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「!!」
俺とマイルが即座に、ノノの前に出て背中でノノを制する。
「…落ち着け、ノノ」
「ふーっ!…ふーっ!…」
ノノが目を見開き、明らかな怒りを表している。そうだよな…ノノは“こういうの”を一番嫌う…。でも、今はダメだ、ノノ。
「抑えろ…ノノ」
「あぁ…いつか滅茶苦茶レベル上げて、アイツぶっ飛ばしてやろうぜ、ノノ」
俺とマイルが背中越しにノノに声を掛ける。悔しいが、今はアリシアさんに従った方がよさそうだ…。
「……そういう二人こそ…剣に手が伸びてる」
「「!」」
ノノを制しながら、無意識に剣の柄に手を掛けていた俺とマイル。…怒ってるのは
お前だけじゃないぞ、ノノ。
「あ?…なんだぁ?因縁付ける気かぁ!?あぁ!?」
俺達の様子に気付き、ガザックが凄む。コイツ…品性の欠片も感じないな。
「いや、すまないね!この子達まだここのルールをよく知らないんだよ。ここは見逃してやってくれ…私の顔に免じて、さ?」
アリシアさんが前に出てきて、ガザックと対面する。
「…アリシアか。ふん、“偽善者集団”が…。だがまぁ、ロザリオと事を構えるのはまだ早ぇ」
「そーかい、ありがと」
アリシアさんが笑顔を向けるが、目は全く笑っていない。
「ふん…おら行くぞ!ゴミが!!」
ガザックは引き摺るように獣人族の少女を連れて店を出ていく。途中俺達の方を振り返り、ニヤリと笑みを浮かべ出ていった。
「次会ったら…刻む」
ガザックが出ていったドアを睨みつけながら、ノノが不穏な言葉を吐く。
「…よく耐えたね。席に戻ろう」
さっきの騒動を見て、静まり返っていた店内が再び喧騒に包まれる。
「…君達はこの世界を、どう思う?」
席に着くなり、アリシアさんが尋ねる。
「どうって…」
「この世界は、極めて現実味を帯びている」
「?」
「プレイヤーだけじゃない。NPC達もこの世界にしっかりと息づいているんだよ。
NPC達にもそれぞれ、生活や家族、思想がある。ただのプログラムやデータだと笑う者もいる…。だけど、私はこの世界に来てNPCと接してみて…彼等をただのデータだと思うことは出来なかった」
さっきまでの酔っぱらっていたテンションはどこへやら。俺達はアリシアさんの話を静かに聞く。
「この世界でNPCが死ぬと、よくあるゲームのように復活やリポップはしない」
「!」
「現実世界で人が死ぬのと同じように…NPCが死ぬと、その人が居なくなった世界が続いていくんだ。NPCも死んだ人を想い、悲しみ、憂う…そんな彼等を、私はゲームの一部だと笑うことが出来ないんだよ…」
そうなのか…この世界のNPCは一度死んだらリポップしない…。それに、俺も数人のNPCと会話したが、アリシアさんの言うように、普通の人間としか思えなかった。アリシアさんは一口酒を飲み、続ける。
「私達プレイヤーはHPが尽きても、次ログインする時には復活してこの世界をプレイできる…。この世界においては、よっぽど彼等NPCの方が人間だと思うよ」
俺達の間に重たい空気が流れる。
「私達のギルド、革命のロザリオは、こんな不公平な奴隷制度が
「「「!!」」」
世界を、変える?…。そうか、“原状回復”しない仕様のこの世界。プレイヤーが一国を治めることも可能だというこのニューワールドの世界なら、文字通り“変える”ことも可能…。
「革命のロザリオは“団長”がそんな想いを掲げ、それに賛同する者が集まって出来たギルドだよ」
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