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「要らぬ世話…だったか?ボウズ」


「え…っと…」



低い声と共に、眼前の男が振り返る。年齢は40代そこらといったところだろうか、白髪交じりで灰色の髪。ホリが深く、左目の下に刀傷のような小さな古傷。どこか気だるそうな表情だが、眼光は鋭く…。



何が…どうなった?俺の前に突然この人が現れて…剣を抜いたと思ったら、サイクロプスの腕がバラバラに切り裂かれて…血が…


というかこの人って確か、クランツのセンターギルドで見かけた“ぼろ雑巾グレークロス”って呼ばれてる冒険者…だよな?…なんで、ここに…




「グ…オオオォォォォオオ!!」


「!!」



サイクロプスが唸り声を上げ、切断された腕が再生する。



「はぁ~…サイクロプスは生命力が強くて敵わん…」



ぼろ雑巾グレークロスもとい、バトスが剣を構える。




「ボウズ、トドメはお前に任せたいんだが…これだけデカいとが面倒でな」


「え?…ど、どうすれば?」


「あ~、合図したら……斬れ」




え?…なにそのテキトーな感じ。

そうこうしている内に、バトスが走り出す。サイクロプスとの距離を一気に詰め…



「ゴガアアァァァアア!!」



は、速すぎて見えない!…バトスの姿が消え、サイクロプスの身体の至る所から血が噴き出す!!サイクロプスのHPがみるみる削られていく…。



「うわー……あ!バトスさん!そろそろ目から…」



サイクロプスの眼が怪しい光を帯びる!あの光線が飛んでくる!!



「ガガァッ!?」



が、次の瞬間にはバトスがサイクロプスの両足を切断!!

サイクロプスは仰向けに倒れ、眼から放たれた光線は上空へと消えていく…。



「ほう…あの戦闘の最中、敵の攻撃のクールタイムを数えていたのか?大したものだな、ボウズ」


「い…いや…」



どう考えてもアナタの方が凄いでしょ…あの化け物相手にこの余裕。レベルが違いすぎる。



「…あ!いけ、ボウズ、トドメだ」


「…え!?そんな急に!!」



俺は混乱する頭のまま駆け出す。…あぁもう!どうとでもなれ!!



「うおぉぉぉ!!」



俺は跳び上がり、地に倒れるサイクロプスの眼を剣で突き刺す!!



「グギャアアアアアァァァァアアア!!!」



数秒の断末魔の後、サイクロプスは光となって霧散した。



「ハァ…ハァ…」



――――――――――――――――――

    レベルアップしました

  Lv26  →  Lv28


   アイテムをドロップしました

 魔獣結晶  ×  1


 

【下級魔導士】の熟練度が上がり

【中級魔導士】へとクラスアップしました


――――――――――――――――――



終わった…のか。安心感からか集中力が途切れ、どっと疲労感が押し寄せてくる。俺はその場に座り込む。



「よくやった、ボウズ」



背後からバトスが歩み寄ってくる。



「あ…あの!ありがとうございました!」


「礼は要らん…ただの気まぐれだ。ところでボウズ、聞きたいことがある…」


「?…」







とある場所…



「ただいま戻りました、レイラ様」


「ご苦労様、カイル」


「申し訳ございません。まさかぼろ雑巾グレークロスが介入してくるとは…サイクロプスを失うことになってしまい…」


「いいわ。それ以上の収穫はあったもの…また遊びましょ?ナギ君」





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