第5話 捕食

 赤い絨毯と豪華絢爛なシャンデリア。ここは部屋を最初に出た廊下と同じ場所に見えるが全く異なる場所。


「さて戻ると言ったが住人であり従者の俺でも不可能なんだよね」


 頭を掻く俺。本当は頭に痒みなんて感じないが癖でやっちまう。


「……メディアの元へ戻るか。ちゃんと謝らないとな」


 踵を返した瞬間、それは突然、訪れた。

 俺の視界はぐらりと傾く。バランスを保つ前に側頭部が床に落ちる。

 痛覚はなかった。


「あ、れ……」


 首を下に向けるとそこに先程まであったはずの片足がなかった。


「グルルル……!」


 獰猛な侵入者が唸り声を上げる。


「お前は……キメラか……」


 ライオンの頭に闘牛のような角が生え、背中にはコウモリの羽が生え、尻尾は蛇。

 口には俺の片足が咥えられていた。


「か、かえせ……美味しくないし食うと腹こわすぞ」


 キメラは俺をあざ笑うかのように鼻を鳴らし足を噛まずに飲み込んだ。

 そして圧倒的強者の睨み。矮小の俺はあっさりと体がすくみ、動けなくなる。

 そしてゆっくりと舌なめずりしながら俺に近づく。


「や、やめろ……やめてくれ……」


 俺はみっともなく嘆願する。見逃してくれと命乞いをする。まあ俺の死はとっくに確定しているのだが。

 キメラは俺の体を一飲みでぺろりと捕食した。

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