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朝食を終えた俺達は、センターギルドへと向かった。ハリスさんが話があると言っていたが…。
「…おい、見ろよ。噂のルーキーだ」
「“中級剣士”?…意外と普通のジョブだな」
「奴隷を連れてやがるぞ…危ないヤツなんじゃないか?」
センターギルドに入った途端、妙に視線を感じる…。昨日の出来事で注目を集めているのだろう…ある程度噂が広まるのは覚悟していたが、問題はどこまで知られているのか。俺のジョブの性能は出来る限り隠しておきたいが…
「おはようございます、マイネさん」
「おはようございます、ナギさん。マスターがお待ちです、こちらへどうぞ」
マイネさんに案内され、二階へと上がる俺達。階段を上がるといくつか部屋が並んでおり、その中の一番奥の部屋へと通される。
「ハリスさん、お客様をお連れしました」
「うむ…」
部屋に入ると、ハリスさんが何やら大量の書類が積まれたテーブルで作業をしていた。ハリスさんは手を止めると、俺達に視線を送る。マイネさんは軽くお辞儀をして部屋から出ていく。
「…昨日はご苦労だったな。掛けてくれ」
俺達は勧められるままに、部屋の中央に配置されたソファーに腰掛ける。
「さて…単刀直入にいこうかの」
そう言いながらハリスさんは俺達と向かい合う形でソファーに腰を下ろした。
「呼び立てしたのは他でもない…ナギ、お前さんの能力についてじゃ」
「!!」
やはり…バレていたか。どこまで知っている?…ここは、慎重に。
「俺の能力…というのは?」
「…そう警戒するでない。お前さんの秘密を無闇に公開したりはせんよ」
ハリスさんは短く口笛を吹くと、部屋の隅の止まり木にいたフクロウが飛んできて、ハリスさんの腕に止まった。
「こいつは“
「従魔?…」
「そう、ここで依頼を受けた冒険者にはこの視ミズクが付き、依頼の達成もしくは失敗等の確認を行う。また、コヤツらは自分の見た光景を映像として、ワシらに届ける能力がある…」
「!!!」
なる…ほど。全部視られていたってことか。だったら…
「では…全て知られていると解釈して宜しいですか?」
「いや…全てを知っているという訳ではない。寧ろ“何も知らん”という方が正しいの」
「?…というと?」
「お前さんの戦闘時の映像も見せてもらったが…アレは一体何じゃ?……あんなもの、
ハリスさんが俺に鋭い視線を投げてくる。
「ドラフト?…」
「お前さんらのような
「話を戻そう…お前さんのその能力、ジョブを自在に切り替えて戦えるものだとワシは認識しておるが…」
ここまで知られているなら、もう隠す必要も、方法もない…か。ならば逆に情報を引き出す!
「…そうです。俺のジョブは【不限の器】。取り込んだ魔石からジョブの力を引き出すことが出来ます。ただ、俺自身この能力に関してわかっていないことが多くて…何かハリスさんは知りませんか?」
「ふむ…そもそもお主ら
!…そういえばNPCのステータスを見ても、宿屋従業員とか放浪者とかの表記がされるだけで、ジョブらしきものの表記は見たことが無いな。
「そうか…お前さん自身も分からぬというのなら、これ以上聞けることもあるまい…ただその力はまるで…」
「?…」
「…いや、気にするな。ところでお前さん達、その娘は」
ハリスさんがルルアに目を向ける。ルルアは少し怯えたように俺にしがみつく。
「“
「!?…クイーンローズ?」
「ふむ…ガザックから奪い取ったということは否定せんのじゃな?よもや、そのレベルであの男を倒してしまうとはのぉ」
「!…」
ハリスさんはどこか嬉しそうに言った。
「
「PK…その転移者狩りって犯罪にはならねぇのかよ!?」
「先も言った通り、ワシら現地人からしても転移者のことについては分からないことの方が多い。そもそもお前さん達には“死”というものがない上に、この世界の人間と比べてかなり異質な存在。この世界や国の
……
「あの…この世界に転移者が現れたのはいつ頃なんですか?」
「…50年ほど前じゃの」
「「「!!」」」
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