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「えーっと…」


「ハリスのジジイから話は聞いてる。クルド村を目指すんだろ?“リラの山道”のマップ情報ならくれてやる。飛翔石盤はあっちだ…」



坦々と話をして、店の隅を指差すカルラさん。その先には確かに飛翔石盤が設置されていた。男勝りな人だな…なんか、ミレ姉を思い出すな。



「おーい!カルラの姉さん!!もう一杯ビールくれ!!」


「うるせぇ!!自分で取りに来な、グズ!!」



えー…。どこからか飛んできた注文の声を、カルラは一蹴し酒を煽る。これでちゃんと成り立ってんの此処?…




「とりあえず…解放、するか」


「そ…そーだな」



俺達は飛翔石盤に触れ、ローユの街を開放。これでいつでも飛翔石でローユに来れるようになった。リラの山道の情報は貰えたけど…他に情報を得ようにも、マスターのカルラさんがあの感じだと、これ以上収穫はなさそうだな。




「明日も早めに出発したいし、今日はもう宿を取ってゆっくりしようか」


「そだな!」


「異議なし…」



俺達はローユのセンターギルドを後にし、ロッツさんに紹介してもらった渡りの宿へと向かうことにした。






「………」



若い三人の冒険者と一人の幼い獣人族。彼等に密かに視線を送る者が…。に身を包んだその男は、彼等が店から出るのを見送ると、持っていたジョッキの酒を飲み干した。







時刻は午後11時…。


センターギルドを出た後、俺達は直ぐに宿を取り、休むことに。明日からリラの山道を通り、リシングという街を目指す。此処から一日半ほどかかりそうだ。


初の安全圏外での野営をすることになる。持ちうる資金の殆どをはたいて、準備はしてきたが…。明日から二日間はハードになるな。俺はベッドに腰掛け、アイテムストレージを開き、不足品等がないか確かめる。



「………」



もうすぐルルアともお別れか…。そう考えると、少し寂しさも感じるが…。



「ん…ナギ、お前も早く休めよー」


「…そうだな」



ふと、隣のベッドで寝ていたマイルが目を覚まし、声を掛けてくる。俺もツールボックスを閉じると、ベッドに入った。






とある場所…



『レイラ様。彼等は明朝からリラの山道に入る模様です』


「そう…“巻物スクロール”を使いなさい。ランクは…Aでいいわ」


『!…よろしいのですか?彼等の手に負えるレベルではないかと思いますが…』


「さぁ、どうかしらね?…ウフフ」


『…わかりました。明日、実行と同時に視ミズクに映像を送らせます』


「よろしくね…カイル」


『畏まりました』




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