恋ゆえに貪る④
《リバーストーキョー・ナイトメア》にしかない要素を上げろと言われれば、おそらく多くのプレイヤーがレアスタイルのことを上げるだろう。
コモン以外のスタイルを取得したい場合、プレイヤーはとりたいスタイルの開放条件を満たす必要がある。これがアンコモンなら開放チャートが提示されるのだが、レアスタイルは自力で開放条件を見つける必要があった。
それだけなら、他のゲームにもある要素だろう。
RTNにしかない点。
それは、スタイルの取得には再現性に乏しい特殊な条件が必ず一つはあることだ。
例えば、アーサーが取得している【
これはまず、銃の習熟度に、魔弾攻撃の練度が開放条件の一つとして考えられている。
だが、それだけじゃ開放条件は満たされない。
親密度が高いフレンドとチームを組んだ総合時間が、一定数を超えること。
これが、
取得を目指したプレイヤーのうち、リアルでも友人というプレイヤーとチームを組み続けていた【
つまりレアスタイルは、最初にそのスタイルを開放したプレイヤーのプレイングを分析し、「多分これが開放条件になっているんじゃないか?」と考察するしかないのである。
同じレアスタイルを持っているプレイヤーは数えるほどしかおらず、ゲーム内を探しても一人のプレイヤーしか取得していないなんてことはざらにあった。
俺が今取得しているスタイルもまた、そんなレアスタイルの一つだった。
【
最初にこれを開放したのは、魔獣エネミーの造形に惚れこむあまり、魔獣の研究と検証を行うギルドを設立したプレイヤーだった。
魔獣エネミーの総討伐数もさることながら、こと魔獣エネミーに対する執着に関して、右に出る者はいない。そんなプレイヤーが最初に開放したため、攻略サイトでは総討伐数に加え、魔獣エネミーに対する執着度が関係しているのではないかという考察が上がった。
そしてこの執着度は、撃破総数とイコールじゃない。
嘘か本当か、一万体倒しても開放されなかったという話もある。それの真偽はさておくとして、開放条件に特殊なパラメーターが動いているのは想像に難くなかった。
朔のルー・ガルーに挑むにあたり、俺はどうしてもこのスタイルを取得したかった。
一つは、
魔獣カテゴリーのエネミーと戦う際、LUCを除いた全ステータスに超高補正がかかるこのスキルは、ルー・ガルーと本気でやり合う上では必須クラスだった。あっちがステータスの暴力で殴ってくるなら、こっちも相応のステータスで挑まなきゃ話にならない。
そしてもう一つ。同じく
この特殊状態が付与されている間は、
そんな破格のスキルだが、もちろんそれに見合ったデメリットもある。
【
四分弱。
ゲーム内効果としては長い方だが、戦闘中だといつの間にか過ぎているような時間だ。タイム管理を怠ると、気づいた時には0になっている。というか0になった。
RTNでは、SANが0になると【夜魔堕ち】という面倒な特殊状態が発生する。
いったん【夜魔堕ち】になると、キャラがNPC化する。そしてHP0になる(死ぬ)まで、
これのことを考えると、【
それでも、先達のプレイヤーが存在を公開してからというもの、このレアスタイル取得を模索するプレイヤーは後を絶たない。それほどまでに【
魔獣エネミーの執着度に関しては、十分満たしている確信があった。
それなら、後は総撃破数を満たすのみ。
どれだけの魔獣を倒したかは覚えていない。二週間が経過し、倒した
解せなかったのは、スキル名が【
単純な憎悪では計れない、なんとも屈折した感情がこのスタイルの根幹にある。
しかし、俺のスタイルに書かれていた
『汝、理性ある獣。その爪牙は、恋した獣のために振るわれる』
代わりに表示された
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