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声が…聞こえる。沢山の人の話し声、雑踏…喧騒…
「あ…へ?」
我ながら阿保っぽい声を上げたものだ。俺、波白 凪はいつの間にか神々しい雰囲気の建物の中にいた。
広い…天井がすごく高い…沢山の人がいる…だがその人々の出で立ちは現実世界のそれとはまったくの別物だった。中世の騎士の鎧のようなものを着ている者、身の丈程の杖を持ち、ローブを羽織っている者、大きな斧を背中に担いでいる者…様々な人がこの馬鹿でかいフロアを行き交っている。それはRPGゲームの中で見たような異質な光景だった。
「えーっと…」
さて、どうするか…。俺は周りを見渡す。俺は天井から光が差し込み照らされている大きな台座の上に立っている。周りには無数の人…壁際にいくつかカウンターテーブルがあり、その内側に女性が立っている。ショッピングモールのインフォメーションセンターみたいな雰囲気…とりあえずあの人達に話を聞いて…みるか?俺は台座から降りていく。
「おおーい!ナギ!!」
「!」
聞き覚えの塊みたいな声。この声は
「マイル!!」
俺の親友、マイルが駆け寄ってきた…銀色のごつい鎧を着て、背中に大きな剣を担いで…。
「マイル…」
「ああ!冴木さんの言ってたことは本当だったな!!」
マイルは興奮を隠しきれないという様子だ。
「へっへっへ!…俺はBランクジョブ!【
そう言って胸を張るマイル。あーなんかそんなの俺の適正ジョブの中にもあったな…なんか嬉しそうだから言わないけど。
「で、ナギ君のジョブは…《下級剣士》!?最低のEランクジョブじゃねーかよ!?」
「!…なんでわかっ」
「まあまあ、そー落ち込むな少年よ!そーか、ナギはいいジョブが出なかったんだな?人は生まれながらに平等ではない!!…なんという悲劇!でも大丈夫!鍛えればクラスアップとかいうので強くなれるみたいだし、転職システムもあるみたいだからな!才能がなくても努力は実るものだよナギくんっ!!」
う、うぜぇ…。なんか腹立つから今は”伏せておく”か。
「うるさいよマイル」
「…あ、ごめん怒っちゃった?冗談だよ!ただお前ならスゲージョブ手に入れるんじゃないかと思ってたんだけどな…ま、そういうこともあるよな!」
「そんなことより、なんで俺のジョブわかったんだよ?」
「ん?ああそれなら…何?こう、目を凝らす…っていうの?なんかそんな感じで俺を見てみ?」
「?…」
よくわからないが言われた通りにマイルを注視する。…お?
するとマイルの顔の横に小さなメッセージウィンドウのようなものが出てきた。
―――――――――――――――
マイル Lv1
【重装魔剣士】ランクB
ギルド:無所属
―――――――――――――――
「お…すげぇ」
「な!?つーかナギ、お前遅かったな。結構待ったぞ俺達。ジョブ選ぶの迷ったのか?」
「ん?まぁ、色々とな」
「ま、悩んだところで所詮Eランクだがね」
とりあえずマイルを蹴飛ばしといた。
「ん?俺達ってことは…」
「おう!ノノももう来てるぜ!」
「ナギ、遅い」
「うわっと!」
いつの間にか背後にノノが立っていた。その恰好は黒を基調としたドレスで、リボンやレース、フリルで飾られた…所謂、ゴスロリ?…。そしてノノの手には…
「ノノ…何?そのグロテスクな人形?」
「この可愛さが分からないとは…ナギもまだまだ」
つぎはぎだらけで所々毒々しい色で彩色され、死んだ魚のような目をしたウサギ?の人形が抱きかかえられていた。
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