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「……ナギ、色々話したいことがある」



電車に揺られながら、九ノ原先輩が言う。



「はい、俺もです…」


では色々と制約があるから、で話したい」


「そうですね、問題はどうやって合流するか、ですけど…」



俺と九ノ原先輩は小声で言葉を交わす。制約がある以上、現実世界リアルではまともに話もできない。先輩達とニューワールド内で合流することが出来れば、お互いの情報や考えを擦り合わせることが出来るのだが…。



「…心配しなくても、直ぐに俺達の居場所は、ナギ」


「?…」



どういうことだ?…まぁこの人のことだ、何か考えがあるんだろう。とにかく、動くなら“ニューワールド”で、ってことか。





深夜1時55分…



帰宅した後、ネットでニューワールドに関しての情報を集めようとしたが、収穫はゼロ。徹底した情報規制が掛かっているようだな。少なくとも10年以上前には存在していたニューワールド…。普通の民間の会社が10年もの間、1万人以上を動員するようなプロジェクトの情報を隠し通せるとは思えない…もっと大きく、強い権力を持った組織が絡んでいるはず…



「…………」



もしかしたら俺達は、とんでもないことに巻き込まれているのかもしれない。今日の冴木の態度から、あれがただの“娯楽ゲーム”ではないことはほぼ確実だ。だがそれ以上のことを知ろうにも、現状現実世界リアルでは手詰まり状態…。出来ることとしたら、ニューワールドの中から情報を集めていくしかな


俺はベッドに横になったまま、そんなことを考えていた。そろそろ時間か…。



「…………ん」



俺は急激に、吸い込まれるように、眠りへと落ちていった。



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