第12話
「んー!!んー!!もー!!」
「痛っ、痛いって寧々子…」
起きてきた寧々子は、あれからずっと俺の体に頭突きしてる。
「ぐぬぬ、お母さんのおっぱい、ずっと見てた」
「なななななそんな訳んなななないだろぉおおおお???」
その通り過ぎて言い訳が思い付かない…。
「いや、ちがうんだってそういうスケベな意味じゃなくてほら、こう何かサイズが変わってたって言うかその辺が気になっただけでな?」
「…お母さん、普段は少し控えめ」
「え?サイズを??」
「…男の子を刺激しない」
「配慮してるのか…」
いやまあ、たしかにアレはな…。
そりゃ必死に見ない様にしてたさ、でも無理。
なぜかって?前も言ったけどな、俺は巨乳派なんだよ。
Fは確実にあったなぁ…。
ちなみに俺が土下座してる間に、美夜さんは親父を連れてさっさと病院に行ってしまった。逃げ足が早すぎる。
「なあ寧々子、確認したいんだけど…美夜さん、何歳なんだ?」
「いえない、こわい…」
寧々子が怯えている。
この件は非常にデリケートな話題らしいな…。
「…親父と同年代だよな?」
「…。」
「そうか、ありがとう」
無言は肯定だろう。
好奇心は猫を殺すって言うからな、これ以上はいけない。
「む~、それより兄さん、お母さんに甘えすぎ」
「あ、あれは…仕方ないだろ…」
抗えなかったんだよ。
「なんか、母親に息子が甘えるのは当然みたいな事言われて…」
「ぬぬぬ…む、一理ある」
「あるのか」
理解が早いな、どうした?
ん、何か企んでる様な嗤い方だな…口の端がニヤリと上がって、八重歯が見えてる…。
「わたしたちは、もう家族。子供は親に甘えるもの」
「おう、そうだな」
「そして、妹は兄に、必ず甘えなくてはいけない」
「お、おう…?いや、そうかも?」
言葉の強制力が、後者の方が強いのは何故だ。
「さあ兄さん、わたしを甘えさせるといい」
「お、おう…ど、どうやって」
「はぁ~~~」
なんだその、わざとらしいため息は。
「仕方がない、ふがいない兄さんに、わたしが教える」
「そ、そうか、助かる」
実際、俺には兄の振る舞いとか分からない。
なら、妹に教えてもらえば、少なくとも文句は言われないだろう。
そうやって、兄妹というものについて寧々子からレクチャーを受けた後、午後からバイトに向かった。
◇
バイトから帰ると、親父は病院から帰り、リビングで寛いでいた。
「んじゃ、親父達は明日から又、旅行にいくのか?」
「ああ、腰痛に効く、有名な温泉があるらしいんだ」
「湯治目的か…」
もう無茶するなよな。
「それで…圭人たちは、何をやってるんだ?」
「ああ、寧々子を甘やかしてる」
「はむはむ、まぐろ」
夕方帰宅してから、風呂に入る間もなくリビングで寧々子に腕を甘噛みされてる。
今日はしっかりと洗ってるし、大丈夫だろう。
少しクセのある髪の毛をわしゃわしゃしてると、たまに気持ちよさそうに喉を鳴らすのが可愛いなぁ。
「何で寧々子ちゃんは、お前の膝の上に座ってるんだ?」
「何故って…妹なんだから当たり前だろ?」
「うん、そう」
全く、これだから親父は。何も知らないんだな。
まあ、今まで男二人の家庭だったしな、無理もないか。
「ん、んん?いやそうなのか…?」
「一般的な兄と妹は、こうなんだよ」
どうも、今まで寧々子の俺に対する距離感が近すぎると思っていたが、違うらしい。
一般的な兄妹は、むしろこの位の距離が当たり前だと言う。
俺も最初は疑ったが、寧々子がスマホで見せてくれた漫画だと、今まで彼女がやった行動が大体実行されてた。むしろまだ甘いほうだ。
すみっこに”R15”っていうマークが有った気がするが、最近は表現に対する規制がきびしいので、何でもないような漫画にも付いてるらしい。
社会情勢じゃしょうがないな。
「いや、でもなあ…ん、どうした寧々子ちゃんスマホの画面を見せて。
それを読めばいいのかい?なになに”余計な事を言――”」
「ん゛ん゛!!んんん!!!」
「どうした寧々子、咳払いなんかして…具合悪いのか?」
「だいじょうぶ、でも少し寒い、もっとくっついて?」
「そうかそうか、これでいいか?」
「んふふ♪」
撫でていた手を止めて、後ろから両腕で包む様に抱きしめる。
普通の女子なら、これはもうラッキースケベどころじゃない案件だ。
間違えておっぱい揉んでしまい、えっち・通報・逮捕のトリプルコンボだ。
だが寧々子の零乳なら、胸に触る心配は全くない。つまり完璧健全なただの兄妹だ。
ん?膝の上に乗ってる、寧々子のお尻?うるせえ黙れよ。
「なあ圭人、お前寧々子ちゃんの胸、触ってないか…」
「何いってんだ親父、寧々子にそんなもの付いて無いででで痛ああああああ!!爪!!ツメぇ!!!」
「兄さん、あとでわたしの部屋」
「…まあ、お前たちが仲良くしてるのは分かったよ」
そうだよ、普通の兄妹だよ。
「ご飯できたわよ~」
美夜ママの楽し気な声と共に、食卓に夕食が運ばれて来た。
「お、ママの夕食は美味そうだな」
「圭人、お前、母さんをママって呼ぶようになったのか…そうか…」
「むー、さかなが無い」
「駄目よ、寧々ちゃんお魚以外も食べないと。大きくならないわよ?」
「食べる、どんどん持って来て」
賑やかな会話のあと、全員でいただきますの合唱。
やっぱり人数が多い食卓は、明るくていいな。
そして、美夜ママの料理はどれも、めちゃくちゃ美味い!
「ふふ、寧々ちゃんはお魚料理しか覚えてないけど、それを教えたのはお母さんなのよ?」
え?つまり全部あのレベル…?
完全に上位互換じゃないか…これが母親の風格か。
「むう、いつかたおす」
「ふふ、母の壁は高いわよ?」
どっちかというと、壁は寧々子の方ですけどね。
しかし、明日から学校か。休みがあっと言う間だった。
まあ、寧々子と一緒に通うのも楽しみなんだよな。
「寧々子、学校の準備は出来てるか?」
「ふふ、ばっちり。兄さんこそ大丈夫?」
「ばっちりだ」
嬉しそうだな、新しい学校は不安かもと思ったけど。
「兄さんと学校通うの、たのしみ、ふふ」
「うん、俺もだ」
楽しい学校生活になりそうだな。
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