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「決闘だと!?」


「あぁ、決闘だ…互いに“賭け金”を決めて、1対1でな」



俺、波白 凪はガザックに剣を向けながら言う。ガザックの額に血管が浮き上がり、怒りを露わにする。



「…Eランクごときのキサマが…この俺と……決闘だとぉ!!?」


「ガザック!構うこたぁねえ!このままやっちまおうぜぇぇ!」


「恐いか?…1対1サシの勝負は?…ガザック」



先ずはガザックを挑発……ノッてこい!



「ナメ腐りやがって…良いだろう!!だが、安全セーフティルールなんて甘いこと抜かすんじゃねぇぞ!?“死闘デスファイト”だ!!!」


「あぁ、それで良い…」



よし、ノセることは出来た…次は…



「で!?…何を“賭ける”!?…」


「…俺達全員の命、で…どうだ?もし俺が負けたら俺達を好きにしてもらって構わない」


「はあぁぁぁ!?コイツ頭イカレてんのかぁぁぁ!?」




ガザックは意地汚い笑みを浮かべる。カモが来た…とでも思ってるのか?ガザック…




「ハッハッハ!良いだろう!!お前が負けたらお前達は俺と奴隷契約を結べ!!魔石がドロップした後も永遠に俺の道具として働け!!!」


「…わかった、それで良い」



これで負けられなくなったなぁ…。俺はマイルとノノに目線を向けると、二人がニッと笑みを返す。…ほんと、どーしてここまで信用してくれるんだか。



「…よし、ならルールの詳細を…」


「待て、アンタの賭け金が決まってない」


「あぁ?…俺が負けるわけねぇのに賭け金なんざ……まぁ、いいだろう…何が欲しい?」


「それじゃあ…アンタが昨日連れていた奴隷の所有権」


「あぁ?」



俺は昨晩のことを思い出す…





昨日、センターギルドにて…



「でもねぇ…“あの子”を助けるのはかなり骨が折れるよ?」



アリシアさんはジョッキを片手に項垂れながら言った。



「仮にあのガザックをぶちのめしても、あの奴隷の子の所有権がガザックにある限り、自由にはなれない…」


「何か方法はないのかよ!?」



マイルが悔しそうに言う。奴隷の所有権…仮にガザックを倒しても次回ログイン時には復活するから意味がない、という事か。重要なのはガザックを倒すということより、所有権を放棄させること…。



「…なくはない」


「なんですか!?」


「…“決闘”だよ」


「決闘?」


「そ、この世界には、プレイヤー同士が互いに何かを賭けて闘う決闘システムってのがある…」



アリシアさんはジョッキをテーブルに置き、続ける。



「決闘は1対1で行われ、他のプレイヤーは参入出来ない。その闘いに勝った者が、あらかじめ提示しておいた“賭け金”を手に入れられるのさ…」


「その賭け金は…お金じゃなくても良いってことですか」


「そう…武具やアイテム、奴隷の所有権…互いが納得するならなんでもアリさ。賭け金と詳細なルールを決めたら、闘いがスタートする…」



決闘システム…これなら…



「あ!!…でもアンタ達、ガザックに挑もうなんて考えるんじゃないよ!?今のアンタ達で勝てる相手じゃないんだから!!」


「あー…はい、判ってます」


「…それにあの男が素直に奴隷所有権を賭け金にしてくれるかもわからないし、そもそも決闘にノッてくるかだって…」


「その決闘システムってどうすれば使えるんですか?」


「ん?…決闘を申し込みたい相手を視界に捉えた状態で、ツールボックスから決闘申し込みのメッセージが送れるんだ。それに相手が同意すれば…って!ガザックに挑むんじゃないよぉ!!?」





時を現在に戻し…



「奴隷所有権だと?…」


「え!?…でもあの子は魔物の囮に使われたって…」


「あぁ…それはガザックの嘘だよ、マイル」


「なにぃ!?そうなのか!?…」


「そうだろ?ガザック?」



俺はガザックに尋ねた。


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