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とある場所…
暖炉の火がぼんやりと照らす部屋。その中央に位置する高級そうなソファーに横たわる一人の女性。
「レイラ様…ガザックのパーティが全滅したとの報告が」
その女性の傍らに立つ男が、声を掛ける。
「ガザック~?…誰だっけ?それ?」
「新人狩りで魔石の収集にあたっていた部隊です」
「へぇ~…遂に“ロザリオ”が邪魔でもしてきた?」
「いえ…それが、どうやら標的の
「!!…へぇ、面白いじゃない。その…ゴザック?…が戻ってきたら、私の所へ連れてきなさい。話が聞きたいわ」
「かしこまりました」
女性は少し考えるような素振りを見せると、妖艶な笑みを浮かべた。
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朝が来た。
時刻は午前8時を過ぎたあたり。昨日の疲労感もすっかり取れ、瀕死まで追い込まれていたHPも全回復。俺はマイルと共に身支度を整えていた。
「ナギ、マイル…ノノが朝ご飯食べようって…」
コンコンと部屋のドアがノックされ、幼い少女の声が聞こえてくる。俺は部屋のドアを開ける。
「あ…お、おはようございます!…ナギ」
「うん、おはよールルア。ちょっと待ってて、すぐ準備する」
「おう!ルルアおはひょー、ひょうもはわひいなぁー!」
「あ、マイル…おはようございます」
歯を磨きながら出てきたマイルに、丁寧にお辞儀をしながら挨拶するルルア。ルルアの方がしっかりしてるんじゃないか?…
俺達は早々に支度を整えると、ルルアと共に一階の食堂へと降りていく。
「おはよ…ナギ、マイル」
「「おはよー」」
既に下に降りていたノノと挨拶をかわし、俺達はテーブルに着く。
「皆おはよー!わー!!ルルアちゃんすっごい美人さんじゃないっ!!」
ミアが出てきて、ルルアを見るなりルルアを抱きかかえて頬ずりする。ルルアは少し恥ずかしそうにしている。
「あ…ミアさん、お洋服、ありがとうございます!」
「うんうん!いいよいいよー!ちゃんとお礼も言えて偉いねー!!」
俺達はその光景を眺めながら、微笑む。まだルルアの硬さは取れないが、昨日の晩、大分コミュニケーションを取れたお陰か、少しは俺達に慣れてくれた…のかな?
「待っててね!おいしいご飯持ってくるから!!」
ミアはそう言うと、厨房の方へと入っていった。さて…これからどうするか。ルルアはNPC、まさか俺達の危険な冒険やクエストに連れ出すわけにもいかない。
「なぁ、ルルア…お父さんとお母さんはどうしてるんだ?」
「……」
ルルアは暗い表情を見せる。悪いこと聞いたかな…。
「…お父さんとお母さん、クルドの村にいるの。ルルア、お母さんの言いつけ守らなくて、森で遊んでたら“
「!…そんなことないよ」
「きっと心配してるぜ?父ちゃん母ちゃん」
「ノノ達が…送り届けてあげる!」
「え!?…」
ルルアはきょとんとした表情。そこへミアが料理を運んでくる。トーストとソーセージのいい匂いが漂ってくる。
「お待たせー!沢山食べてね!…ルルアちゃん、クルド村の子だったんだねー…」
「知ってるんですか?」
「うーん…ここからだと結構遠いねぇ……歩きだと、3日はかかると思う。それに魔物が出る場所も通らないと行けないし…」
「そんなに?…」
「…ルルア、大丈夫だよ?……わがまま、言わない」
ルルアは声のトーンを落としながらも、健気に気丈に振舞おうとしている。
「なーに言ってんだ!子供が親に会うのがどうしてわがままになるんだよ?」
「ルルアたん…ノノ達に任せるっ!」
「ノノ…マイル…」
ルルアは目に涙を滲ませながら二人を見つめる。
「ルルア…お家に帰れるの!?」
「おう!任せとけ!こっちには“
…大船な。
しかし、物事はそう簡単じゃないぞ…ルルアを守りながら、三日間の長旅。しっかり準備していかなければ…それに……
俺はルルアの首に着けられた、鉄の首輪を見つめる。
「…ルルア、必ず俺達がクルド村まで送り届けてやる。でも直ぐには出発できない。少しの間、我慢してくれるか?」
「うん!ナギ達といるの…楽しいから」
ルルアは笑顔を見せる。俺達は賑やかな朝食を楽しんだ。
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