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とある場所…


『レイラ様…どうやら彼等はクルド村へ向かっているようです。現在はローユの街を目指し、進行しています』


「へぇ…クルド村、ね…。それならローユの街から“リラの山道”を通るはず。そこで、カイル」


かしこまりました。ではまた、後程ご報告いたします』


「…ウフフ……さぁ、見せてちょうだいナギ君。アナタの本気を…」








クランツを出て、3時間程経過しただろうか。時刻は14時を回ろうとしている。俺達は綺麗な湖を見つけたので、そのほとりで休憩を取ることにした。




「お昼ご飯にしよっ…ルルアたん」


「うん!」



ノノがツールボックスのアイテムストレージから、今朝、月跳ね兎のミアが準備してくれたという弁当を取り出す。…アイテムストレージってホント便利だな。食料品も、品質を落とさずに保管出来る。現地人ドラフトのツールボックスにはアイテムストレージが無いらしく、荷物などは全て手運びしなければならない。なのでルルアは必要最小限の装備だけを持たせ、その他日用品は俺達のアイテムストレージへと収納した。



「わーっ!美味しそう!!」



弁当の中身はサンドイッチに厚切りのベーコン、マッシュポテト、色とりどりのフルーツ…ミアさん、気合入ってたんだろうなー…お値段もそれなりにしたけど。



「いただきます!」



俺達は腰を下ろし、しばらくの間綺麗な湖を眺めながらミア特製の弁当に舌鼓を打った。







「うわぁ!!やめろー!!!!」


「「「!?」」」



食事を終え、再びローユの街まで続く道を歩き出した俺達。その時、不意に何者かの叫ぶ声が聞こえ…



「おい!あれ!」


「襲われてる!…マイル!ルルアから離れるな!行くぞ、ノノ!」


「了解!…」



遠くの方で複数のゴブリンに取り囲まれている荷馬車。その傍でゴブリン達相手に短剣を振り回している一人の男。マイルとルルアをその場に待機させ、俺とノノは走り出した。



「ギャギャギャ!」


「うわーっ!!」



俺は走りながら、【望遠】スキルで状況を確認。敵は全部で8体!だがその中に、通常のゴブリンとは様子の違う個体が2体。1体は通常のゴブリンより一回り大きく、粗末だが鎧の様な物を身に着けている。もう1体はやせ細ったゴブリンで、窪んだ眼に灰色の長いひげ、手にはねじ曲がった杖が握られている。あれは?…



――――――――――――――――

 ゴブリンウォリアー Lv20

 HP 750 / 750

――――――――――――――――



――――――――――――――――

  ゴブリンメイジ Lv21

 HP 720 / 720

――――――――――――――――



ゴブリンウォリアーとゴブリンメイジ?…ゴブリンの上位種か!ステータスを確認すると、メイジの方は魔法攻撃も使ってくるようだ。だったら……



「俺が突っ込む!ノノは襲われてる人の退路を確保してくれ!」


「了解!…」



俺は黒羽の剣を抜き放ち、ゴブリンメイジ目掛けて疾駆する!



「た、助けてくれー!!」


「下がって!」



俺は荷馬車の主であろう男の脇を抜け、ゴブリンメイジに斬りかかる!



「ガギャア!!」


「!!」



だが、ゴブリンウォリアーが割って入り、動物の骨のような武骨な大剣で斬りかかってくる!



「っ!!」



俺はゴブリンウォリアーの攻撃を剣で受け止め、一時後退。睨み合う形に…



「ギャギャギャー!」



取り巻きのゴブリン達が飛び掛かってくるが、俺は動かない…



「【人形輪舞ドール・ロンド】」



俺の背後からスキルを発動させたノノ。6体のゴブリンを一瞬で殲滅した!



「………」



残るは、ゴブリンウォリアーとゴブリンメイジのみ。…いくぞ。


俺はゴブリンウォリアーに接近!

敵も大剣を振り上げる!!



「【二重斬ダブルスラッシュ】!」



俺はスキルを発動!ゴブリンウォリアーの攻撃を退ける!

敵は大きくのけ反り、硬直。



「【剣撃強化ソード・レイズ】…」



そこへすかさず強化した剣での三連撃!!



「ガァギィ!!…」



ゴブリンウォリアーが消滅。だがその瞬間…



「ゲゲゲガァァァエ!!」



後方に控えていたゴブリンメイジが杖の先から火球を放ってきた!



瞬進斬しゅんしんぎり



俺は【瞬進斬】を使って、魔法攻撃を躱しつつ、敵左側面へ移動!

ゴブリンメイジは俺の姿を見失っている。終わりだ!!



「【四重斬フラッシュフォース】!!」



俺は新しく習得したスキル【四重斬】を発動!

目にも止まらぬ4連撃を叩き込む!!



「ゲギッ……」



ゴブリンメイジが光の粒となって消えていく…




「つ…つえ~っ!!」


「大丈夫ですか?」



俺は地べたに座り込んでいる男に手を差し出した。

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