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センターギルド。
「……」
カウンター内の椅子に腰掛け、店内を伺う男。ハリス=ウースラッド。
「…マイネ」
「はい?」
「あの新人達はまだ戻って来んのか?…」
「あー!!やっぱり気にしてるー!ですよね?私もあの子達ちょっと気に入ってるんです。特にあのナギって子、カワイイ顔してるのに眼差しはどこか鋭くて…」
「やかましい!あやつらが来たら教えろ!!」
「はいはい」
ハリスはふっと溜息を吐く。そんなハリスを見てマイネはくすくすと笑う。そんな時、店の扉が開く音がして…
「あ!帰ってきましたよ!ハリスさん!!」
「……うむ」
ハリスが待ちかねていた、三人の新人冒険者が入ってきた。
♦
「依頼、完了しました」
俺達はセンターギルドのカウンターに座るハリスさんの前に行き、声を掛ける。
「うむ、確認は済んでおる。報酬は…」
「ずっと待ってたんですよ、ハリスさん」
「やかましい!」
ハリスの横でくすくすと笑う女性。俺はステータスを確認。マイネ=リィンカート…さんか。緑の長い髪を後ろでまとめ、すらりと背の高く、知的な印象を与える美人な女性。【識別】スキルのレベルを上げたが、この人もレベルすら閲覧できない…センターギルド関係者は高い【隠蔽】スキルを所持しているのだろうか…。
「めっちゃ綺麗な人だな、ナギ…胸も大きいし…」
マイルが嬉しそうに耳打ちしてくる。アリシアさんに会った時も同じようなこと言ってたよな、お前。
「む…胸……」
…気にするな、ノノ。お前にはまだ未来がある…。
「マイネ!報酬を…」
「あ、はい…失礼しました」
マイネさんは笑いながら羊皮紙をカウンターに置く。
「報酬受け取りの“魔印”をお願いします」
「魔印?…」
「ここに指を押し当てて頂ければ大丈夫ですよ!報酬はパーティの皆さんに均等割りでよろしいですね?」
「あ、はい」
俺は言われた通り、羊皮紙の隅に親指を押し当てる。指先が淡く光り、羊皮紙に俺の指の型が残された。
「おぉ…」
ピコン―――
――――――――――――――――
クエスト完了
報酬を受け取りました
・5000G
――――――――――――――――
「あれ?報酬は6000G…1人2000Gじゃ…?」
「皆さんが倒したのは、ファットグール・グランデ。ファットグールの上位種です!追加報酬込みで総額15000G。新米の冒険者が倒せるような相手ではないんですよ?ホントに凄い!」
そうだったのか!?…まぁ、お陰で危うく死にかけたわけだけど……。
「やったな!ナギ!!」
「しばらく…寝泊りに…困らない」
「ところで…」
ハリスさんが咳払いを一つ。話を切り替える。
「お前達、明日の朝また此処に来い。少し話したいことがある…」
ハリスさんがじっと俺を見つめてくる。…丁度いい、俺も聞きたいことがある。
「…わかりました」
「うむ…今日は疲れただろう。早めに休むんだな……して、その子は?」
俺の足元に立っている小さな獣人族の少女。彼女に目を向け、ハリスが言う。
「あ……」
俺の後ろへと隠れる少女。
「あー、まぁ、なんというか…成り行きで」
「……まぁよい。今日のことは明日、詳しく聞かせてもらおう。ご苦労…だったな」
「…はい、お疲れさまでした」
俺達はハリスさん達に別れを告げ、店から出ていく。
「……マイネ、アヤツが連れている獣人族の娘…」
「はい…昨夜、“
「まさか…あの新人…」
ハリス達は俺達の背中を見つめていた。
今日の出来事が、大きな波紋を呼ぶことになると、俺達はまだ知らなかった。
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