第4話 村の復興【木こりのお仕事】

俺はいつの間にか 村人たちに囲まれていた。

膨らんだホホを上につり上げて笑う村人や、細い腕を上にあげてガッツポーズする若者たちがいた

俺は まるで新車の展示会場に飾られている高級車のように、みんなの尊敬のまなざしを受けていた。

言葉はわからないけど 「すごいですね」「強いですね」と言われているのだろう。

すごいのは、世界樹の周辺だけなんだけど。


でも 世界樹の木の周辺にいると力が強くなるようで、

さっきは壁を塞ぐための岩を持ち上げることもできたし、

木が成長していくと同時に 力や体力もどんどん増えていった。

そして 小人の襲撃で今村に生えている世界樹は30mくらいの高さまで成長して

無数の実をつけていた。

村の人たちも臨時の食糧が手に入って喜んでいるようだが、

ただ この実を、食べて特殊効果を得られるのは俺だけで、

食べると全回復できるし、そして小人に認識されなくなる効果があるようだ。



そう言えばセレネのほうへ 目をやると。

セレネと助け出された女性の顔の特徴はそっくりだった。

セレネを5歳くらい若返らせた感じだろうか。

おそらく妹だろう。


村人の女性たちがセレネを助けるべく集まってきた。

二人は運ばれていくようだ。

でも その前に セレネは自分の道具袋から薬の入った包みのようなものを手渡していた。


そうか 薬を手に入れるために村から出ていたのか。

薬を手に入れるために危険を冒して仲間と村を出たけど、どこかで仲間は小人にやられてしまい。

自分だけは何とか逃げられたけど 結局 村の近くで小人に襲われてしまったのだろう。

薬を村に届けて、妹や村の人たちを助けたかったんだと思う。

小人は正直言って 残忍だし怖い。

しかも 身体能力もあれば、戦闘に関しては知力も少し持っている。

だから 知力を生かしてうまく逆転劇を起こされる場合も十分にあるだろう。


だから 仮に俺をお金を払ってボディーガードにしたところで、

そのボディーガードが土壇場で裏切って逃げてしまうかもしれなかった。

薬を手に入れるために一緒に行動した仲間のように、目的が一緒なら信頼できるけど

お金ぐらいじゃ、信頼には足りなかったんだ。

だから 俺に自己犠牲を払ったわけか。


確かに セレネのために死んでもいいと思えたわ。

地球じゃ お金のために過労で死んじゃった

俺みたいな人もいるけど、この世界でお金は人を殺せないな。



俺は 井戸を借りて顔を洗い。

その日は ささやかな御もてなしを受けた。

それは 静かなものだった。

そして 俺は復興の手助けをすることになった。


村を出てしまうと世界樹の力を受けられなくなるので、俺は街で木材を運ぶ仕事をしている。

それでも 村の人からは「おー すごい力ですね」

「一人でこの木材を持ち上げてしまうとは さすがですね」とか

めちゃめちゃ 褒められる。

世界樹のそばなら 数人で運ぶ木材も俺一人で運べてしまうからね。


村人たちには 休憩中に水と世界樹の実を食べながら体にムチをうって頑張っていた。

でも 俺の場合は 世界樹の実を一つ食べれば全回復するので全く疲れなかった。

ときどき 付かれてそうな村人を手伝ってあげると村人からは尊敬の眼差しを注がれて

フレンドリーな関係になれた。

だから 言葉なんて、最低限の物だけ通じればここの現場での仕事は十分にこなせた。


そして 夜だ。

夜の食事は俺だけ少しずつ豪華になっていった。

俺の仕事ぶりの噂を 聞いたのだろうか?

エルフみたいに美人の異世界人がお酌をしてくれて、至れり尽くせりな日々になっていった。

異世界の人は 美人ばっかりだって地球の書物に書いてあったけど本当だった。



セレネだけど、 

村の中央に避難所・病院?&村長の家みたいなところがあってそこで妹と一緒に療養している。

療養中に何度かお見舞いに行ったけど ぐっすり眠っていて起きなかった。

よほど疲れたのか?

薬に眠くなる成分が入っているのかわからないけど。

でも 普通の人が簡単に隣町まで行けてしまうような世界じゃないから

きっと大冒険だったのだろう。

細い体で、よく頑張ったと思うよ。


小人に襲撃された日からしばらく経った。

外に木を倒し行かない日々を送っていたが、とうとうそれができなくなった。

その日は みんなで斧を担いでみんなで森に木を伐りに行った。

バスケットを持った親方の娘と羊飼いのヨーゼンさんが護衛に付いてきてくれる。

ヨーゼンの武器は 大剣というか大きなブレードだった。

小人は木のように固いから 軽い武器では致命傷にならないので

斧のような威力が必要なのだろう。


木こりの現場に付くと 倒しかけの木もあるけどその木は、

まだまだ 倒すのに時間がかかりそうだ。


みんなは自分の力量に合う木の前に 一人一人立っていく。

体の大きさと木の太さは比例しているようだった。

でも それを見た親方は不満そうな顔をしていた。

そして ワンサイズずつ大きな木を切るように指示されていた。


俺は初めての木こりの仕事だったので、

電柱くらいの太さの木を倒そうと思って木の前に立ったけど

やっぱり親方に呼び出された。

ワンサイズ大きな木を切らされるのだろ、

しかし 連れていかれた場所は巨木が生えていた。


まさか これを倒せというのだろうか?


