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「さてと、それじゃあ皆に相談なんだけどぉー…」


「ん?なんすか?」


「色々良くしてもらった…ノノ達に出来ることなら…言ってみる…」



フレンド登録を終えた俺達にアリシアさんが切り出す。



「ウチのギルドに入らなーい?」


「え…」



アリシアさんが緩み切った笑顔を向けながら言う。俺は再度アリシアさんのステータスを確認する。



――――――――――――――――

   アリシア Lv42

 [水龍剣士ルエスパーダ] Aランク

 ギルド: 革命のロザリオ

――――――――――――――――



「っ!!」



フレンド登録した事で、アリシアさんのステータスが隠蔽されずに表示される。


この人ちゃっかりAランクジョブなのかよ!ギルドは、革命の…ロザリオ…?



「おいっ!!早くしろ!!このゴミクズがっ!!!」


「!?」



不意に店内に響いた怒声。俺達は声のした方に目を向ける。そこにはかなりがっしりとした体格の大男。手には鎖が握られており、その鎖の先には首輪でつながれた…子供?



「おい…なんだよあれ?…」


「…奴隷だね」


「奴隷!?」



さっきまで酔ってへべれけだったアリシアさんが、表情を固くし、声のトーンを落とす。



「そう…この世界には奴隷制度が存在するんだ。奴隷商人に金を払えばプレイヤーも奴隷を買うことが出来る…」


「奴隷を…買う…」



俺は再び男に目を向ける。


―――――――――――――――

 ガザック  Lv46

[??????] ?ランク

ギルド:??????

―――――――――――――――



厳つい顔をしており、浅黒い肌に赤黒い短髪、耳には多数のピアス、銀の分厚い鎧に身を包み、背中には大きな戦槌バトルハンマー…。そのまま鎖でつながれた子供に目を向ける。


――――――――――――――

  クズ猫 Lv3 NPC

     [奴隷]

――――――――――――――


くすんだ灰色の髪。擦り切れてボロボロの服。体には泥のような汚れが目立つ。そして頭には、力なく垂れた猫のような耳。



「クズ猫?…」


「獣人族の子供だね…奴隷は主に全てを支配される。クズ猫ってのはあの男が付けた名前だろう…」


「ひどい…」



獣人族…この世界には所謂亜人族もいるのか…。それにしてもあの扱いは…。



「さっさと歩け!!」



大男、ガザックは罵声を浴びせ、鎖を引っ張る。



「うっ…」



獣人族の少女は疲弊しきった様子でフラフラと歩く。



「あの野郎っ!」


「待ちな…騒ぎを起こすんじゃないよ…」


「でもっ…」



マイルをアリシアさんがいさめる。



「この世界には奴隷制度がある…つまり合法だ。自分の奴隷をどう扱おうと、飼い主の勝手…この世界の“ルール”ではあの男を非難することは出来ない」


「だからって…あんなの…」


「この街の中での戦闘行為は禁止されてる。“憲兵”が来るような騒ぎになったら痛い目を見るのはこっちだよ…。それでなくても相手はアンタ達より格上…気持ちは分かるけど、抑えるんだ…」


「く…」



法律…憲兵…奴隷…。この世界はかなり作り込まれている。だけど、奴隷制度なんて…見ていて気持ちの良いものじゃない。



「さっさと歩けって…言ってんだろうがぁ!!」


「!!!」



ガザックが獣人族の少女の顔を蹴りつける!



「ああっ!…」



少女は小さくうめき声を上げて倒れる。



ガタン―――



ノノが勢いよく立ち上がった。

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