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食事を終え、宿の部屋へと入った俺は、ベッドに横たわり天井を見上げていた。シャワールームからはマイルの鼻歌が響いてくる。ルルアはノノと同じ部屋に宿泊させた。相変わらず“奴隷なのに部屋なんて”とか言っていたが、ノノが引っ張って連れて行った。



「…………」



俺はツールボックスからスキルリストを開く。



――――――――――――――――――――

 【鏡花水月きょうかすいげつ

 近くにいるパーティメンバーのスキルを

 複製し、発動する。

 発動するスキルが武器を使用する類のもの

 である場合。適切な武器を装備していなけ

 れば不発となるが、その他特殊な発動条件

 を無視して発動することが出来る。

 

 消費:複製するスキルに準じたMP及びAP

 CT:複製するスキルに準じた時間

――――――――――――――――――――



このスキル…いつの間にか俺のスキルリストに入っていた。ガザックはこのスキルのお陰で、マイルの【炎舞】をコピーして倒すことが出来たが…ファットグールを倒したときに習得したのか?…それにしても、取り込んだ魔石のジョブ以外の、【不限の器】の固有スキルを習得したのは初めてだ…。まだ俺のジョブは謎が多い…そして…



「ふーっ!さっぱりした―!!」



マイルが上半身裸でシャワールームから出てくる。



「お先!ナギも入って来いよ!」


「あぁ、そうする」



俺はシャワールームへと向かう。先程のルルアの言葉を思い出す。



『ルルアは…ルルアで良いの?…』



この世界のNPCにも過去があり、歴史がある。ルルアも“奴隷キャラ”として産まれたわけではなく、両親がいて、ちゃんとした名前が、奴隷となる前の思い出があった。この世界は…本当にただのゲームなのか?……



「ナギ―!!マイル!!」


「!?」



部屋の扉が慌ただしくノックされ、ノノの興奮したような声が飛び込んでくる。



「どうした?」



俺は部屋のドアを開ける。



「ごしゅ…ナギ…様」


「え?…ルルアか!?」



ノノの隣に立つルルア。だがその見た目は先程までとは別人のようだった。暗くくすんだ灰色だったはずの髪は、輝くような純白に。汚れていた肌も、今は綺麗になり、子供らしいハリツヤを見せている。恰好もボロキレのような服から、清潔な子供用のワンピースに着替え、なんとも可愛らしい少女の姿がそこにはあった。



「おぉー!!ルルア!めっちゃカワイイじゃん!!」



マイルが駆け寄ってきて目を丸くする。



「でしょでしょ?…お風呂入ったら、ルルアちゃん超美少女だった!…」



ノノも興奮気味に話している。しかし、見違えたなーこりゃ…。



「その服は?」


「ミアさんが貸してくれた…」


「あの…ナギ様」



ルルアがつぶらな瞳を俺に向けてくる。おー、なんだこの生き物…可愛い。



「ルルア、奴隷なのに…ご飯も、お風呂も…」


「ナギでいい。それにルルアはもう奴隷じゃない。俺達の友達だ…似合ってるな、その服」


「!…ありがとう…ナギさ…ナギ?」


「うん、ナギでいいよ」



ルルアは恥ずかしそうに俯く。



「オレはマイルだ。よろしくな、ルルア」


「私はノノ…よろしく、ルルア



二人が顔を緩ませている。いや、たんって…



「ナギ…マイル…ノノ…?」


「うん、そうだよ」



ルルアが俺達を一人一人見ながら名前を呼ぶ。



「ルルア、がんばって働きます!…捨てないで」


「「「!!」」」


「捨てるわけない!…ルルアたんは誰にも渡さないっ…」


「てゆーか、働く必要もねぇっての!」



俺達はルルアに微笑みかける。ルルアは目に涙を浮かべながら、笑った。



その後、俺達は部屋でひとしきり会話を楽しんだ後、就寝した。



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