夢の世界

8



暗闇だった。


あたり一面真っ暗闇。その中に一人、ぽつんと俺は立っていた。



「此処は…どこだ?」


『VRPG ニューワールドの世界へようこそ‼ボクの名前はテック!旅立つ君を案内するよ!』


「!?」


突然声が聞こえたかと思うと、ピエロの顔に羽が生えた奇妙な生物が姿を現した。こいつは!…冴木のタブレットで見せられた動画に出てきたやつだ…



『君はこれから冒険者として旅立つことになる!そんな君にボクからの餞別!3000G(ギル)あげちゃうよ!大事に使ってね!』



はは…マジかよ。手が、震えている。



『先ずは君の職業…ジョブを決めてもらうよ!』



やっぱり…嘘じゃなかった!!


『君に適性のあるジョブがいくつか出てくるから、選んでね!最初は弱くてもクラスアップすることですごーく強くなるジョブもあるし、途中で転職することもできなくはないけど、“魔石”っていうアイテムが必要で、その機会はなかなか手に入りにくいし転職するとレベル1に戻っちゃうからよーく考えてね!』


お…話に聞いてたジョブ選択か!確か500近い職種があるんだっけ?そこから自分の適正に合わせたものがいくつかリストアップされるって仕様か…



『…あ、もしも気にいるジョブが出てこなかったら、基本中の基本のジョブだけど、”下級剣士”、”下級魔導士”、”下級神官”に転職できる魔石ならボクがひとつ500Gで売ってあげるよ?クラスアップしていけば着実には強くなれるジョブだから、よかったらどーぞ!…まぁ、今まで買ってくれた人はいないけどね…』



ピエロが悲しそうに呟く。

不意に俺の目の前、何もない空間にパソコンでウィンドウを開くかのように画面が出現した。その画面には『適正職検索中…』と表示されている。



「………」



ピコンという電子音と共に画面が切り替わる。


――――――――――――――――

 検索結果  適正件数:228件

――――――――――――――――

に、228件!?そんなに選べるジョブって多いのか!?






同時刻  某所



「新規プレイヤー6名、接続。ニューワールド、ダイブ完了しました」



暗い部屋に巨大なモニター。その前に座るスーツ姿の女性が声を発する。



「ジョブ適正診断、開始します」


「…なかなか粒ぞろいだな。良いプレイヤーを見つけたな…冴木」


「ありがとうございます」



部屋の中央に立つスーツ姿の男に冴木は頭を下げる。



「一人、Sランクジョブの発現を確認しました!…え!?…更にもう一人Sランクジョブの発現を確認!」


「素晴らしい!最初の適正検査でSランクのジョブを発現させたプレイヤーは久しぶりじゃないか!しかも二人も…」


「!!?…て、適正数228件!?こんな数の適正数見たことありません!!」



女性が驚嘆の声を上げる。



「ほう…誰だ、コイツは?」


「名前は……波白…凪」






『よし!ジョブも決まったし…さあ、いよいよニューワールドの世界に出発だよ!あ…最後に、君の名前を教えてもらっていいかな?』



俺の前に再びウィンドウが現れる。どうやらプレイヤー名を入力するようだ。

俺は『ナギ』と入力する。



『いい名前だね!君の旅が素晴らしいものでありますように!…それじゃあ、出発だよ!いい夢を!グッドラーック!!』



俺の視界は眩い光に包まれた。




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