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朝食を終え、俺達は早速センターギルドへと向かった。朝から多くの冒険者が店内に集まっていた。



「さてと、とりあえず依頼を受けたいんだけど…」



俺達は依頼書が貼られている掲示板の前に足を運ぶ。俺は大量にある依頼書に目を通していく。…ちょっと試してみるか。俺は一枚の依頼書を掲示板から引き剥がし、カウンターへと向かう。



「おいナギ!?…それ大丈夫か!?」



マイルの心配をよそに俺はカウンターへとたどり着く。昨日のおじいさんが椅子に腰かけ、何やら書類に目を通している。



―――――――――――――――――――

 ハリス=ウースラッド Lv???

 [センターギルド:マスター] NPC

―――――――――――――――――――



NPCにも【隠蔽いんぺい】のスキルがあるのだろうか?レベルが見えないのは初めてだな…。



「おぉ、新人じゃねぇか…依頼を受けるのか?」


「はい、これを受けたいのですが…」



俺に目線だけを送り、声をかけてきたおじいさんに、手にしていた依頼書を渡す。



「……これはお前さん達には無理だ。他のを選び直しな」



おじいさん、もとい、ハリスは依頼書を突き返す。依頼書には“ハンマーヘッドドラゴンの討伐 推奨:レベル40以上、5人以上のパーティ”と書かれている。



「…そうですか。では、俺達に合う依頼を見繕ってくれませんか?」


「ふむ…ゴブリン10体の討伐。この辺りだろ…」



そう言って、ハリスは一枚の依頼書を差し出してくる。



「ゴブリンなら散々倒しましたよ。もう少し、上のレベルの依頼を受けたいんですが…」


「お前さん達は、今回がギルドでの初仕事だ。…まだ、ギルドからの信頼を得ていないからな。文句を言わず、地道にこなしていくことだ」



…やはり人間と遜色ない会話と対応力。NPCも一人の人間として見るべきだな。でも、決まったプログラムで動くわけではない人間だからこそ、“交渉”の余地が生まれる。




「でも俺達は全員レベル20を超えています。もう少しお役に立てると思いますが、どうでしょう?…あまり人がやりたがらない仕事でも構いませんので、もう少し報酬が良い依頼をご紹介いただけませんか?」


「…“転移者ストレンジャー”にしては礼儀正しいじゃねぇか。良いだろう、ちょっと待ってろ」



そういうと店の奥へと入っていくハリス。ストレンジャー?…俺達プレイヤーはNPCからそう呼ばれているのか。



「コイツでどうだ?」



ハリスは戻ってくると、依頼書を俺に手渡す。…“リンドの森のアンデッドの掃討 推奨レベル20以上”か。報酬額は…6000G!三人で分配しても一人2000Gの取り分…悪くない。NPCに対し交渉が可能なのも実証できた。



「ありがとうございます!これにします!」


「わかった…森にアンデット系モンスターが出現してる。原因は森の奥から発生している瘴気…その瘴気を発しているモンスターがいるはずだ。おそらく“ファットグール”という中型のアンデットだ。その他アンデットモンスターを殲滅しつつ、親玉を倒せば依頼完了だ」


「了解しました!」


「アンデット系の魔物は知能は低く、動きもトロいのがほとんどだが…しぶとい。数で囲まれたら厄介だぞ、気を付けな」


「わかりました、ありがとうございます」



依頼を受け、センターギルドを後にする俺達の背中を、ハリス=ウースラッドは見つめていた。

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