10
「えーっと…」
俺はノノに向かって目を凝らす。
―――――――――――――
ノノ Lv1
【人形術師】ランクA
ギルド:無所属
―――――――――――――
「…
ふふん、とノノが自慢気に無い胸を張る。
「な!?スゲーだろ!?」
…なんでお前が偉そうなんだ?マイル。
でも、この人形で戦うのか?どうやって?…呪いでもかけるのか?
「AランクとBランクの俺達がいれば大丈夫さ!しっかり守ってやるから、大船に乗ったつもりでいたまえ、ナギ君!」
「はいはい、どーも」
「え!?冷たいっ!」
マイルを軽くあしらい、周囲に目を向ける。さてと、とりあえず二人とは合流できた…先輩達は別のスタート地点を選んだはずだから…
「んで、これからどーする?」
「そーだな、とりあえず戦闘!…してみたくない?でもその前にナギは装備整えて来いよ!」
「ん?」
「まだ最初に貰ったその剣しかないだろ?」
マイルは俺の背中にあるブロードソードを指さして言う。
「あそこに武具屋があるから見て来いよ!3000Gあれば一番安いものなら武器も防具もそろえられるぜ!一番安いのでも最初の武器よりかは性能いいみたいだし」
そう言ってマイルが指さした方向を見ると、確かに剣や斧、杖などが壁に飾られており、その前のカウンターテーブルにいかにもな職人雰囲気の中年男性が立っていた。なるほど、マイルとノノはそれで鎧やドレスを着ているわけか、それに比べて俺の装いは…麻布のシャツに、これまた麻布のパンツ…うーん、防御力というものを全く感じない。
「…わかった、二人はここで待っててくれ」
「ん?一緒に行かなくて大丈夫か?」
「ああ、すぐ戻るよ」
俺はそう言って武具屋へ向かって駆け出した。
「お、兄ちゃん新人か?」
店の前までたどり着くと店主であろう男が声をかけてきた。
「えっ?…ああ、はい」
「ふーむ…下級剣士か。それなら、とりあえずアイアンソードとライトアーマー一式がオススメだぜ」
店主がそう言うと、俺の前にウィンドウが表示される。そこには様々な武器、防具の名前と値段が表示されていた。アイアンソードは500G、ライトアーマー一式っていうのは…2500Gか。なるほど、3000Gあれば丁度手が届く価格ってわけか。
ま、”あれば”だけど…
俺は画面を指でスワイプ操作しながら一通り商品を見ていく。んー、とりあえず必要なのは…
俺は一つの商品をタップして選択する。画面に『購入しますか Yes / No』の文字が表示される。
「は!?兄ちゃんそれを買うのか!?兄ちゃんは剣士だからそれは要らないと思うが…」
「…ほー」
「ん?どした?兄ちゃん」
凄いな…。どんだけ高性能なAIだったらこんだけ流暢に喋れるんだ?まあゲームの世界に入り込めるような技術があったわけだから、そのぐらいあってもおかしくないか。
―――――――――――――
ガンドウ Lv7
《武具屋店主》 NPC
―――――――――――――
俺は店主の顔の横に表示されたウィンドウを見ながら、そんなことを考えていた。
「大丈夫です。これを下さい」
俺はそう言ってYesを選択し購入処理をした。『購入した武具を装備しますか?』とウィンドウに表示されたがここはNoを選択。あー、残金殆どなくなっちゃったよ。
「兄ちゃん、変わってんな…」
怪訝そうな顔をする店主に別れを告げマイル達の元へと向かった。
「あ…ナギ」
「おぅ!おかえり!…って、装備変わってないじゃん!何も買わなかったのか!?」
「あー…とりあえず最初はこのまま行こうかなって。不便を楽しむ?…みたいな?」
「出たよ…ナギの自分で難易度上げたがるマゾプレイ体質」
なんか、聞こえが悪いな。そのうち驚かせてやるから見とけよ…。
「まあいいさ!じゃあ行きますか!…と言っても、ここから先は俺達もどこに行けばいいかわからないんだけどな」
「とりあえず、外に出てみないか?」
「ノノ…賛成」
俺達は奥に見える出口であろう扉に向かって歩き出した。
ピコン
「ん?」
頭に響いた電子音。視界の端にメールのアイコンのようなものが点滅しているのに気付く。それに意識を集中させると目の前にウィンドウが開かれた。
『 差出人:VRPG運営局
VRPG ニューワールドへのログイン、誠にありがとうございます。
今回のプレイ時間は”3日間”です。時間まで心行くまでお楽しみください。
制限時間が0になる前に宿やギルド拠点にお戻り頂くことをオススメ致します。
それでは、よい夢を―――― 』
「へ?…3日間!?そんなに長くプレイするってこと!?ま、明日は日曜だからいいけど、明後日は学校あるぞ!?」
「いやいや、そういう問題か?」
でも確かに現実世界の俺達は眠っている状態な訳だ…健康状態的にも3日間眠りっぱなしってのは良くないよな。途中でログアウト出来たりするんだろうか?…というより三日間も眠り続ける方が難しいか。
「…ログアウトボタンみたいなの…ない」
ノノが何やらウィンドウを出現させ、操作している。
「え?…なんだ、それ?」
「あーそうか、ナギはまだ知らなかったな。心の中で”ツールボックス、オープン”って念じてみ?」
「ん…おお!」
言われた通りにやってみると俺の前にもウィンドウが出現した。
ステータス、装備、スキル、アイテムボックス、マップ、メッセージ、フレンドリスト等…といったアイコンが並んでいる。
「ここから装備を変更したり、アイテムを使ったり出来るらしい」
「へー!てかお前らよく知ってんな…」
「ナギが来る間、あそこの受付のおねーさんに色々教えてもらったからな!」
なるほど、ビギナー向けの案内所があったわけか。それにしても…随分俺が来るまで時間があったんだな…。
「なぁマイル?」
「んー?」
「お前、最初のジョブ選ぶとき、何件の適正出た?」
「ん?…6つだったな。何?うらやましい!?Eランク君」
「やかましい」
なるほどね…。それで俺と二人のログインまでの時間に大幅な差があったわけか…。
考えながら俺はとりあえず、ステータスのアイコンをタップする。
―――――――――――――――――
ナギ Lv1 《下級剣士》
HP 56/56
AP 24/24
MP 8/8
筋力 48
魔力 5
敏捷性 36
物理耐性 25
魔法耐性 12
運 52
――――――――――――――――
これが今の俺のステータスか…。
「ん?」
隣を見るとマイルがニヤニヤしながら俺のステータスと自分のステータスを見比べていた。どのステータスも俺の数値よりマイルの方が高かった。
「……」
とりあえず蹴飛ばした。
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