32
「お、お前ら…何があったんだ!?」
串に刺さった焼き魚を手渡しながら、中年男性が目を丸くする。ダンジョンを抜け出した俺達は、最初の街まで戻ってきた。そして念願の焼き魚を入手すべく、露店商を訪ねたわけだが…
「魚うめぇぇぇええええええ!!生きててよかったああああ!」
「ノノ…幸せ」
焼き魚に噛り付きながらノノとマイルは至福の表情を浮かべる。俺も自分の分を店主から受け取る。
「何があったって…何がですか?」
「いや、魔物を狩りに行くっては聞いてたが…どれだけ戦ったら半日でそんなにレベルが上がるんだ!?朝、ウチに来た時はレベル1だったよな!?」
「!」
この世界のNPCもステータスを見ることが出来る設定なのか?しかし、ほんとに凄いなこの会話力。普通の人間としか思えない…AIってこんなに進歩してたのか?
「まぁ、色々あって…」
俺は苦笑いして、魚を一口頬張る。
「!!」
ほろりとほどけるような食感。絶妙な塩加減、皮目はパリッと焼き上がっており、香ばしさが口一杯に広がる。後を追うように魚の旨味が広がり、臭みは全くない。これは…
「うまいなっ!」
「そうだろう!この国に流れる清流で獲れた新鮮な魚だ。使ってる塩はアフタイル山脈で採れた天然の岩塩だぜ」
俺達は夢中で魚に齧り付き、空腹を満たした。因みにノノとマイルはもう一本買って食べていた。
♦
「うーん…」
「どうした?ナギ」
空腹という問題を解決した俺達は、街を散策することに。歩きながらツールボックスを開き、考え込む俺にマイルが声をかける。
「いや…この世界に来てから9時間以上経ってる。現実世界だと午前11時は回っている計算になる…」
「あ!確かに!学校遅刻じゃん!!」
「でもやっぱりログアウト機能は見つからない…それに家族が起こしに来てもおかしくないはずなんだけどな」
歩きながらツールボックスで色々試してみたが、ログアウト機能は見つからなかった。本当に三日間もゲームの中にログインしたままになるのか?…
「それに他にも気になることがある…」
「なんだ?」
「マイル、周りにいる人のステータス見てみろ」
マイルは言われたとおりに、周囲の人々を注視していく。
「お!?」
「気づいたか?…俺達以外にもプレイヤーがいる。それも結構多いぞ」
道行く人々…その大半がステータスにNPCの表記がされているが、ちょくちょくその表記がない、つまり、プレイヤーと思われる人の姿が確認できる。
プレイヤーと思しき人々はどの人もレベルが俺達より高く、レベル30から40前後といったところだ。装備も整っている印象を受ける。だがステータス画面には名前とレベルくらいしか表示されず、他の情報は見れない。ノノとマイルはジョブも見れるし、“無所属”となってはいるが所属ギルドの表記も見られるんだが…
「オレ達以外にもゲームモニターがいるってことか?」
「そうだったとしても、レベルが高い…それにこの世界にも慣れている感じだ…俺達がこのゲームを始める以前からこのゲームに参加していたプレイヤーがいるってこと…だと思う」
「察しがいいねぇ!」
「「「!?」」」
不意に背後から声を掛けられる。振り返ると青い髪の女性が立っていた。
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