転移者とNPC

80


「「ナギー!!!!」」



ノノとマイルが叫ぶ声が聞こえる。ガザックの攻撃を受け、跳ね飛ばされる俺と獣人族の少女…。



「くっ……」



俺は少女をかばい、背中から着地……



「う……」



良かった、この子は無事みたいだな…。俺は起き上がり、少女を抱える。



「あ…あの……?」



少女の怯えたか細い声…。



「マイル、ノノ…頼む」


「お…おう!」



俺は少女を光の円の外にいるノノとマイルに預ける。



「…どうなってる?今のでHPが無くなってもおかしくなかったはずだ!!なぜ生きてやがる!?」


「…【心頭滅却マインドクリア】」


「あぁ!?」



俺はガザックに斬られる直前に、スキルを発動していた。


【心頭滅却】…30秒の間だけ、自身の耐久力を大幅に増大させるスキル。効果時間も短く、一度使うと10分のクールタイムを要する重たいスキルだが…あって助かったな。



「何をしやがった!?なぜその程度のダメージしか受けていない!!?」


「…だまれ」


「あぁ!?」


「黙れって言ってんだよ、クソヤロー…」



俺はガザックを睨みつける。



「テメェ…まぁいい!!どうせ後一撃でテメェは終わりだ!」


「もうお前は何も出来ねぇよ…」


「は!?何を言ってやがる?…」



俺は深く息を吐く…。



「もう“詰んで”んだよ、お前」



これで最後…ガザック討伐の為の最後の“種”。

もうコイツに…何もさせない…何も言わせない…もういい、充分だ…終わらせる!!





時を少し遡り…



「それじゃぁ…“コレ”だ!…」


「!!」


「レッツ…DA…」



マイルが指を立てて、見せてくる。



「…本気か?大丈夫、なのか?……」


「ナメんなよ?…これでも、現実世界リアルじゃ“狂犬”って呼ばれてんだぜ?オレ」


「……ハハっ!…いつの話してんだよ」


「行って…ナギ…ここはノノ達が…!……ここはノノ達に任せて先に行け!」



言い直さなくても、カッコいいよ、ノノさん…。

俺はふっと小さく笑う。



“DA”…俺達after schoolがゲームで使う戦略の一つであり、それの実行を示す合図…DAはディスカバードアタックの略だ。


相手の攻略に行き詰った時に頭脳担当ブレインの俺が安全圏まで後退し、“観察”を行い、その後観察によって得た情報を元に反撃に転じる。俺達after schoolの得意とする戦術の一つ。


本来ディスカバードアタックとはチェスの手筋の一種であり、前衛の駒を動かし、背後にある駒で相手の駒を取りに行く手法だ。この、後方から敵を狙い見ている様が、俺達の戦略と似ていることから、この戦略にDAというネーミングがなされた。


マイルが示した“三本の指”は、“3分稼ぐ”という意味だ。ノノとマイルは死力を尽くして、俺に3分の時間を与えてくれると言っている……


正直、勝機は薄いが…わかったよ。責任重大だなコリャ。



俺は一気に駆け出し、林の中へと入っていく…耐えてくれよ、マイル、ノノ…



「………よし」



俺は太い木の枝へと飛び移り、その陰へと身を潜めた。そこからガザック達の様子を伺う…



「くそ…」



少し遠いな…もう少し近づきたいが、場所は平原。この林以外に身を隠せるような遮蔽物が見当たらない。もう少し…よく視えれば…



ピコン――


!!


――――――――――――――――

  パッシブスキルを習得しました


 ・【望遠】 Lv1

 集中することで、遠くのものをより

 正確に視認することが出来る。

――――――――――――――――


これは!!…



俺は直ぐにスキルポイントを割り振り、【望遠】スキルをレベル2に上げる。

意識をガザック達へ集中させると、カメラのズーム機能のように視界が近づいていく!



「…よし!」



視えるぞ!!これなら問題なく観察出来るはず…



「次は…」



俺はスキルリストから【識別】のスキルを選択し、ポイントを割り振っていく…


今は少しでも情報が欲しい!


俺はありったけのポイントを【識別】スキルにつぎ込む。



――――――――――――――――

  【識別】 Lv7

ステータス閲覧時、“詳細確認”を

行えるようになりました

――――――――――――――――



「これは…」


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