第15話

「まず、誰かがロッカー間違ったとは思わへんの?」

「…その発想が!!」

「ああー」


寧々子があまりに動揺してたから、俺もその可能性を失念してた…。


「ぬぬぬ、でも鍵が開いてた。間違いなく掛けたのに」

「うーん…誰かが意図的に鍵開けたのは、間違いないちゅうこっちゃな?」

「それだと、やっぱり嫌がらせか?」

「断定するには弱いんちゃうん?」


考えてみれば、嫌がらせに巨乳ブラってのも相当おかしな話だよな。

寧々子には効果抜群だったけど。


「ん?そのブラジャー…使用済みやな?」

「使用済みブラって言い方、なんかいやらしいな…」

「兄さんだまって。たぶんそう」


義理の妹が俺に辛辣です。

それは置いて、たしかに新品ではないかな?


「仮にやで?もしこれがロッカーの入れ間違いだとしたら…持ち主は今、ブラしとらんのちゃう?」

「…!?つまり、今うちのクラスにノーブラ女子がい痛いいいい!!爪が!!」

「兄さん、余計な事は考えないで」

「…なんや、圭人君は尻に敷かれとるんなぁ」


毎回思うが寧々子の握力はどうなってんだ?今度体育測定があれば結果を聞きたい。


「しかしなぁ、このサイズでウチらのクラスにいる女子言うと――」

「Dカップだと琴理か千百合さんだ」

「なんで即答できんねん!キモいわ!」

「ぬぬ…やはり巨乳は滅ぼすべき」


普段眠たげな寧々子の目がカッと見開き、瞳孔が全開になってる。でも、これはこれで可愛い。


「ん? でも寧々子は、同じ巨乳の愛狸さんは敵視してないよな?この人はEカップだろ?」

「いやだから何でウチのサイズ知ってんねん!」

「…愛狸さんは、お手本にしてる」

「ああ、背丈近いからなー」


愛狸さんも身長低いんだよな、でもデカい。

…まあ、目の前に目標があると努力しやすいのかもしれない。


「よう分からんけど、大きくなりたいなら好き嫌いはあかんで」

「むむむ…魚以外も」

「そりゃそうだろ」


ああいうのは遺伝が大きいと思うんだが…なんで遺伝してないんだろうな?

他は見事に遺伝してるのに。


「よし!そうと決まったら教室に戻って、ブラジャーしてない女子を探そうぜ!」

「いや、圭人君は探さんでええからな!?」

「兄さんは帰ったら、バリバリの刑」



怪しい人物――というか、琴理と千百合さんをまずは探ってみようと言う事になったのだが…。

まず、琴理の場合。



「とりさん、何で上にジャージ着てる?」

「こ、これは…んんっ!ちょっと透け…じゃなく、寒かったっっっん!からぁ…」

「…自分、なんで動くたびに悶えてるん?」

「こ、これは。動くと擦れっん!じゃなく…は、春先は肌が、び、敏感なのっっよっっ!!」



そんでもって、千百合さん。


「んんんっ!!寧々子ちゃん今日もかわいいわねっ!!

ところで…ろ、ロッカーに…何か、はぁはぁ…入ってなかった??」

「…知らない、来ないで」

「…なあ、なんで自分ブラ付けて無いん?」

「ああ、愛貍さん分かるのね?私ワイヤーでかぶれた事あって、たまに外してるのよ。

中にパッド付のインナー着てるから分からないと思ってたのに、分かっちゃうものかしら?」

「いや、中々分からんと思うけど…うちと話すときは普通やねんな」



とまあ、俺抜きで情報収集した結果がこれだった。


「おい!!どっちもバチクソ怪しいな!?」

「どないすんねん!!ホンマどないすんねん!!」

「ん、2かい言った」


愛貍さんの影響か、寧々子のツッコミレベルが上がりつつあるな。


「んで、どうすんだよ。いっその事二人とも連れてきて、そのブラ付けさせて確認するか?」

「ん、ブラがぴったりな方が、お姫さま?」

「かぼちゃ(サイズ)のブラやな、シンデレラなだけに、ってやかましいわ!」


うん、見事なセルフボケツッコミだ。


「ぬぬ、今のはくるしい、かも?」

「たまにボケツッコミせんと落ち着かんねん、大目に見てや」

「ふむ、愛貍さん、この辺の人じゃない?」

「せやで、うち地元はちょっと遠い所やねん」


寧々子が珍しく会話をキャッチボールし続けてる、まあ愛貍さん話しやすいからな。

俺も、愛貍さんが家から出て一人で暮らしてるってのは、聞いた事有るが。


「それで、これからどうする?もう放課後になったが…」

「せやから言うたやろ、張り込みやで」

「ふ、兄さん。犯人は現場に、戻ってくる」

「なるほどなぁ」


しかし、何故か知らんけど二人とも楽しそうだな?

さっきからニヤニヤしっぱなしの愛貍さんと、キメ顔で牛乳とアンパンをそれぞれ手に持つ寧々子。いつの時代の刑事ドラマだよ、それ。


「むむむ…」

「ん、どうしたんだ?寧々子」

「両手がふさがって、パンの袋あけれない」

「何してんだお前は…ほら貸してみろ」


このアンパンの袋、寧々子の手汗が付いてて滑るんだが。


「圭人くん、あんま袋の音、うるさくせんでな?」


そう言う愛貍さんは、てきぱきとストローを伸ばすと牛乳に挿し、寧々子に渡してる。

甘やかししぎじゃないか?俺が言うのも何だが。


やっと開いたアンパンを袋ごと寧々子に手渡すと、彼女は満足そうに頷き一口ほおばった。

美味そうに食うな、んでもって牛乳飲んでるとストローから何かジュルジュル空気の音がする。愛貍さんちゃんとストロー伸ばしてないな?


そんなやり取りをしていると、女子のロッカールーム前に人影が。


「おい、誰か来たぞ?」

「ジュルジュルジュル…」

「やかましいわっ、バレてしまうわっ」

「愛貍さんがちゃんとストロー伸ばさないから」

「そうだそうだー」

「いや飲むの止めたらええやん、納得いかんわ…」


幸い、そんなアホ騒がしいやり取りに気が付く事もなく、その人物はロッカールームに入っていった。


今の人影は…!?




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黒猫少女が義理の妹になりました taketen @takenotenpura

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