105


朝が来た。時刻は午前7時15分。

俺達は早々に身支度を整え、朝食を取っている。今日から数日の間、ルルアを守りながらの旅になる。しっかりと準備していかなければ。



「ミアさん、お世話になりました!」


「いいえー!そっかー、ルルアちゃんもう行っちゃうんだねぇ…」


「ルルア、またいつか遊びに来ても良い?」


「うんうん!いつでもおいで!待ってるよー!」



宿屋の従業員、ミアに別れを告げセンターギルドへと向かう俺達。

これから向かう旅が、まさかあんな事になるなんて…


この時はまだ、知る由もなかった。




「ハリスさん、お世話になりました!ルルア、行ってくるね!」


「うむ…気を付けてな」


「ルルアちゃん、これを…」



センターギルドへと辿り着き、アイテムショップでポーションやその他必需品を買い込んだ。その後、ハリスさんに挨拶をするルルア。そこへマイネさんが何かを手に持ってやってきた。



「え?…これは?…」


「プレゼントです!ハリスさんが準備したんですよー!」



マイネさんの言葉に、恥ずかしそうに顔を背けるハリスさん。



「わぁ!…」



ルルアに手渡されたそれは、子供サイズのローブと杖だった。



「加護のローブと、ナールウォットの木から作られた魔法の杖です。ローブには魔法や状態異常への耐性を高める性能があり、杖は魔法の発動を補助してくれます」


「え!?…こんなの貰っていいの!?」


「いいんです!…ね?ハリスさん?」


「う…うむ…」



素っ気ない態度を取ろうとしているハリスさんだが、照れ臭いのが見え見えだ。…なんか本格的にルルアにデレてきてるな、ハリスさん。でも、ルルアの装備は揃えようと思っていたから、この贈り物はありがたい。



「良かったな!ルルア!」


「うん!」


「ルルアたん…着てみて?」


「うん!」



おぉ…澄んだ夜空のような深い黒紫色のローブに黒檀のような杖。真っ白なルルアの髪と対比的でよく似合う。



「る…ルルアたん…かわゆいっ…」


「小さな魔法使いさん、だな!」


「えへへ…ありがとう!ハリスさん!」


「うぉっ!?」



ルルアがハリスさんに跳びつく。不意のことに慌てふためくハリスさん。



「ぬっ!…よ、よいよ…頑張って魔法の練習をしたご褒美じゃ…」


「フフ…ハリスさん照れてるー!」


「や、やかましい!マイネ!」



皆、恥ずかしそうなハリスさんを見て、微笑む。



「ゴホンっ!…それからルルア、これを」



ハリスさんが首飾りのようなものをルルアの首に掛ける。ペンダント?…あれは…



「飛翔石じゃ…クランツの飛翔石の開放は昨日やったじゃろ?…使い方は分かっておるな?」


「うん!」


「何かあったら使いなさい。それから村に戻った後にでも、冒険者になりたくなったらいつでもこれで此処に飛んでくるといい」


「…うん!ありがとう!」



まだ諦めてなかったのか、ルルアを冒険者にすること。



「まったく、ハリスさんたらー!」



俺達は笑い合った。



「よし!じゃあそろそろ…」


「うむ…気を付けてな…


「!…はい!」




ハリスさんに名前で呼ばれるのはなんか新鮮だな。俺達はハリスさん達に別れを告げ、センターギルドを後にした。





「おーっし!!じゃあ、行くか!!」


「「「おー!」」」



マイルの掛け声とともに、俺達4人はクランツの門を潜り、長旅の一歩目を踏み出したのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る