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「おはよう!ナギ!マイル!」


「おはよう!ルルア!」


「おはよう」



次の日、宿の部屋から出るとノノとルルアが既に待っていた。皆、気合充分ってわけか…。



「…今日からリラの山道に入り、リシングの街を目指す。遭遇率はそう高くないが、レベル15から20程度のモンスターが出現するらしい。昨日の平原みたいに楽にはいかないから、気を引き締めていくぞ」


「おう!」


「よし、じゃあ朝食取って、準備済ませたら…出発だ!」


「「「おー!!」」」











「ノノ!前方の敵の動きを止めろ!マイル!他の敵を近づけるなよ!」


「「了解っ!!」」


「いけるか?ルルア…」


「うん!!」



ローユの街から南東に延びるリラの山道。並び立つ山岳地帯の山間やまあいを通る道だ。周囲は深い森に囲まれる一本道。長く続くこの山道を抜けた先には荒野があり、その先に目的の街、リシングがある。


山道に入って二時間程が経過、時折モンスターと遭遇した。鹿や熊、猪などの獣の姿をしたモンスターが多いが、たまにコボルトというずんぐりとした人型のモンスターも出現した。


現在は、そのコボルトの集団と戦闘中だ。レベルは15~18のものが合計4体。ここまで思ったより苦労することなく進んでこれたが、驚くべきは…




「【ファイア】!!」



ルルアが火属性の魔法を放ち、前方のコボルトを撃ち抜く。コボルトは炎に焼かれ、消滅。いやー、ほんと…想像以上にルルアが戦力になっている。


俺達のパーティには純粋な魔法職がいない。一応俺がスタイルチェンジすれば魔法が使えることは使えるが、常に後方から高威力の魔法を狙い撃つ者が一人いることで、結果として俺達の戦闘に安定感が生まれていた。



「ナギ!そっち行ったぞ!!」


「【ライトニング】!」



俺は下級魔導士にスタイルチェンジし、雷の魔法で敵を貫く。最後のコボルトが消滅し、リザルトが表示される。



「おつかれぃ!!ルルアも凄かったな!!」


「ほんと!?ありがとう!マイル」



いや…本当にこの感じなら、案外楽にこの山道を抜けられるかもしれないぞ。ルルアのレベルもいつの間にか18まで上がり、戦闘時の立ち回りも板についてきた。ルルア…本当に冒険者の才能あるな、これは。



「…良いペースだな。少し休憩にしよう」


「そうだな!」


「ルルアたん…果物食べる?…」


「うん!」



俺達は近くにあった岩の上に腰を下ろし、しばしの間休息を取った。この調子なら、今日の間にリラの山道を抜けられるかもしれないな…。



だが、その考えが甘かったことを、俺達はすぐに思い知ることになる。










「ルルアたん…疲れたら言うんだよ?…無茶しないようにね」


「ルルア、大丈夫だよ!」


「えらいなー!ルルアは」




和気藹々わきあいあいと山道を歩いていく3人の冒険者と獣人族の少女…。



「来たか…」



その4人を木の陰から見つめる一人の男。



「ナギ…レイラ様のお眼鏡に適うか否か…」



男は羊皮紙の“巻物スクロール”を取り出し、開く。そこには複雑怪奇な文字がびっしりと書かれている。男はそれを地面に置くと、唱える…




「……【魔獣召喚モンスターサモン】」




巻物スクロールが燃え上がり、地面に光の魔法陣が出現。



「さあ…足掻いてみよ」



男は光を放つ魔法陣を残し、姿を消した。




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