95
「ん…」
俺は目を覚ました。窓から日の光が差し込んでいる。見慣れた天井…部屋の隅に並ぶ本棚…その横のデスクにはPCとスタンドライト…
「!!」
覚醒した俺は飛び起きる。
「俺の…部屋……」
俺は直ぐに携帯端末で日時を確認。日曜日の午前8時…ほんとに一晩しか経っていない。確か眠っている時に見る夢は現実と時間の流れが違うって聞いたことあるな…それをモチーフにした映画なんかもあったはず……
「特に疲労感はない…
寝ている間にあの世界を冒険していたことになるが、特に体に異変や倦怠感は見られない。それどころか、熟睡した後のような充足感に満ちている。凄いな…普通に考えるなら、睡眠時に脳だけは活発に活動していたことになる。だがそれによる心身へのダメージは感じられない。いや…“
「ん?」
そんなことを考えていると携帯端末が振動し、メッセージの着信を知らせる。俺は端末を操作し、メッセージを開く。
「九ノ原先輩…」
==========
13時 駅前で
==========
相変わらず用件だけの、短いメッセージだな。等と思いつつ、俺は小さく笑い、服を着替えるべく立ち上がった。
♦
「おーい!!ナギ!!」
駅に向かうと、もう皆集まっていた。マイルとノノはさておき、九ノ原先輩、イチル先輩、ミレ姉は…なんだか久しぶりにあった気がするな。
「ナギ、一応確認するけど…」
「…はい、事実でした」
九ノ原先輩の問いに俺が答えると、皆頷き、微笑む。俺だけの“夢”ではなかったってことだな…。
「詳しい話は無しだ。一応ペナルティもあるみたいだしね…皆に確認だけど、続けるかい?」
「「「
九ノ原先輩以外の全員が答える。九ノ原先輩は頷くと続けた。
「この後、この間の…いや、昨日になるのかな?あのカフェで冴木さんと会うことになってる。もしかしたら何か聞けるかもしれないよ?」
そう言って九ノ原先輩は俺に意味ありげな視線を送る。なるほど…この人もあの世界で何かを感じ取ったようだ。出来る事なら今すぐにでも議論を交わしたいところだが、“規定”がある以上そうもいかない。
俺達は目的地のカフェへと向かった。
♦
「いらっしゃいませ。冴木様のお連れ様ですね?…こちらへどうぞ」
店内に入ると、女性店員が丁寧にお辞儀をし、出迎えてくれる。俺達は女性に奥の席を案内される。
「お待ちしておりました。どうぞ、掛けてください。……すみません、皆様にもエスプレッソを」
女性店員はお辞儀をして立ち去っていく。俺達はソファへと腰掛ける。店内には静かなクラシックが流れ、コーヒーのいい香りが漂ってくる。俺は目の前に座る冴木に目を向ける。
「さて、皆様。
「……素晴らしい技術ですね」
九ノ原先輩が先陣を切って口を開く。
「ありがとうございます。それで…ゲームモニターとしての仕事はお引き受けして頂けますでしょうか?」
「……続けさせていただくつもりではあります」
「ありがとうございます。安心しました」
さて、どこまで情報を引き出せるか…
俺は冴木に言葉を投げかける。
「すみません、いくつか質問をさせて頂いてもよろしいですか?…」
「あの世界のこと…ですね?私にお話しできる事ならばお答えしましょう。ですがその前に、皆様には正式に
「……」
「ご安心下さい。軽い条件と守秘義務を尊寿していただく…といった内容です。こちらにサイン頂けた後であれば、質問にもお答えしましょう」
そう言って冴木は契約書と書かれた紙を俺達それぞれに手渡す。俺はその契約書に目を通していく。
「!…これは!」
「軽い条件というのは、毎日ログインして頂く…つまり、毎日そのリングを付けてご就寝いただくという事だけです。後は商品に関しての情報保護の規定です」
契約書に書いてあることは、冴木の言うことに相違ない。それよりも…
「あの…この報酬システムは?」
「はい、書いてある通り、皆様がニューワールド内で稼いだ
「「なっ……」」
…なるほど。そりゃディープなプレイヤーが増えるわけだ。正しく、“寝ている間に稼げる”仕事ってわけか。しかしそうなると、多額の資金元が…
「あの…ニューワールドのプレイヤーは…」
「サインして頂けますでしょうか?」
……あくまでも、情報を出すのは契約が完了してから…か。徹底してるな。まあ、契約内容も条件も悪くない…。そもそも俺達は未成年…何かあれば未成年者契約として取り消しが効くはず…。俺と九ノ原先輩は目を合わせ、頷く。
俺達は契約書にサインをした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます