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「なるほど…ではあの獣人族の娘をクルド村まで帰すために…」
「えぇ、はい…」
俺はバトスさんに此処までの経緯を話した。バトスさんはローユのセンターギルドで俺達を見かけ、奴隷でもない獣人族の少女を連れていて不思議に思っていたのだとか。
「
「あ、あの…バトスさん?」
バトスさんが何やらぶつぶつと呟き、笑みを浮かべる。何を考えてるのか、さっぱりわからん。
「バトスさんはどうして此処に?」
「ん?…あぁ、俺はこの山道に出現する魔物の討伐依頼を受けてきたんだが…騒がしいと思ったら、ボウズがサイクロプスに襲われているじゃねぇか。少し話してみたいとも思っていたからな、助太刀したまでだ」
「そう…ですか」
あまり他人とは関わらない人だって聞いてたけど、意外と気さくに話をする人だな。クランツ王国各地を放浪しながら暮らしているとのことだが、この強さ…一体何者なんだ?この人。
「…しかしボウズ。誰に狙われてるんだ?」
「え?狙われてるって…」
「あのサイクロプスは言うまでもないが、此処らに出現するような魔物じゃねぇ。飛翔石無効化の結界まで張られていたんだ…まず、何者かが召喚した魔物と見て間違いない」
「……」
てことは、やはりあのサイクロプスは俺に向けて放たれたものと見て良いだろう。通りで、俺だけを執拗に狙って来ていたわけだ。だがそうなると…俺に恨みを持つような相手…真っ先に思い付くのはガザックだが、ガザックが自身よりレベルの高い魔物を使役出来るとは思えない。ならば…ガザック個人というより、“
この世界の情報を集めるにも、この世界にとって有力な存在になった方が都合がいい。俺達ギルドの方針は決まった…それを成すためにも、もっと力をつけなければ…。
「はぁーあ…しっかし、この感じだと標的の魔物はビビって出てこねぇわなぁ…。楽に酒代稼げる丁度いい依頼だったのになぁー」
「なんか、すみません……あ!あの、今のサイクロプスとの戦いで2000G程ドロップしたんですけど、良かったら」
「なにっ!?いいのか!?」
「はい!寧ろ、サイクロプス倒したのは殆どバトスさんのお陰ですし…」
「そーかぁ?悪いなぁ!」
俺はツールボックスを操作して、2000Gをバトスに支払う。バトスは出現した銀貨二枚を革袋へとしまう。
「ありがとよ、これで今日は飲み食いに困らねぇ!」
ガハハと豪快に笑うバトスさん。なんだか謎の多い人だな…。と、笑うバトスを見ながらそんなことを考えていた。その時…
「おーい!!ナギー!!」
「!!…マイル!!」
山道を走ってくるマイルの姿が。
「大丈夫か!?ナギ!?…サイクロプスは、どこだ!?」
「なんとかなったよ…全部、バトスさんのお陰だ…」
「バトス?…おっさんがナギを助けてくれたのか!?ありがとう!!」
「いや、こちらもそれなりの報酬は頂いた。礼は要らぬよ」
「んー…」
何か考え込むような表情のマイル。どうしたんだ?…
「マイル!ノノとルルアは!?」
「あぁ!二人なら、この先で待ってるぜ!」
「おいおい、二人にして大丈夫なのか?…」
「だってルルアがナギを置いてくのは嫌だって聞かなくてよー…」
おぉ…ルルア、可愛いやつめ。
「だったら、早く合流しないとな…っと!」
「おいおい大丈夫か!?」
歩き出そうとするが、よろめいてしまう俺。マイルが慌てて肩を貸してくれる。
「大丈夫か?ボウズ…」
「えぇ…ちょっとMP使いすぎたみたいで…でも、大丈夫です」
「そうか…俺はギルドに依頼失敗の報告しにローユに戻るが、気を付けて行けよ」
「はい!助けて頂いて本当にありがとうございました!」
「また機会があれば会おう、ボウズ」
そう言い残し、ヒラヒラと手を振りつつ去っていくバトスさん。そんなバトスさんの背中をまじまじと見つめるマイル。
「んー……あ!あのおっさん!
今気付いたんかい。俺は苦笑いしながら、マイルと共に歩き出した。
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