“楽しめる”なら大賛成だ!」
「ノノも…異論なしっ!…」
「…ふっ、ありがとう」
「でも国を作るにも、どこに作るんだ?どっかの国を乗っ取るのか?」
「それなんだが…」
俺はマップを拡大する。
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