99


その頃、とある場所…



「…で?アナタ達は、その新人君にやられたわけぇ?決闘に負けて、装備も取られて、そんな姿で帰ってきたわけね?」


「す、すみませんレイラ様!あのガキ、妙な能力を使いまして!…」



高級ソファーに横たわるように座る、妖艶な雰囲気の女性。その眼前、床に正座して並ぶ二人の男。ガザックとブレングスである。



「妙な能力?…」


「はい!…下級剣士だったはずのガキが、急に魔導士にして…」


「!…へぇ、面白いじゃない。その新人ルーキー、名前は?」


「ナギ…という奴です。前回は油断しましたが、次こそは!あのガキを捻り潰してやります!」



女性は怪しくも美しい笑みを浮かべ…



「あぁ…いいのよ、アナタ達にはもう興味ないから」


「そ、そんな!!…」


「お、お待ちくださいぃ、レイラ様ぁぁぁ!」


「ウチに弱いヤツは要らないの。アナタ達はギルドから追放~……カイル?」


「はい」



女性のかたわらに立っていた男が歩み出る。



「片付けて、カイル」


かしこまりました」


「「!!!」」


カイルと呼ばれた男が、背中の大剣を抜き放つ。



「ま、待ってください!!俺達はまだやれます!!次こそは!…」


「黙れ、レイラ様のご意志だ…」


「そ…んな……」



大剣を握る男が、ガザックとブレングスに歩み寄る。



「「ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁああああ!!」」



断末魔。


光となって消えゆく二人を、無言で見つめる男。ソファに座る女性は欠伸を一つ…



「…カイル?その“ナギ”っていう子を探し出して、調べなさい。興味があるわ…見つけたら視ミズクを使って私に映像を送って頂戴」


「畏まりました」



男は大剣を背中に戻し、部屋から出て行った。







センターギルド



「夕方には帰ってきたいので、そのくらいの時間で稼げる依頼はないですか?」


「それでしたら…こちらはどうでしょう?」



俺はマイネさんにいくつか依頼を紹介してもらう。明日から長旅だ…なるべく準備資金を稼げるものが良いが…



「ハリスさん!ルルア、魔法使えるようになるかな!?」


「うむ!…ルルアなら今日にでも初級魔法を使えるようになるかもしれんぞ?」


「ほんとっ!?」



ルルアとハリスさんの会話が聞こえてくる。なんか意外とハリスさんもルルアにデレてきてないか?…祖父と孫みたいだ。



「…では、これでお願いします!」



俺は一枚の依頼書を選び、マイネさんに手渡す。これなら場所も遠くないし、報酬額も悪くない。丁度良さそうだ。



「分かりました。では、宜しくお願いしますね。お気を付けて」


「はい!」



俺、ノノ、マイルは踵を返す。



「ナギ、ノノ、マイル、行ってらっしゃい!…気を付けてね?ルルアも、頑張るね?」


「おぉー!!ルルアー!マイル兄ちゃんに任せとけ!!」


「ルルアたん…まじ天使…」


「行ってきます、ルルア。ではハリスさん、ルルアを宜しくお願いします」


「うむ」



俺達はクエスト目的地へ向け、センターギルドを後にした。…そんな俺達を店の隅から伺う視線があることに、俺達は気付かなかった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る