106


クランツを出た俺達。先ずはクランツを取り囲む草原を抜けて、真っ直ぐ南下した先にあるという“ローユ”という街を目指す。クルド村まで最短で三日間ということだったが、多少遠回りをしてでもハリスさんから聞いた安全ルートで進む予定だ。道中、いくつか街を経由してそこで宿を取ろうと考えている。


野宿するための準備も整えてきたが、ルルアの体力も気遣って、なるべく野外での寝泊まりは減らしてやりたい。クルド村まで4~5日程の時間をかけてゆっくりと進むつもりだ。



「先ずはローユの街を目指すんだろ?どんなとこなんだろうな?」


「ハリスさんの話だと、行商人が集まる活気のある街だってことだけど…」


「今日は…そこで休むの?」


「あぁ、半日あればローユに着けるって話だから、夜には到着できるだろう。ローユの街までの道のりは比較的安全だそうだから、しんどくなってくるのは明日からって感じかな?…その前に宿でゆっくり休もう」


「ルルアたん…ノノと一緒に、夜まで頑張って歩こうね?」


「うん!」




そんな会話をしつつ、俺はマップを確認しながら、平原を進んでいく。その時…





「ギャギャギィ!!」


「「「!」」」



木陰から飛び出してくる三体のモンスター。



「出たなー!ゴブリンめ…ルルア、後ろに下がっとけよ!マイル兄ちゃんがスパっと片付けるからな!!」



平原の定番モンスター、ゴブリンが三体現れた。マイルが意気揚々と前に出る。平原のモンスター程度、マイル一人に任せておいて大丈夫だ…。




「おっけー、任せた、マイル」


「んじゃ…よろしく…」


「あいあい!!」



マイルが剣を抜き、一気に踏み込んで斬りつける!

一番前にいたゴブリンが光となって消滅。残り二体のゴブリンは警戒態勢。マイルが距離を詰める…



「待って!」


「っと!?…」



不意にルルアが声を上げる。マイルは急停止し、振り返る。



「ルルアも…戦う!」


「え!?…」



ルルアが杖をゴブリンに向ける。



「ギギ?…」


「えーっと…動く敵は、相手をしっかりと目で追って…まっすぐに…撃つ!【ファイア】!」



ルルアは何やらぶつぶつと独り言のように呟いたあと、魔法を発動!

杖の先から火球が放たれ、一体のゴブリンを火だるまに!!



「ギャギャアアァァァィィ!」



ゴブリンは消し炭のようになって、。ん?なんか、今の…



「おぉー!!スゲェじゃん、ルルア!!」


「や…やった!」


「ギャギイ!!」


「きゃっ!!」



残った一体のゴブリンが逆上し、マイルの脇を通り抜け、ルルアに跳びかかる!



「よっと…」



俺はすぐさま割って入り、ゴブリンが振り下ろしてきた棍棒を剣で弾き返す。



「おいおい、ちゃんと守れよマイル」


「あははー…ワリィワリィ、ルルアの魔法に驚いちゃって……そらよっと!」



俺が弾き返したゴブリンに、マイルが上から大剣を振り下ろし、ゴブリンは消滅。リザルト画面が表示された。



「あ…ありがとう、ナギ…ごめんなさい」


「?…謝る必要はないよ、ルルア。でも、敵が残っている間は気を抜いちゃダメだ…」


「…はい」


「でも…凄い魔法だったな!ハリスさんと特訓、頑張ったんだな」



しょんぼりしているルルアの頭を撫でる。ルルアは、ぱあっと表情を明るくし…



「うん!!」



と頷いた。それにしても…今の…



「ルルアたん…大丈夫だよ~…ナギナギは厳しいですねぇ…怖いですねぇ…」


「そーだそーだ!ルルアを苛めるなー!」


「え…いや、苛めてはないだろー!!」


「いーや、今のはナギが悪いねー!…こんな幼気いたいけな少女が魔法を使えるってだけで凄いんだぞ!!」


「なっ!…俺はルルアの身の安全を想って…ていうか、元はと言えば、マイルがちゃんとブロックしないから…」


「ふふっ!…」


「「「?」」」



冗談まじりに言い合う俺達を見て、ルルアが笑う。…そんなルルアを見て、俺達もつられて笑う。無事に…送り届けてやらないとな。


俺達は再び歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る