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翌日



昨日の興奮が冷めやらぬまま、放課後を迎えた。

俺、波白 凪は部室へと向かう。途中、マイルが後を追いかけてきて合流し、二人で部室へと入っていく。



「おっつー!ナギ!マイル!」


「ういーっす!ミレ姉!」



既に部室には人が集まっていた。赤髪を振りながら、ミレ姉が勢いよく声をかけ、マイルが応える。後来てないのは…



「由衣はまだ来てないんですか?」


「由衣は風邪をひいたらしくてな、今日は欠席だ」



俺の質問に九ノ原先輩が答える。



「え!?大丈夫なんすか!?」


「ああ、大したことはないそうだ」


「そうですか…」



まあ風邪なら仕方ないな、今日は六人で活動か。



「クノヤー!今日は何する!?クエスト周回!?レアアイテム探しに行く!?それとも…」



ミレ姉が待ちきれないというようにまくし立てる。クノヤというのは九ノ原先輩のあだ名謙、ゲームアカウント名だ。



「それなんだけど…皆ログインしてみてくれ」


「?」



各々ゲーム機を取り出し、ログインする。



「ん?なんかメッセージ来てるな」



画面の端に『メッセージ 一件』の文字。差出人は…観測者?…知らないアカウント名だ。俺達はそのメールを開く。




〖after schoolの皆様


近頃の皆様のご活躍は目覚しいものがあり、注目させて頂いておりました。

先日の≪黒竜王討伐≫クエストの動画も拝見させていただきました。

素晴らしい連携と戦略でした。感服の極みにございます。


さて、今回は、皆様に一度お手合わせをお願いしたくメッセージを送らせていただきました。


私一人と、昨日のクエストのメンバー6人の対戦で構いません。

どうか胸をお貸し頂ければと思います。


本日16時半、対戦のお申込みをさせて頂きます。是非お受け下さいますようお願いいたします。 

                        

                            観測者     』




「なんだっ!?コレ!?」


「俺達と6対1でやろうってのか!?馬鹿にしてんのか!?」


「ノノ…おこです」



各々反応を見せる。冷やかしか?…それにしては…



「ナギ、どう思う?」



九ノ原先輩が俺に視線を向ける。



「…良いじゃないですか。受けましょう」


「ちょ、ナギ!?」


「冷やかしなら時間になっても対戦の申し込み自体ないかもしれないですけど、対人戦依頼なんて久しぶりですし」


「でも6対1だぜ?弱いものいじめしてるように見せて、俺らの評判落とす作戦かもよ?」



マイルが食ってかかる。まあ、確かにそれもそうだな…



「それなら一人だけが相手をして残りは動かなければいい。どちらにせよ、このまま何もしないのは、ちょっと癪だな」


「…確かに」



ポン、と九ノ原先輩が手を叩く。



「もう反対意見はないかな?…じゃあ、after schoolに喧嘩を売ったこと後悔させてあげよう!」



九ノ原先輩が冷ややかな笑みを見せる。この人、穏やかそうに見えて、こういう時は好戦的なんだよなー…俺が言うのもなんだけど。



「そろそろ時間だね」



そうこうしているうちに時計は16時半を示そうとしていた。



『ピコン』



という電子音が新規メッセージが届いたことを知らせた。



「あ、ほんとにきた…」



画面がメッセージを表示する。



『【観測者】から挑戦状が届きました。


挑戦を受けますか?―――Yes / No 』



俺達は一斉にYesを選択した。





画面がバトルフィールドへと切り替わり、対戦者双方のステータスが表示される。



「は!?レベル1!?ふざけやがって!!」



表示された観測者のステータス画面をみてマイルが声を荒げる。



「待って…でも、ステータスが…」


「オール999!?」



なんだこの数値は!?このゲームでレベルを最大まで上げても全ステータスがカンストすることはない。ましてや相手はレベル1、これは…



「チートか…」



九ノ原先輩が呟く。チート…プログラムを改竄かいざんし、ゲーム制作者が意図する動きとは違う動作をさせる不正行為。まあ、チーターが相手なら…



「遠慮はいらないな…全力で…」


「「「叩き潰す!!!」」」



全員の声が重なった。戦闘開始の表示が出ると同時に各々が操作するキャラクターが対戦相手、観測者へと向かって距離を詰める。


観測者の装備は至ってオーソドックスな剣士といった感じか…

接近戦に持ち込んで相手を圧倒するタイプだが…



「チートは気に食わーん!!!」



先ずはミレ姉が先制を仕掛ける。ミレ姉のアバターは”モンク”。スピードと格闘術に優れた近接タイプだ。持ち前の俊敏さと手数で観測者を急襲する、が…



「あるぇぇぇ!?コ…イツ、うまっ…」



相手はガードと回避のコマンドを上手く組み合わせ、難を逃れる。ミレ姉が初手で一撃も入れられなかったのなんて久しぶりだな。単にチートでステータスを上げてるだけの”にわか”じゃなさそうだ。テクニックもそれなりにある…でも、まだだ。



「逃がすかあぁぁぁぁあああ!!」



直ぐにミレ姉は再び距離を詰め、追撃を仕掛ける。その間に俺とノノは背後へと回り込む。移動しながらノノが俺のアバターに強化魔法をかけていく。



「くそおおおおぉぉぅ!!あたらーん!!!」



ミレ姉の猛攻を難なく防ぐ観測者。たまらずミレ姉が奇声をあげる。



「っと!やばっ!」



観測者がミレ姉の攻撃をいなし、その一瞬の隙を縫うように剣を振り下ろす。



「なんちって!」



振り下ろされた剣を即座に躱すミレ姉、その後方、ミレ姉の陰に隠れて銃の照準を合わせていたのは…



「いけ…イチル」

「了解」



九ノ原先輩の声と共にイチル、もとい、一条先輩が銃の引き金を引く!

連続で発射される三発の光弾。完全に虚を突いた攻撃、これは…躱せない!



「おいおいマジかよ」



三発の光弾の内二発を剣で防ぐ観測者。今のタイミングで反応してくるのか、だが…



「まあとりあえず…」


「一撃入れられたな」



観測者が防ぎきれなかった三発目の光弾。見事観測者を直撃し、わずかながらもHPゲージを削っていた。



「HPが削れるなら…倒せる」


「おらぁ!休ませねえぞ!」



観測者の側面からマイルが突進攻撃を仕掛ける。たまらず観測者は距離を取る…が、その先には…



「いけ!ナギ!!」



背後に回っていた俺は死角から接近し、剣を振り上げた!!


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