4

20分後



「「「………」」」



『WINNER 【after school】』



画面に表示される、勝者を示すメッセージ。



「…っだっはー!ぎりぎり勝ったああぁぁぁ!!」

「し…死にかけた…」

「ノノ…燃え尽きた…」



ふぅ…こんなにも、しかも一人相手に苦戦したのなんて初めてだ。俺は忘れていた呼吸を思い出したかのように息を吐いた。チートでステータスを上げているとはいえ、俺達6人を相手に20分以上戦い続けるなんて…



ピコン


「?」



メッセージの着信を知らせる電子音。送り主は先ほどまで戦っていた観測者からだった。



『お手合わせ、ありがとうございました。

皆様の力量を計らせていただくためとはいえ、不正プログラムを使用しての対戦、お詫び申し上げます。


さて、今回対戦を申し込ませていただきましたのは、【after school】の皆様六人にお願いしたいことがあり、実力を試させていただきました。


と言いますのも、私、実はこの〈ビギニングワールド〉の開発陣の者でして、冴木さえきと申します。』



「うえ!?なんだこれ?この人ビギニングワールドの制作会社の人なの!?」


「いたずらか?…とりあえず最後まで読んでみるか」



俺たちはメッセージをスクロールして読み進めていく。



『お願いしたいことというのは、現在開発を進めている新作ゲームのモニターとして実際にプレイしていただきたいのです。勿論、ささやかながら報酬もご用意しております。


詳細は直接お話したいと思っております。


ご都合よろしければ、今週末の土曜日15時に下記住所までご足労頂けないでしょうか?お返事お待ちしております。』



その下に住所が記載されていた。その住所を検索すると…



「隣町のカフェだな…」


「新作のゲームモニターだってよ!面白そうじゃん!今週末の土曜って明後日だよな?行こうぜ!」


「でも、なんか怪しくないか?待ち合わせ場所もこんな都合よく近場を指定してきてるし…」


「んー…俺達動画サイトで住んでる町の情報は公開してるし、この人も俺達のプレイ動画見て頼もうと思ったんじゃねーの?」



ああ、そういえばそうだったな…でも、ゲームモニターの依頼でわざわざ対戦して実力を試す必要とかあるのか?



「まぁ、話だけでも聞いてみてもいいんじゃないか?ただのいたずらで、待ち合わせに相手が来なかったとしても、たまには皆で出かけるのもアリなんじゃないか?」



俺が思考していると九ノ原先輩が進言する。まぁ、それなら…



「さんせー!!私ちょうど買い物もしたかったしー!」


「いいね!なぁナギ行ってみよーぜ!」


「ノノも、興味あるっ…」


「良いと…思う。上手くすれば…動画のネタにも…なるかも」



皆賛成の意を示す。


「…わかりました。行きましょう」


「いえーい!それでこそafter schoolの作戦参謀!」


「マイルはしゃぎすぎ」



ま、この冴木って人には興味あるしな…いたずらだったとしても、乗ってみるのも一興…か。



「じゃ、返信するよ」


というわけで、この冴木という人物に会うこととなった。


これが俺達の今後を大きく左右するものになると、俺達はまだ知らない。







同時刻 某所




「どうです?気に入りました、冴木さん?」


「うん…この子達なら、”あの世界”を大きく動かす存在になるかもしれないね」


「でしょう?僕も早く”先輩達”と”あっちの世界”で会いたいですよ」


「フフ、気が早いね…こちらの申し出を快く引き受けてくれればいいんだけどね」


「大丈夫ですよ。あの人達、極度のゲームジャンキーですし…難易度が高いほど燃える人達なんで」


「フフ…期待しておこう。このまま”奴等”にあの世界を好き勝手されるわけにはいかないからね」


「期待していいと思いますよ…特にあの二人には」


「そうだね、僕も久しぶりに期待で胸が膨らんでいるよ。うん、今後も手筈通りに頼むよ……”由衣”」




由衣 奏はいたずらっぽく微笑んでみせた。

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