チェーンソーならともかく、斧で木こりしたら2か月くらいかかりそうな巨木だった。

親方は熱心に何かを言っているようだけど、言葉はわからない。

まあ 「どうしても大黒柱が欲しい」みたいなことを言っているのだろうか?


俺は木の根元に 世界樹の種を植えた。

「コン! コン!コン! バキバキバキ。 ドッスン!!!!」

半日かかったけど、斧で木を伐採できた。


「おっおぉぉぉ・・!」

木の倒れる大きな音の後に静寂が訪れた。

みんなは 目を丸くして俺のほうを見ていた。

そして 親方が近寄って来て俺の肩に両手を置いて何やら話を始めた。

最後に自分の腕に付けている親方の腕章を俺の腕にはめてきた。

親方は ただ、ただ、うなずいている。


親方の娘は涙を浮かべながら鼻をすすり、

そして漫勉の笑みで「パチパチ」と拍手をしてくれた。

きっと 「おめでとう お父さんの後をよろしくね」とか言っていたのだと思う。


これって・・ もしかして 俺が親方になる試験だったのか?

聞いてないけど、とんでもない話になっていた。

というか 多分言ってたんだろうけど・・。


俺は 腕章を外すと親方に腕章を返した。

そして 親方の娘のほうを指さして泣いている娘を見せてから 

親方の肩に手をやって 首を左右に振って見せた。

そうすると 親方は泣き出して腕章を受け取ってくれた。

多分 俺の働きっぷりに親方は自信を無くしていたのだろう。


でも「娘を悲しませちゃいけないな」みたいなことも言っていると思う。

これからも 親方として自信をもって頑張ってくれ。



村の復興は大体終わったと思う。

俺は 最近は村からときどき離れて 情報収取をしていた。

村の人たちは 俺のことを心配して止めようとしてくるけど、

小人の生態を把握しておかないとこの先、小人に対応できなくなる。

だから村から出て小人を調べた。

わかったことは小人はグループで行動しているということ。

今のところは種類は一種類しか出会っていない。

それから 驚いたことに 小人は動物を襲わなかった。

つまり 人を襲うモンスターのようだ。


他に生態といえば 今わかっているのは、村に向かうときにも出会ったけど、

小人は人がいないときは、フラフラと漂うように歩き回っているということだろうか。

村には 見張り台もあって小人の接近を警戒してうまく対応しているようだった。



ある日、セレネが目を覚ました。

目は覚ましているのかもしれないけど、俺が訪ねて行ったときはいつも眠っていた。

だけど、今日はお見舞いに行ったときにちょうど、

セレネが目覚めていたタイミングだったのでラッキーだった。

早速 話をした。


「セレネ 俺 少しはセレネにお礼を返せたかな?」


言葉は通じないけど 聞いてみた。


「Я в порядке!!」


セレネは 元気そうに両手にこぶしを作って 元気!元気!ってポーズをして見せてくれた。

起き上がったりするのは無理みたいだけど 何とか元気なようだ。

そして セレネが村に持ち帰った薬のおかげで

妹以外にも負傷した村人とか色々な人が助かっているようだった。

仲間のことは残念だったけど、セレネが村に帰ったことの意味は大きかったと思う。


その後も 何度か村を出て小人を調べた。

復興もだいぶ進んできて 力仕事もいらなくなってきたし、自由な時間が増えている。

建物の内装の仕事はあるけど、そういう細かい仕事は俺には向いていないようだった。


でも だんだんと 村人からは村の外に出ることを止められるようになってきている。

何かを心配しているような感じがはっきりわかる。

「不満があったら言ってくれ!」って感じだ。

もしかして 俺が どこかへ行くとでも思っているのだろうか?

セレネの様態もよくならないし、しばらくは村に留まるつもりなんだけど。



ただ 村から出るのを止められていると言っても

数人の小人のグループが村に フラフラとたどり着くことがあって、

俺が簡単に小人を片付けるので、その功績というか村での立場が上がっていって

俺に物を言える人は少なくなっていった。



村の人たちにとって 小人は脅威なようだ。

火が弱点だから火の矢は効果的だけど、一撃必殺ってわけじゃない。

大きなブレードを使って小人を倒すこともできるようだけど、

でも そんな大刀を振り回すことが出来るのは村の若い男だけだった。

だから 直接小人を倒せる人は優遇される。

俺の場合は ずっと客人として扱われ、ビルさんという女性が身の回りの事を手伝ってくれる待遇だった。



ちなみに羊飼いは地球ではヒョロヒョロなイメージだけど 

こっちの世界では 大剣を扱うブレード使いだ。

大きなブレードをグルングルンと 振り回してハンマーを打ち付けるように小人の首を羽飛ばしていた。

そして小人は 物理的に倒されると灰になってしまう。

食べないけど食べることはできないようだった。

小人はモンスターなのだろう。


それから・・周辺の探索も一段落したので そろそろ隣町まで足を運んでみようと思う。

そうすれば もっと色々なことがわかるだろう。

それにセレネの具合がよくないが本物の医者に見せたほうがいいと思う。

大きな街があればいいのだけど。

でも ある日の事。


「ぎぃぃぃー ガチャ・・」

ドアの開く音がする。

誰かが入ってきた。

ビルさんが水を持ってきてくれたのだろうか? こんな時間に??

俺が眠っていると 村の娘が俺の布団の中に入ってきた。

村の人たちは 俺が村から出ていくことを本気で心配し始めたのだろうか。

布団に入ってきた娘は・・

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