兆し〈ポテンシャル〉

115


土煙が徐々に引いていく…。


俺の【不限ふげんうつわ】の性能は、取り込んだ魔石からジョブの力を引き出して戦うというものだが…。例えば下級魔導士のスキルは、下級魔導士にスタイルチェンジしている時にしか


だが、発動後一定時間効果を発揮するような永続的スキルは、発動後に別のジョブに切り替えても、効果時間が終了するまで持続される。


つまり、現在は夜の徘徊者ナイトレイダーのスキルである、【補速逃走クイックラン】と【宵闇歩行ハイドステップ】の効果を保持した状態で、中級剣士へとスタイルチェンジしたことになる。



「…いくぞ、デカブツ!」



俺は駆け出し、土煙の中から飛び出す!

今は、【補速逃走クイックラン】と“黒羽の剣”の2つの敏捷性上昇の効果が俺に付与されていることになる。逃げ切るのは無理でも、スピードで撹乱することは可能だ!



「【剣撃強化ソード・レイズ】!」



更に、スキルを発動し、攻撃力を高める。



「ガアァ!!」



サイクロプスが拳を振り下ろす!



「っ!!」



俺は右に方向転換し、これを回避!…いいぞ、躱せる!

直線的な動きになるな!…複雑に動いて、的を絞らせない!!



「【瞬進斬しゅんしんぎり】!」



俺は地を蹴り、跳躍!…よし!【瞬進斬】を上空に向けて放つことは成功!これなら…



「【四重斬フラッシュフォース】!!」



サイクロプスの眼前まで瞬時に移動した俺は、現在俺が所持している中で最高威力の剣技を放つ!



「グギャアアアァァアア!!」



目玉を斬りつけられ、奇声を上げながら苦しむサイクロプス!…まだだ!!


俺は落下の勢いを乗せて斬りかかる!…が



「ウガアァ!!」

「うぐっ!!!」



横殴りに振るってきたサイクロプスの腕に、俺は弾き飛ばされてしまう!



「カハっ!!!」



そのまま木の幹へと叩きつけられ、背中に強い衝撃、肺の空気を全て吐き出してしまったような感覚…



「こ…のやろ……」



HPが半分以上削られた!

一撃一撃が命取り…生きた心地がしないな、これは。

初日の地下ダンジョンを思い出すな…だが今はノノとマイルはいない…



「…でも」



俺もあの時とは違うぞ!!

俺は再びポーションで回復。そのまま下級魔導士にスタイルチェンジ。



「【フレアボム】!…【ライトニング】!」



俺は移動しながら魔法を連発!

サイクロプスの顔面に攻撃を集中させ、視界を奪う!



「【異能転化オーバーライト】…【聖なる加護プロテクション】!」



俺は下級神官にチェンジし、スキルを発動。俺の身体は半透明の球体に包まれる。

聖なる加護プロテクション】は一度だけ受けたダメージを無効化するスキル…効果時間は60秒と短めだが……これなら多少出来る!



「はあぁぁぁああ!!」



中級剣士にスタイルチェンジし、真正面から斬りかかる!



「ウガルガアァァアア!」


「!!」



サイクロプスが魔法を発動!地面から尖った岩盤が隆起する!!



「うっ…らあぁぁぁぁ!!!」



俺はその勢いを利用して、高く跳躍!

聖なる加護プロテクション】の壁は砕け散るが、ダメージは受けていない!



「【遠距離狙撃スナイプショット】!!」



空中でスタイルチェンジし、サイクロプスの眼を射抜く!!…執拗に眼を狙ってやるから覚悟しろ!!



「【異能転化オーバーライト】!!」



再び空中でスタイルチェンジし、剣士へ。まだまだぁ!!



「【二重斬ダブルスラッシュ】!」


「ギアアァァア!!」



サイクロプスに追撃を加えつつ、着地!…そこへサイクロプスが踏みつけ攻撃!!



「!!…【瞬進斬】!」



【瞬進斬】で回避しつつ後退!クールタイム消化が間に合って良かった…



「【ファイヤーボール】!【フレイムスロウアー】!」



距離が空いたので、魔導士に変化し魔法で攻撃!…まだだ、そう簡単にやられるか!!



「グラアァッ!!」



サイクロプスが突進!

俺も剣士にスタイルチェンジして迎え撃つ!!


振り下ろしてきた拳を躱す!…が



「ゴアッ!!」

「!!!」



サイクロプスの眼から紫色の光線が放たれる!!これは避けられな…



どごおおおおん!!—————



爆発が巻き起こり、周囲は爆炎と煙包まれる……



「…あ、あぶねー」



咄嗟に【心頭滅却クリアマインド】を発動していた俺のHPはギリギリ残っていた!



「うおおぉぉぉおおお!!!」



俺は全力を振り絞るように走り出す!!






「……しい…」


『?…レイラ様?…』


「あぁ…あぁっ!…素晴らしい!素晴らしいわ!!」



女性は恍惚とした表情で戦う少年の姿を映す鏡を見つめる。



「的確な判断力!スキルの応用力!学習力!勇気!!…そして、あの目…あぁ♡」


『レイラ様?…』


「素敵よ…ナギ君…アナタはまだ強くなる。もっと…もっと見せて頂戴……」




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