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「アンタ達、新人だろ?…良かったら色々案内してあげよっか?」


「あの…えーっと」  



すらりと背が高く、女性も羨むようなモデル体型。綺麗な青い髪に凛とした目鼻立ち。歳は20代前半といったところだろうか。背中にはその線の細い身体には似つかわしくない大きな剣。ライトアーマー…というのだろうか露出度の高い防具。健全なゲーマー男子は目のやり場に困るな…。



「綺麗なお姉さんだなっ…」



嬉しそうにマイルが耳打ちしてくる。俺は少しばかり警戒しつつ、目の前の女性のステータスを表示させる。



―――――――――――――――

 アリシア Lv42

[???????] ランク?

ギルド:??????

―――――――――――――――



やっぱり、名前とレベル以外の情報は見れないな。



「えっと…アリシア、さんでいいですか?あなたもプレイヤー…なんですよね?」


「色々聞きたいだろうけど、話の続きは場所を変えようか…良くない連中がいるみたいだし」



アリシアさんが視線を横に送る。その視線を追うと、建物の陰からフードを深く被った二人組の人影がこちらを覗いていた。こちらの視線に気付いたのか、建物の裏へと姿を隠した。なんだ?…俺達をつけてたのか?



「今のは?…」


「いいから着いておいで、悪いようにはしないから。ギルドの登録もまだなんだろ?」



…まあ、悪い人ではなさそうだし。このゲームの情報が入手出来るなら有難い。俺達はアリシアさんの後に続いて歩き出した。





半ば強引にアリシアさんに連れられ、俺達は大きな建物の前へとやってきた。赤い屋根の木造で、少々古ぼけた印象の建物。見たことのない文字の看板。それを注視するとポップアップが表示された。なるほど、この世界の文字もポップアップ表示させれば、現実世界の文字に置き換えてくれるのか。俺は看板の文字を読む…



「センターギルド?」


「そ!ここでギルドの登録も出来るし、依頼を受けてお金を稼いだり、冒険者に有益な情報が貰えたりするんだよ。さ、とりあえず中に入ろう」



アリシアさんに続き、俺達は中へと足を踏み入れる。


中は人で溢れかえっており、騒がしかった。丸テーブルが並んでおり、そこで飲み食いする人々…酒場ってやつか。ステータスを見るとそのほとんどがプレイヤーのようだ。やっぱり、俺達以外のプレイヤーも相当数いるようだな…。



「おっと…」



よそ見をしながら歩いていた俺は、正面から歩いてきた人物と肩をぶつけてしまう。



「すまねぇな…ボウズ」


「あ、いえ、こちらこそすいませ…」



低い男性の声。背が高く、灰色のぼろぼろのローブを着ていて、フードを深くかぶり顔は見えない。俺は無意識にその人物のステータスを開く。



――――――――――――――――――

 バトス=ローガン Lv78 NPC

  [放浪者]

 ギルド:無所属(契約請負人フリーランサー

――――――――――――――――――



レベル78⁉…今まで見てきた中で一番高いレベルだ。それもずば抜けて…。しかもNPC!?


男は俺を一瞥すると、店の外へと出ていく。NPCにもあんなレベルの高い人がいるのか。



「ほー、珍しいヤツに会ったな…」


「え?」



アリシアさんが出ていく男の背中を見つめながら言った。

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