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「ハァ…ハァッ…」


「グオオォォオ!!」



木々の間を縫うように疾走する俺。くそ…距離が広がらない…。


大股で迫りくるサイクロプス。俺の所持するジョブの中で最速のステータスを持つ夜の徘徊者ナイトレイダーにスタイルチェンジして逃げてるんだけどな…やっぱダメか。



「グオアアァァア!!」


「っ!!!」



サイクロプスが地面を殴りつけ、地中から尖った岩が隆起する!!土魔法か!!



「やっば!!…」



俺は全力疾走し、なんとか魔法を回避。逃げられないなら、仕方ない…。

俺は森を抜けだし、開けた山道へと戻る。



「グラロォォ…」


「………さーて、どこまでやれるかな…」



サイクロプスと対峙する俺。倒し切ることは無理でも…やれるだけやってやる!なんとか隙を見つけてコイツを振り切らないと…。



「【拡散速射ラピッドショット】!」



サイクロプスの顔面目掛けて無数の矢を放つ!



「ガアッ!!」



サイクロプスはそれを片手の一振りで払いのける!…が、その時には既に俺は敵側面に移動。弓を引き絞り…



「【遠距離狙撃スナイプショット】!」



サイクロプスがこちらを向いた瞬間に矢を放つ!弱点は…そこだろ!


閃光の如き矢がサイクロプスの目を射抜く!



「ガガアアァオォォ!!」



サイクロプスは両手で顔を抑え、苦しむ!

やっぱり弱点はあの目玉のようだが……ダメージ量が足りなさすぎる!!


倒すのは無理…だが今なら…



「【補速逃走クイックラン】!」



俺は敏捷性を上昇させるスキルを発動!

ヤツの目が塞がってるうちに!…



「グガアァァアアア!!」


「なっ!!…」



サイクロプスが目を見開き、瞳が怪しく光る…!


ゾクリとしたものを感じ、反射的に後方へ大きく跳躍。次の瞬間!…



「グロオオォォォオオ!!!」



サイクロプスの眼から、紫色の光線が放たれる!

咄嗟に跳び退いていた俺は、直撃は免れるが…



「特殊…攻撃‼…」



地面に着弾した光線は、爆発を巻き起こし、俺は爆炎に呑まれた…







とある場所…



大きな鏡は、巨大な一つ目の怪物サイクロプスと、それと対峙する一人の少年を映し出している。



『グガアァァアアア!!』


『なっ!!…』



サイクロプスが眼から光線を発射。衝撃音と共に辺りは土煙に包まれる。



「……あら、もう終わり~?…案外大したことなかったわね」


『…やはり、いささか手厳しすぎたのでは?』


「このくらいで終わるようなら、興味はないわ…残念ね、ナギ君…」


『…………』



だがその時、土煙の中から少年が飛び出した!



「あら!!…頑張るじゃないっ!良いわよ、ナギ君♡」







「くっ……そ…」



サイクロプスの放った攻撃によって、吹き飛ばされた俺。直撃は避けたのにHPが3/4以上持っていかれた!!



「………」



辺りは土煙が舞い、視界を遮る…。走り疲れて、息が荒い…身体が重い…。


ルルア達は無事だろうか…大分時間は稼いだはず。成果としては上出来だろう。俺はこの世界で死んでも、次のログイン時には復活できる。こんな化け物相手に良くやった…よな?



『ルルア、お父さんとお母さんに会うために頑張るね!!』



……後は、マイルとノノがやってくれる。アイツらもやわじゃない。



『ルルアたんにとっては…この世界が…現実…なんだよね…』



後は…もう…



『ちゃんとルルアを送り届けてやろうぜ!!ルルアだってこの世界で生きてんだろ!?』



………冗談じゃない!!

この先にもうこんなアクシデントが無いと言い切れるか!?

強敵に遭遇する度に、誰かが犠牲になるのか!?…冗談じゃない。


、何を諦めてる!?

ルルアが…あんな小さな子が命懸けで戦ってんのに、俺は何を諦める気だ!!


そもそも、全力出して勝てるかどうかも分からない強敵なんて…



「…サイコーだろ」



俺はクイックストレージに登録してあったポーションでHPを回復。【補速逃走クイックラン】の効果はあと2分ちょっとってところか…



「【宵闇歩行ハイドステップ】…」



俺はスキルを発動。自身の気配を隠すスキル…本来なら、敵に見つかる前に使用するスキルだが…ぶっつけ本番だ。



「【異能転化オーバーライト】…」



俺は中級剣士にスタイルチェンジした。

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