第7話
玄関先からリビングに移動した。
寧々子はしがみついて離れないので、そのまま脇に手をいれて猫みたいに運んだが、何故か不満そうな顔をされた。
いつものソファーに座ると、相変わらず俺の腕にしがみついてそばから離れない寧々子は、少し恐る恐る話し掛けてきた。
「…兄さん、おこってる?」
「あ…いや違うんだ、寧々子にじゃない。
さっきの話聞いてたら、俺も腹立ってきて。酷いこと言う奴がいるなと思ってた」
「…ん、小学生のころ」
「結構前の事か」
親が離婚した事で、からかわれたんだろうな。俺も似たような事あったし。
あの時も怒ったけど、寧々子のいじめられた話を聞いてたら、同じ様に腹が立った。
なんだか、自分の事のように感情的になってしまった、シンパシー感じてるのかも。
「小学生三年の時、そう言われて、いじめられた事がある」
「…俺も似たような事あったよ」
「…兄さんも?」
「うちも小三の時に親父が離婚したから、その時に。まあ、ケンカになって学校に親父呼ばれたけどな」
「…結構やんちゃ?」
「いやいや、子供のケンカだよ。お互いに鼻血だして泣いて終わった」
「…ふふ」
寧々子も落ち着いてきたみたいだ、良かった。
「小学校の時、髪の毛もしゃもしゃ、身体も小さいから、男の子からかう」
「ああ、小学生男子ってそんな感じだもんな」
「ん、中学だと逆になった」
「モテるようになったんだな」
まあそうだよな、小柄で可愛いし、成長して癖っ毛もチャームポイントになってくる。つか実際に今可愛いし。
「それで、付き合ったりしたのか?」
「ん、ぜんぶ振った」
言いながら、どや顔の寧々子。
「いじめてた奴も来た」
「ああ…あれか?好きだから逆にっていう」
「知らない、そいつは派手に振った」
「…まあ、そうなるよな」
そりゃ、同情は出来ないな。
自業自得だ、うん。
まあ、中学時代は寧々子も、かなり逞しく生きてたみたいだな。
「でも、今後いじめられる事があったら俺に言えよ?必ずお兄ちゃんが守るから」
「…ん、ありがと…兄さん」
…凄く微笑んでる、これは初めて見るな。
やばい、寧々子が…いや、妹が可愛いすぎる。
あ、元に戻った。
「兄さん、顔見すぎ」
「ご、ごめんつい」
「ん、ゆるす、ふふ」
もう、大丈夫みたいだな。
むしろ、機嫌よくなった?
隣でベッタリなのは変わらないけど。
しかし、何で寧々子はここまで俺にくっついてくるんだろうな。
…もしかしたら、過剰に甘えてくるのは、家族が離れるかもしれないって言う、過去のトラウマからなのかもな。
それと、寝てる間に家族が居なくなるのが怖いから、一緒に寝ようとしたりすると。
そうだ、よく考えてみたら最初の日、俺は部屋に鍵なんて掛けてない。じゃあ誰が?同じ部屋にいた寧々子だろう。
結構、無理してたのかもしれない、俺に気に入られようとして…。
「なあ、寧々子」
「なに、兄さん」
「お前も、必死に頑張ってたんだな…自分なりに、俺と仲良くなろうとして」
「…ん~?」
「でもな、もう大丈夫だ。俺にとってお前はもう家族だし、だから心配しなくてもいいんだ。
お前も女の子なんだし、過剰にスキンシップ取って俺の気を引いたりしなくていいんだ」
「む~…なにが?」
「いや、だから今まで、俺に気に入られようとして無理してたんだろ?
じゃなきゃ、普通女の子が、男にべたべたしたりパンツみせつけたりしないだろ。
もう、自分が嫌な事はしなくていいんだ。そんな事しなくても、俺達は家族で、お前は俺の妹なんだから、嫌いになったりしないよ。だから――」
「…あにきのアホ」
…ん?機嫌が一気に悪化したんだけど??
「あれ、怒ってる?」
「もういい、ご飯の用意する」
「あれれ…?」
んん?何か間違えた??
「いいから手を洗う」
「あハイ、すいません…」
肘まで念入りに手洗いした後、リビングに戻ってから、ふと思い出して寧々のに声をかけた。
「あのさ、スマホの連絡先交換しないか?」
「む、する」
…考えてみたら、女性のアドレス手にいれるの、これが初になるのか。
最初が家族っていうのは、少し複雑な気持ちだな…。
「これが、女子のアドレスか…」
「男の子のアドレス、はじめて…」
声が被った、お前もかよ。
ちょっと恥ずかしい。
とか思ってたら、寧々子のスマホから着信音が?
「む、お母さんから」
「お、テレビ電話でかけてきてるな」
何処かの温泉に来てるのかな?湯けむりで画面がよく見えないな…。
『もしもし~、お母さん達は今、温泉に入ってま~す』
やっぱり温泉か。なんか、口調が旅番組のリポーターみたいだな。
『家族風呂で貸し借りなの、お父さんと二人で入れるし、ゆっくり出来ていいわぁ…』
親父は何処にいるんだ?ああ、カメラ撮影に回ってるんだな。自撮りにしては引いた映像だし…あれ?
美夜さん、あんなに胸あったっけ??
肝心な所はタオル巻いてるし、お湯に入って見えないけど…まて、あの大きさ…Dどころじゃない?!
身体に巻いたタオルの上からはみ出そうな、凶悪な物体が…。
多分あの胸だけで1㎏はあるはず。
『あら?もう…圭人君たら。お義母さんのおっぱい、そんなに気になるのかしら?』
「ああああ!いえいえいえ見てませんって!!」
『ふふ、別にいいのよ?でも、こんなオバサンだから恥ずかしいわぁ。
まあ、圭人君も男の子なんだし、気になるのは仕方がないわよね~うふふふ』
がっつり気になるわ!
あの半球の大きさ…EかFはある!?
え、もしかして着痩せしてたの??
『それでね、二人の生活の様子を――』
「お母さんに話すことはない」
あ、寧々子が電話を切った。
そりゃもう、勢いよく。
あ、電源も切った。
俺のスマホのも切られた。
「あ、あのー、寧々子さん、そのですね…」
「兄さん?」
「あ、うん、ごめんなさい」
「兄さん?」
「え、はい…」
やばい、よく分からないけど凄いヤバイ。
寧々子は普段は無表情だ、でも多少は感情で変化がある。
でも、今は"無"だ。
そして瞳孔が開きっぱなし。
「兄さん?」
…なんか、同じセリフしか言わないし。
…。
よし、とにかく土下座だな。
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