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「ナギ…油断しない…」


「あ、はい、すみません」



マイルひとのこと言ってる場合じゃなかったな。グールを包んでいた炎が消える。グールのHPは半分近くまで削れている。このダメージ量なら…



魔法静糸このスキル…数秒しかもたない…よ?」


「え?」



糸を振り払いグールが飛び掛かってくる!ちょっと待っ…



「こんにゃろおぉう!!ちょっとビビったじゃねぇかぁ!!」



横からマイルが大剣で薙ぎ払う!

グールは吹っ飛ばされて、倒れる。お…ナイス、マイル。だが…



「あり?全然効いてない?」



見るとグールのHPは、マイルの攻撃で21しかダメージを負っていない。ファイヤーボールではかなりのダメージが入ったのに…。



「物理攻撃に対する耐性が高いみたいだな…これはちょっと厄介かもしれないぞ…」



有効打になるのは俺の魔法か、マイルの【炎剣】での攻撃…くらいか?ノノの攻撃技が意外と物理一辺倒なんだよなぁ…これはハリスさんが言ってた通り、数で押されてMPの消耗戦になるとキツそうだな…。



「どうする?…ナギ?」


「…とにかく先ずは、目の前の敵を片付けよう!マイル、こいつらの弱点は火だ!」


「おっけー!任せろいっ!【炎剣】!!」



マイルが大剣に炎を灯し斬り付ける!


一体のグールが消滅…続けてマイルがもう一体のグールを斬り上げで空中に打ち上げた!


【フレアボム】!


打ち上げられたグールに魔法を放つ!もう一体のグールも消滅。リザルトが表示された。



「屍霊の目玉?…またなんか気持ち悪ぃもんドロップしたな…」


「ノノ…ドロップなし…不服」



さて…グール単体はそこまで強くはないが、もしこの先にグールの大群でもいようものなら、こっちはジリ貧だな。この世界のMPは30秒毎に1ポイントずつ回復する仕様のようだが…。


こんなことならアイテムショップでMPポーション買っとくべきだったか?…とはいえ、結構良いお値段するんだよなぁ。今の俺達の金銭状況にはちょっときつい。




「移動しよう…今の戦闘で敵に集まられても困る。静かに移動しながら、各個撃破していくぞ」


「「おっけい」」



俺達は更に森の奥深くへと入っていった。





その頃、センターギルドにて…



「ハリスさん…まーた意地悪したでしょ?」



カウンターの中で椅子に腰かけ、コーヒーを飲む白髪頭に丸眼鏡の男性、ハリス=ウースラッド。その隣に立つ女性が、ハリスに声を掛ける。



「意地悪?…なんのことだマイネ?」


「またとぼけちゃってぇ…新人君達に紹介した依頼。アレは苦労するんじゃないですか?あの子達のパーティ、魔法職の子いなかったみたいですし…アンデット系のモンスターは物理攻撃効きにくいですからねぇ」


「ふん…」



ハリスはバツが悪そうにコーヒーを口にする。



「そのくらいの不利、覆せんようでは一流の冒険者にはなれん…それに転移者ストレンジャーは仮に死んでもしばらくすれば復活する。いい経験になるじゃろうて…」


「あー、もしかして…珍しく新人に期待してます?」


「やかましい!口ではなく、手を動かせ、手を!」


「はーい」



マイネと呼ばれた女性は、店の奥へと入っていく。



「ふん…期待、か…。今回の依頼を無事こなすようなら…面白いかも、しれんな」



ハリスは一人、呟くように言葉をこぼした。



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