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「もうお前は何も出来ねぇよ…」


「は!?何を言ってやがる?…」



俺は深く息を吐く…。



「もう“詰んで”んだよ、お前」



これで最後…ガザック討伐の為の最後の“種”。

もうコイツに…何もさせない…何も言わせない…もういい、充分だ…終わらせる!!



「【異能転化オーバーライト】」


「!!!」



俺は下級魔導士にスタイルチェンジ。それを見たガザックは距離を詰めてくる。…そうだよな、遠距離攻撃を仕掛けてくる魔法職相手には接近戦に持ち込むのが定石セオリー。なら…



「なに!?」



俺は向かってくるガザックに対し、逃げるのではなくこちらも接近!



「【異能転化オーバーライト】!!」


「また剣士か!!」



俺の身体が光に包まれ、それを見たガザックは足を止め、迎撃態勢。残念…ハズレだ。



「っ!…【スモールヒール】!」


「なんだと!!?」



に切り替えた俺は、ガザックが足を止めると同時に後方へ跳び、自身に回復魔法を発動。やっぱり回復量は少ないが…HPが半分程度まで回復できた、これなら…



「テメェは一体…?」


「説明する気はないと言ったろ、【異能転化】」


「!!」



俺は再び下級魔導士に変化。ガザックに掌を向け…




「おいテメェェェ!動くんじゃねぇぇぇ!!!」


「!…ブレングス」



ブレングスが叫ぶ。見ると、ブレングスがマイル達に向け、弓を引き絞っている。



「ブレン!!…何のマネだ?」


「動けばコイツらを殺すぞぉぉぉぉ!!?」


「ブレンてめぇ…俺が負けるとでも思ってんのか!?」


「ソイツは危険だぁガザック!!…真っ向からやり合う必要はねぇ!俺達二人で…」

「お前、馬鹿だな」



俺はブレングスを表情一つ変えずに見据える。



「そもそもこの決闘で俺が負ければ、俺達は全員終わりだ。人質として成り立ってないよ…それに……そこの二人はそんなにヤワじゃないぞ?」


「へっ…来いよ、腰抜けネズミ野郎。オレ達二人と遊ぶか?」


「もう…スキルのクールタイムも…消化した…よ?」


「ぐ…」



ノノとマイルが獣人族の少女を背後にかばいつつ、戦闘態勢。ブレングスは怯み、動けない。



「ちっ…余計なことしねぇで見てろブレン!!コイツは俺が殺す!!それで終わりだ!!」



ガザックが斧を振り上げつつ、俺に急接近。



「だから…」



もう何もさせないと言っただろ!!

俺はガザックの突進攻撃を躱し、背後に回る…


【フレイムスロウアー】!!!



「ぐうぅ!!」



掌から炎を噴射し浴びせかける!…やはり、スキルじゃ大したダメージは与えられないか…だが、ガザックのHPは残り1/4を切った…仕掛けるか……これで最後だ!ガザック!!



「ナメるなあああぁぁぁあ!!【剛閃斧ごうせんふ】!!」



ガザックが炎を切り裂き、掻き消す!!



「【瞬進斬しゅんしんぎり】…」


「!!!」



下級剣士にスタイルチェンジした俺は、消えゆく炎の中から高速で跳びかかる!!



「来い!!!…なに!?」



俺を迎え撃つべく構えるガザック。だが俺はガザックの脇を通り過ぎ、更に後方…決闘のフィールドの外へと跳び出していく!



「バカが!!自分から外に出やがった!!」



俺の身体を赤い電流が走り、痺れるような感覚と共にHPが減少していく…



「馬鹿はお前だ…」


「なに!?」



には長いタメがいる…ここならお前は追って来ないだろ?…最後の“種”だ…これで全て決まる!!



「【炎舞えんぶ】…」


「!!?」



俺の黒羽くろばねつるぎが炎をまとう!



「【七式ななしき】…」


「!…あれって!オレの!!?」



マイルが目を丸くし、炎は更に大きく燃え上がっていく!!



「な、なんだそれは!!?下級剣士のスキルに、そんなもの…」


「【炎魔独行えんまどっこう】!!!」



俺は剣から噴き出す炎と共に、ガザックに突進!!



「な!なんだとおおおおおお!?」


「はああぁぁぁあ!!」



一撃。ガザックは斧で受けるが、勢いに押され、態勢を崩す!



「っ!!!」



二撃。ガザックの斧を弾き飛ばし、ガザックは無防備に!



「終わりだ!ガザック!!!」



そこへ、逆巻く炎を纏った剣の三連撃!!!



「ぐあああああぁぁぁああっぁぁあああああああ!!!!!」



ガザックの絶叫が響く!!

ガザックのHPはみるみる削れていき…



「………」


「そ…んな……この、俺が…こんな…奴に…」





ガザックは光の粒子となって、消滅した。

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