新人狩り<ルーキーハント>

59


『見事だ…少年』



誰…だ?



『器を継ぐに相応しい才覚…』



目が…開かない…瞼が…重い…。



『少年、お前がこの世界にもたらすものは何か…今しばし、見届けさせてもらおう』



何を…言ってるんだ?…



『少しだけ、力を開放してやろう…これからも期待している、少年』






「ん…」



俺はゆっくりと目を開いた…。青々とした木の葉…その隙間から陽光が洩れている。水の流れる音…。どうやら俺は仰向けに倒れているようだ。


徐々にはっきりとしてくる意識…。俺はゆっくりと体を起こした。



「ナギっ!!」


「おぉ!起きたかナギ!」



ノノとマイルが駆け寄ってくる。たしか…ファットグールとの戦闘中で…



「あれ?…俺、どうなったんだ?」


「びっくりしたぜ!意識失って倒れちまったんだよ!」


「HP残ってるのに…目を覚まさないから…心配した」



突然蘇る、気を失う直前の記憶。



「っ!!ファットグールは!?」


「倒したぜ!オレの超必殺技で!!覚えてないのか!?超カッコよかったのに!オレ!!」


「自分で言う?…」


「いや…覚えてる!……グッジョブ、だな!マイル」


「へへ…おう!」



俺は周囲を見渡す。森の中を穏やかに流れる川。その川べりに俺達はいる…こうしてみるとやっぱり綺麗な森だな。森全体を覆っていたグールたちの異臭も今は無い。クエスト…クリア、で、よさそうだな…。


続いて自分のステータスを確認…レベルが25に上がってる!?そういえばファットグールとの戦闘のリザルトを確認する前に気絶したんだっけ?あれ?…HPが回復している?



「ダメージが…」


「あぁ、とりあえずオレがおぶって此処まで運んだんだけどさ…目覚まさないから、川の水ぶっかけてみたり、無理やりポーション飲ませたりしてみたんだ。目は覚まさなかったけど…」


「HPは…回復した…」


「お、おう…」



なんというか…もうちょっと丁寧に扱ってくれないかな?



「まぁ…その…迷惑かけたな」


「気にすんな!お互い様だ」


「いーよっ」



俺は立ち上がり、ツールボックスを開く。時刻は15時を回っている。



「どのくらい気を失ってたんだ?」


「そんなに長くはないぞ?…多分15分か20分くらいじゃないか?」


「そうか…」



何か夢を見ていたような気がするんだけどな…思い出せないな。



「さてと!ナギも目を覚ましたし、帰るか…飛翔石、使ってみるか?」


「いや…もう少し休んで、歩いて帰ろう」


「お?」


「俺達を追けていたプレイヤー…あいつ等が接触してくるかもしれない」


「なら尚更、飛翔石で飛んだ方がいいんじゃないのか!?ナギだって目覚ましたばっかりだし…」



俺は数秒の間、考える。おそらくあのプレイヤー達はPKと見て間違いないだろう…安全を考えるなら飛翔石を使うべきだ…。だが、正体不明の連中にいつまでも付き纏われるのも面倒だ。敵の正体、とまではいかなくとも尻尾くらいは掴んでおきたい。



「…俺なら大丈夫だ。でも、念のためいつでもクランツに帰還出来るように飛翔石の準備はしておいてくれ」


「「……」」



二人は顔を見合わせると、わかった、と頷いた。



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