主人公が小学生になったばかりの夏休み。旅先で、最後の朝、目を覚ますと、父親の姿がそこになかった。
幼ごころに父親が失踪したと感じ取った主人公は、それから、母親とふたりで暮してきた。
でも、反抗期かもしれないとはいえ、この主人公の行動が、わたしには理解できない。
自由を求めるということは、なんでも好きにやっていいということではない。
そんな主人公が、母親とぶつかって家を飛び出した。向かった先は、自分の好きな風景の、ブドウ畑のあるワイナリーだった。
観光客にまぎれ、中に忍び込み隠れる。この子どもじみた行為に巻き込んだのが……?
この物語……、タグにあるように、純文学として読むとおもしろい。
父親がいなくなり、母親と暮し、鬱屈が溜まって我が儘に走る主人公は、それまで、とても苦労してきたのだろう。拗らせた主人公は、純文学の主役としては定番だ。
そして、ストーリー自体もおもしろいと思う。主人公の目の前にいる、今の父親は、あまりにも意外性がありすぎた。突飛なキャラクターの設定は、とても秀逸だ。