第8話
~前回までのあらすじ~
バイトを終えて帰宅する新米兄の圭人。
疲れからか、不幸にも黒猫系義妹の母親に欲情してしまう。土下座して全ての責任を負った圭人に対し、美夜の娘、寧々子が言い渡した示談の条件とは…。
いや、すまない。目の前の出来事に現実逃避してた…。
今俺はどうしてるのか?義理の妹と風呂に入ってるんだよ。
人生って、分かんねえなぁ…。
◇
「お母さんだけ家族風呂、ズルい。こっちも家族で風呂に入るべき」
「いや、何でそうな――」
「兄さん?」
「い、いえおっしゃるとおりです!!」
「む、分かればいい」
そんなやり取りをして、現在。
丁度、美夜さんがやってたように、身体にバスタオルを巻いて一緒に入っている。俺は腰だけ巻いてる。
「…二人でも思ったより、ゆっくり入れるな」
「かいてき~、んふ」
俺は平均的男子高校生の体格だけど、寧々子はぶっちゃけ小学生か中学生くらいの背丈しかないしな。
そのボディも、置き場所に困らない薄型設計だし。
しかし寧々子は機嫌良さそうだ、よかった…あのままだったらどうしようかと思った。怖かった…。
そういえば風呂嫌いじゃなかったのか?
「きょうは、お風呂のきぶん」
「別に嫌いではないんだな」
「む~、洗うのはめんどう」
なるほどな。
そういえば、11月26日は語呂合わせで【いい風呂の日】だったっけ。
いや、今は4月だから関係ないけどな?言わないといけない気がして。
「じゃあ、頭だけ洗ってやろうか?」
バスタオルの防御力が俺の想定以上だったから、その位の余裕は出来た。
「いいの?」
「頭だけな、流石に身体は無理だけど」
「それはまだいい」
「まだって何だ…」
「成長してから」
「成長かぁ…」
胸の話だろうなぁ。
成長期、来るのか?
まあ、寧々子の場合は、”貧乳”というより”無乳・零乳”だから、減る事はない。
前向きに言い換えれば、成長の可能性しか無いわけだ。
本人には言わない、俺は妹を傷つけたくないからな。
湯船から上がり、後ろから妹の髪をわしゃわしゃ泡立てる。
「あわあわ~」
「かゆい所ある?」
「ん~、うずまきのあたり?」
なるほど、ここが良いのか。
お兄ちゃん、おぼえたぞ。
ぬるめのシャワーで流してやると、頭をぶるぶる振って水気をとばし始めた。
「冷たいつめたい!」
「ぬ、兄さんごめん」
洗い終わった髪を手早く髪を纏めていく寧々子。髪の毛全部上げると、うなじが良く見えるな。
…ちょっと、色っぽいと思ってしまった。
「さっぱさっぱ」
「そうか、よかった」
「ん、兄さんありがと」
色っぽさに、可愛さが上乗せされた。
…ちょっと油断してた、やばいかも。
いや、大丈夫。俺はお兄ちゃんだからな。
「ん、今度はわたしが洗う」
「おお、そうかありがとう」
「ここ、すわって?」
「おお…なんで前から洗うの?」
やりにくくない?
「後ろは顔がみえない、あわが目に入る」
「ああ…そういうもんかな?」
まあいいんだけど。
あとそれ、寧々子のシャンプーとコンディショナーじゃね?
「なあ妹よ、俺のシャンプーは?」
「カラだった、ざんねん」
「そっかー、買ったばっかりだった気がしたけど、明日買いにいくか」
「ぬ、買う必要ない、わたしと同じにすればいい」
「そ、そおか?」
「んむ、経済てき」
…まあいいか、この妹の行動原理を完全に理解するのは無理だ。
「ん~ふふふ~♪」
「あー、そこそこ、うん…」
…真正面だと、色々見えそうで危険だな。
迂闊だった、バスタオルがタイトスカートみたいになってるから、脚の奥とかやばい、かなりヤバイ。
そして、もうひとつ。寧々子が手を動かすとタオルが少しずつ下がる。
多分、引っ掛かる場所が無いからだ。
…まあ、普通に注意するか。
「おい、寧々子。タオルずり落ちるぞ…」
「ぬ、兄さん持ってて」
「…そうきたか」
仕方ない、持つよ。
なんか、そんな気はしてたし。
…なんで俺は、同い年の女の子のタオルを、下がらないように押さえてるんだろうな。
順応してんな、俺。
「流していい?」
「ああ、分かった。目閉じてるから」
やっと、妹のタオルを押さえるバイトから解放されたか…。
んー、ちょっとシャワーの温度が俺には俺には温すぎるな。
あと、なんだ?うまく頭にお湯が掛かってない気が。
「おーい、ちょっと温度上げたいから一回止めて…」
「待って!今こっちみないで!」
「んん?!あ、ああ…??」
なんだ?シャワーベッド放り出して、浴室出てったけど。
なんだか、化粧ガラスごしに肌色が見えるな。
…あいつ、タオル全部脱げたな。
慌てると、あんな悲鳴もあげるのか、寧々子は…。
俺は、お湯が出しっぱなしで暴れるシャワーヘッドを拾うと、自分でさっと泡を流し、そそくさと湯船に入り背中を向けた。
「…ん、お待たせ」
「お、おう…寒いから、早く入れる」
…なんか、ちょっと気まずいな。
「兄さん、もう少し寄る」
「お、おう」
いや、なんでこっちに来る。
そう思ってたら、浴室の縁に何かセットしてるな…あれ、スマホか?
防水なんだな、いやそうじゃなくて。
「寧々子、何してんだ?」
「ん、お母さんにテレビ電話する」
ああ、さっきは話す前に切ったからな。
…いや、何で今??
「ちょっと動かないで」
「え、ああ分かった…?」
俺に背中を預けて、湯船に入り直す寧々子。
丁度、俺が抱き抱えてる形だ。
お、電話が繋がった。
…まて、いやまて。
「いえーい、お母さんみてるー?」
「お前こんな事で母親に対抗してんじゃねえーーー!!はーーなーーれーーろーー!!親父に見られるからーーもーーーう!!」
『あらあら、あなたーーー!子供たちの新しい成長の記録よーーー!!』
やめて!親父を召喚しないで!!
「でんわを消せーーー!!」
「だめ、ふふふ」
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