第11話

「ごめんなさいね、ちょっと圭人君とお話しするの楽しくて…こういう話は、まだ早いわよね?」

「早いとかの問題でなく、動画はやめて下さいね?」


NTRビデオレターを、別れた男に送ろうとするなよ…。


「私もね、圭人君と早く打ち解けて”おかあさん”って呼んでもらえるように、努力してたのだけど…ごめんなさいね」


なるほど…多分、再婚した母親によくある『あんたを母さんとは認めないからな!』的な事を考えてるんだろうなぁ。


「あのですね、俺が美夜さんを…その…お母さん的な呼び方をしないのは、そういう理由じゃないんですよ」

「…そうなの?よければ教えてもらえないかしら?」

「いやぁ…何て言えばいいか…。

ちょっと、その…言い難いんですけどね?」

「うん、大丈夫よ。どんな理由でも受け止めるから」


…まあいいか、ここまで言っちゃったんだし。


「それじゃ、ぶっちゃけますけどね。

美夜さんが、その…若くて美人で、魅力的過ぎるので…母親扱いするのが、恥ずかしいっていうか、そういう感じでして…」


ぶっちゃけ、どストライクですよ。

何で俺は二十年早く生まれなかったのかと思ったし。

温泉テレビ電話がとどめかな、あのおっぱいはずるい。


「…え?あら、やだ…そうなの?

もう…圭人君ったら。こんなオバサンにお世辞いっても、何も出ないわよ?」


母乳とかなら、もうすぐ出てきそうな感じじゃないですか?

もう子供の、名前は考えてますか?


「いや、親父の手前遠慮してましたけど、最初会った時から、綺麗なお姉さんだなって思ってましたよ?」

「やだもう圭人君たら、上手なんだから…でもダメよ?私にはもう夫が居るんだから、ね?」

「よく知ってますよ」


話ながら、テーブル越しに俺の鼻先をちょんと突いてくる美夜さん。なんだこの流れる様なテクニックは。


はぁ~…。

こんな義母が居てたまるかっ。

オタクに優しいギャル並みに存在しないからな?


あと、今前屈みになったときのおっぱいすげー、でけー、なにあれー、うわー。

最初会った時はDだとおもったけど、やっぱり今はFか?あの時は全然本気じゃなかったって?ああもう抑えろ俺!!

大丈夫だ俺は我慢できる!なぜなら俺はお兄ちゃん!そして巨乳派だ!!無理っぽいな!!


「圭人君、そんなにまじまじと見られると…流石に母さんも恥ずかしいわぁ」

「…すいません」

「ふふ、おっぱいが好きなのね?」

「え、あっはい。特に大きいのが」

「正直な所はお父さんにそっくりね」


そう言いながら立ち上がると、俺の隣に移動して座る美夜さん。

距離が近い…少し膝が触れ合う絶妙さ加減。いや、だから、テクニックが。

と思って居たら、美夜さんが少し真面目な表情で俺に向き直った。


「あなたは、寧々ちゃんを本当の妹の様に大事にしようとしてるでしょ。お母さん嬉しかったわ。

でもね、寧々ちゃんと同じで、私にとっても圭人君は大事な息子なの。

だからね、今まで母親に甘えられなかった分。圭人君にはもっと、お母さんに甘えて貰いたいのよ」

「美夜さん…」

「まあ、そうは言っても圭人君は高校生。素直に母親に甘えられない年頃よね…」

「そうですね…」


そりゃ恥ずかしいからな、気持ちは嬉しいけど。


「だから、実力で甘えさせるわね。えいっ」

「は?」


突然腕を引っ張られた俺は、美夜さんの方に倒れ込んだ。

着地点は、美夜さんのFカップだ。


「おおお!?おおおお!?!?おおっおおお??!!」


顔が!!おっぱいに!!包みこまれる!!沈む!!


「動かないで、身体の力を抜いて楽にね?」

「おおお!!!おお…お…?」


…何だろうか、この気持ちは。

確かに今、俺の顔面はおっぱいに包まれているし、挟まれている。

だが、全くエロい気分にならない…むしろこれは、安心感…?

ああ、温かいな…撫でられてると気持ちいい…。


「圭人君は今日まで、よく頑張ったわね。お父さんを一人で支えてきた、偉いわ。

でも、これからは私と寧々ちゃんも一緒よ。

そして私はあなたのお母さんになったの。

親に頼って甘えても、何も恥ずかしい事はないのよ?」

「…はい」


この、圧倒的な安らぎ。これは母性?

ああ、撫でられるたびに日常のストレスが溶けていく感じ…。


あれ?まって?

今、気が付いたんだけど、俺ってもしかして美夜さんから生まれたんじゃないか?

むしろ、たった今、俺を産んだのかもしれないな?


「美夜さんは、俺のママだったんですね?」

「そうよ?」


やはりか。


「俺を産んでくれてありがとう…ママ」

「えっと、嬉しいんだけど実際には産んで無いわよ?

ちょっと効き過ぎたわねぇ、大丈夫かしらぁ…?」


全く、何を言ってるんだろう…美夜さんは、ずっと俺のママなのに。

なのに…何だろう、俺は大切な事を忘れてしまっている様な…。



――ガリガリガリガリ――


ビクッ!!!

何かを引っ掻く様な音がする…そして何だこの重圧は…!?


――ガリッガリガリッガリ――


…寧々子だった。

義妹が、恐ろしい表情でこちらを覗き見ている。

ドアの隙間から、深淵の如き黒い瞳を覗かせて。

そのドアに、爪を立てて引っ掻いてる…!


「うおお?!ひ、ひいぃぃ!!」

「あ、あら~!ね、寧々ちゃん起きたのねっ!!」


瞳孔の開き具合がヤバイ!いつもは半目なのにめっちゃ眼が丸いし!!


「…説明して?」


低っ!!声低っ!!


「こここ、れはだな!!いや、そういう何もやましい事じゃなくて!!」

「そそそ、そうよ?あくまでも母と息子のコミュニケーションなのよ?」


俺と美夜さんは顔を見合わせると、お互いに頷き合う。

うん、よし。


とりあえず、土下座だな。

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