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「ナギ!!」



マイルと共にしばらく歩くと、ノノとルルアの姿が見えた。ルルアが涙を浮かべながら駆け寄ってくる。



「ナギ!死んじゃうかと思った!!」



泣きながら俺にしがみつくルルア。心配…かけちゃったな。



「大丈夫だルルア、死んだりしないよ」


「うぅ…」



いや、まぁホントに俺達はこの世界じゃ死なないんだけど…。

俺はルルアの頭を撫でて落ち着かせる。



「ナギ…ちゃんと…帰ってきたね…」


「実は…バトスさんに助けられて。覚えてるか?クランツのセンターギルドですれ違った、バトス=ローガンって人なんだけど…」



俺はバトスさんに助けられたことをノノ達に話した。



「え!?…バトスさんって……“ぐれーくろす”っていう人?」


「!!…ルルア、知ってるのか!?」







その頃…



「本当に面白いボウズだ…」



ローユに向けてリラの山道を一人歩く男、バトス=ローガン。



「しかし、…遂に現れたか、“器を継ぎし者”が。ナギ…か。このバトスが見極めようじゃないか、お前が通りの男かどうか!」



バトスはニヤリと笑みを浮かべる。



「…っと、歳を喰うと、独り言が多くなっていかんな」



バトスは自嘲し、苦笑いをするが、直ぐに鋭い目付きに変わり…



「…なんでぇ、コボルトかよ。お前らは依頼のターゲットじゃねぇんだけどなぁ」



バトスを取り囲む、4体のコボルト。



「ゲゲゲゲ!!」

「ゲガガギ!!」


「…はぁ~、まったく…平原のオオカミ共でさえ、分をわきまえて強者には近づかぬというのに。己と相手の力量差も分からんとは…」



4体のコボルトが一斉にバトスに跳びかかる!



「はぁ~あ、お前ら狩っても金にならんというのに…」



ぼやきながら、剣の柄に手を掛けるバトス…

次の瞬間には4体のコボルトがバラバラに切り裂かれていた。





「バトスさんのこと、知ってるのか?ルルア」


「うん…ルルアが奴隷だった時、センターギルドで冒険者の人達がよく話してた。…“ぷれいやー”?を襲ったこともある…とか、危険だから近づくな…とかって冒険者の人達が話してるのを聞いたの」


「!…」



ますますバトスさんの素性が読めないな。プレイヤーを襲った?…あのバトスさんが意味もなく、プレイヤーと戦闘をするとは思えないが…。火のない所に煙は立たないともいうし…一体どういう人なんだろう。



「で、でもね!…バトスのおじさん!悪い人じゃないよ!?」


「!?」


「おじさんね…前のご主人様に内緒でルルアにお菓子くれたりしたの!!」


「「「!!」」」



転移者ストレンジャー嫌い…なのか?いや、それにしては俺を助けてくれたし…。




「んー、まぁとりあえず良い人ってことでいいんじゃないか!?実際オレ達は助けられたわけだし、オレは好きだけどな、あのおっさん!!」




…まぁ、そうだな。あの人と敵対する理由もないし、したくもない。…まあ敵対出来るようなレベルでもないわけだけど…。



「そうだな、バトスさんには次に会うことがあれば改めてお礼をしよう。さて、なんとか無事に合流出来たことだし、先を急ぎますか!」


「「「おー!!」」」



俺達は再び、クルド村へと向かう道を進みだした。

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