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「えーっと…」


俺はノノに向かって目を凝らす。


―――――――――――――

  ノノ Lv1  

  【人形術師】ランクA

  ギルド:無所属   

―――――――――――――



「…人形術師ドーラー?ランクA!?」



ふふん、とノノが自慢気に無い胸を張る。



「な!?スゲーだろ!?」



…なんでお前が偉そうなんだ?マイル。

でも、この人形で戦うのか?どうやって?…呪いでもかけるのか?



「AランクとBランクの俺達がいれば大丈夫さ!しっかり守ってやるから、大船に乗ったつもりでいたまえ、ナギ君!」


「はいはい、どーも」


「え!?冷たいっ!」



マイルを軽くあしらい、周囲に目を向ける。さてと、とりあえず二人とは合流できた…先輩達は別のスタート地点を選んだはずだから…



「んで、これからどーする?」


「そーだな、とりあえず戦闘!…してみたくない?でもその前にナギは装備整えて来いよ!」


「ん?」


「まだ最初に貰ったその剣しかないだろ?」



マイルは俺の背中にあるブロードソードを指さして言う。



「あそこに武具屋があるから見て来いよ!3000Gあれば一番安いものなら武器も防具もそろえられるぜ!一番安いのでも最初の武器よりかは性能いいみたいだし」



そう言ってマイルが指さした方向を見ると、確かに剣や斧、杖などが壁に飾られており、その前のカウンターテーブルにいかにもな職人雰囲気の中年男性が立っていた。なるほど、マイルとノノはそれで鎧やドレスを着ているわけか、それに比べて俺の装いは…麻布のシャツに、これまた麻布のパンツ…うーん、防御力というものを全く感じない。



「…わかった、二人はここで待っててくれ」


「ん?一緒に行かなくて大丈夫か?」


「ああ、すぐ戻るよ」



俺はそう言って武具屋へ向かって駆け出した。



「お、兄ちゃん新人か?」



店の前までたどり着くと店主であろう男が声をかけてきた。



「えっ?…ああ、はい」


「ふーむ…下級剣士か。それなら、とりあえずアイアンソードとライトアーマー一式がオススメだぜ」



店主がそう言うと、俺の前にウィンドウが表示される。そこには様々な武器、防具の名前と値段が表示されていた。アイアンソードは500G、ライトアーマー一式っていうのは…2500Gか。なるほど、3000Gあれば丁度手が届く価格ってわけか。


ま、”あれば”だけど…


俺は画面を指でスワイプ操作しながら一通り商品を見ていく。んー、とりあえず必要なのは…


俺は一つの商品をタップして選択する。画面に『購入しますか Yes / No』の文字が表示される。



「は!?兄ちゃんそれを買うのか!?兄ちゃんは剣士だからそれは要らないと思うが…」


「…ほー」


「ん?どした?兄ちゃん」



凄いな…。どんだけ高性能なAIだったらこんだけ流暢に喋れるんだ?まあゲームの世界に入り込めるような技術があったわけだから、そのぐらいあってもおかしくないか。


―――――――――――――

  ガンドウ Lv7  

 《武具屋店主》 NPC

―――――――――――――


俺は店主の顔の横に表示されたウィンドウを見ながら、そんなことを考えていた。



「大丈夫です。これを下さい」



俺はそう言ってYesを選択し購入処理をした。『購入した武具を装備しますか?』とウィンドウに表示されたがここはNoを選択。あー、残金殆どなくなっちゃったよ。



「兄ちゃん、変わってんな…」



怪訝そうな顔をする店主に別れを告げマイル達の元へと向かった。



「あ…ナギ」


「おぅ!おかえり!…って、装備変わってないじゃん!何も買わなかったのか!?」


「あー…とりあえず最初はこのまま行こうかなって。不便を楽しむ?…みたいな?」


「出たよ…ナギの自分で難易度上げたがるマゾプレイ体質」



なんか、聞こえが悪いな。そのうち驚かせてやるから見とけよ…。



「まあいいさ!じゃあ行きますか!…と言っても、ここから先は俺達もどこに行けばいいかわからないんだけどな」


「とりあえず、外に出てみないか?」


「ノノ…賛成」



俺達は奥に見える出口であろう扉に向かって歩き出した。


ピコン


「ん?」



頭に響いた電子音。視界の端にメールのアイコンのようなものが点滅しているのに気付く。それに意識を集中させると目の前にウィンドウが開かれた。



『    差出人:VRPG運営局


  VRPG ニューワールドへのログイン、誠にありがとうございます。

今回のプレイ時間は”3日間”です。時間まで心行くまでお楽しみください。

制限時間が0になる前に宿やギルド拠点にお戻り頂くことをオススメ致します。


 それでは、よい夢を――――                     』




「へ?…3日間!?そんなに長くプレイするってこと!?ま、明日は日曜だからいいけど、明後日は学校あるぞ!?」


「いやいや、そういう問題か?」



でも確かに現実世界の俺達は眠っている状態な訳だ…健康状態的にも3日間眠りっぱなしってのは良くないよな。途中でログアウト出来たりするんだろうか?…というより三日間も眠り続ける方が難しいか。




「…ログアウトボタンみたいなの…ない」



ノノが何やらウィンドウを出現させ、操作している。



「え?…なんだ、それ?」


「あーそうか、ナギはまだ知らなかったな。心の中で”ツールボックス、オープン”って念じてみ?」


「ん…おお!」



言われた通りにやってみると俺の前にもウィンドウが出現した。

ステータス、装備、スキル、アイテムボックス、マップ、メッセージ、フレンドリスト等…といったアイコンが並んでいる。



「ここから装備を変更したり、アイテムを使ったり出来るらしい」


「へー!てかお前らよく知ってんな…」


「ナギが来る間、あそこの受付のおねーさんに色々教えてもらったからな!」



なるほど、ビギナー向けの案内所があったわけか。それにしても…随分俺が来るまで時間があったんだな…。



「なぁマイル?」


「んー?」


「お前、最初のジョブ選ぶとき、何件の適正出た?」


「ん?…6つだったな。何?うらやましい!?Eランク君」


「やかましい」



なるほどね…。それで俺と二人のログインまでの時間に大幅な差があったわけか…。

考えながら俺はとりあえず、ステータスのアイコンをタップする。


―――――――――――――――――

  ナギ Lv1 《下級剣士》

 HP       56/56  

 AP        24/24

 MP        8/8

 筋力       48

 魔力  5 

 敏捷性      36

 物理耐性     25   

 魔法耐性     12

 運        52

――――――――――――――――



これが今の俺のステータスか…。


「ん?」



隣を見るとマイルがニヤニヤしながら俺のステータスと自分のステータスを見比べていた。どのステータスも俺の数値よりマイルの方が高かった。


「……」



とりあえず蹴飛ばした。

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