第2話
やはり、彼女は俺と同い年だった。
制服は、この春から俺と同じ学校に編入するから、試しに着ていたらしい。
まあ、今春休み中だしな。
「こちらが前に話した、父さんの再婚相手の美夜さんだ。
さっきの子が寧々子さん、お前の義理の妹になる」
「美夜です。はじめまして圭人さん。
ごめんなさいね、うちの寧々子が…」
「い、いえ大丈夫ですから。
すいません、俺がシャワー浴びるまで待たせてしまって」
まだ午後3時過ぎだが、魚臭を消さないと噛まれてしまうので。
あと、腕も歯形と唾液が付いてた。
悪い気はしなかったよ、可愛いし、唇柔らかかったし。
正直、ちょっとドキドキした。
ただ、外から帰ったばかりではやらせないようにしよう。
洗わないとバイ菌とか口から入ってしまう。
「でも、あの子ったら…圭人君に、【腕カミカミ】をやったのねぇ…」
「あれ、よくやられてるんですか…」
美夜さんが落ち着いてるわけだ。
「ううん、初対面の人にやったのは見たことないわね。それに、男性にやったのも。
そういえば圭人君、何処かでお魚に触るような事したかしら?」
「バイト先が、ネギトロの加工工場なんです」
「また珍しい所で働いてるわね」
時給が良かったんだよなあ。
「でもね、初対面であそこまで他人になついてるのは初めてみるのよ。
圭人君、寧々ちゃんに余程気に入られたのね」
「最初は驚いたが、仲良く出来そうなら父さんも安心した」
「あれで安心できるのか、親父は」
俺が安心してないんだが。
「そういえば、寧々子…さんは何処に?」
シャワー浴びたら、もう居なかったけど。
「あの子なら、満足して自分の部屋で寝てるわよ」
「二階の空き部屋あったろ、あそこは寧々子さんの部屋にしたからな。
圭人がバイトに行ってる間に、業者さんが引っ越しも終わらせてる」
そういえば、リビングに物が増えてるな。
しかし、近々再婚するとは聞いてたけど、今日引っ越して来るとは。
「いや、聞いてないよ親父」
「すまんな、ちょっと驚かせてやろうと思って」
「全く…まあ、今日から家族が増えるってことか。それは俺も嬉しいよ。
こんな父ですが宜しくお願いします、美夜さん」
「ふふ、よかったわ。
こちらこそ宜しくお願いね、圭人君」
まあしかし、俺と同い年の娘がいるって事は、親父とそう変わらない年齢だよな。
よくこんな美人さんつかまえてきたな…。
あの義妹も、成長したらこうなるのか?
面影はあるし、実際今も可愛いけど、ちょっと想像できないな…。
「あら、何かしら?
お義母さんの顔に、何かついてる?」
「あっ、すいません!
いえ、こんな素敵な方と父が、どうやって夫婦になれたのか不思議で」
「ひどいな息子よ…まあ、そこまで言うなら、父さんたちのなれ初めを聴かせよう」
「いや、いいって」
相変わらずノリがいい親だな。
そういう親父は嫌いではないけど。
「あれは、父さんが仕事の合間に、よく行く喫茶店で休憩してた時だ。
当時既に顔見知りだったが、店員だった美夜さんが注文したアイスコーヒを父さんのズボンにこぼしてな」
案外、ドジっ子なのか…美夜さん。
「慌ててズボンを拭いてくれたんだが、その時に父さん…勃○してしまったんだ」
「なに言ってんだオヤジーーー!!」
義母の前で下ネタ突っ込むな!!
「ふふっ、それでね『ああっ、申し訳わけありませんお客さま!火傷して腫れてしまってるのかも!』と言って、バックルームに連れていったのよ」
「アイスコーヒで火傷はしねーよ!!」
義母さん、あんたもかよ!!
「すまんな、今の圭人の年齢だと、話せるのはここまでだ」
「もう聞きたくねーよ!!」
「続きは成人式が終わったらかしら?」
「けっこうです!!」
案外似た者同士だったかこの夫婦はー!
「ごめんなさいね、うちの家系って肉食系なの」
「ああ、だから俺もかじられたんですね」
「寧々子さんのは父さん、美夜さんの言う肉食系とは違うと思うがな」
「親父は黙っててくれ」
全く、うちの親どもは。
まあ、これだけ息のあったやり取りが出来るなら、夫婦仲は問題ないな。そこだけは安心だ。
◇
「ふああ、俺も眠いな…」
まだ夕飯には少し時間があるし、俺も少し部屋で寝ようかな。
こんな時間にシャワー浴びたからかな、いや心労だよな多分。
そう思いつつ、部屋のドアの前まで来る。
寧々子の部屋は隣か…今どんな寝顔で寝てるんだろうな。
女の子の部屋か…ちょっと覗いてみたい、いやよこしまな気持ちはないけどね。
ちょっとした好奇心…すいません、ウソつきました。
いや、だって急にあんな可愛い女の子が、義妹とはいえ同じ家で暮らすとか言われたら、ちょっと浮かれても仕方ないって。
「まあでも、嫌われる様な事はしないように気を付けないとな。お兄ちゃんになるんだし」
自分に言い聞かせる。わざわざ声に出すのは決意を固くするためだ。
俺はお兄ちゃん、俺はお兄ちゃん…よし。
「…取り敢えず、一眠りして落ち着こう」
なるべく隣の部屋を意識しないようにして、さっさと自室に入り込む。
隣で寝てる筈の義妹を起こさないよう、静かにドアを閉めると、少し膨らんだベッドに入り込んだらぷにっとした感触がありそこには寧々子が居てえええええ!!??
「お、おま??なんでここで寝てんだよ!!」
「ぬー、寒いから早く入って」
「そうじゃねえだろキミの部屋は隣だろうが!」
「荷物ほどいてない、めんどくさい、こっちの方が良い匂い」
「いやいや!年頃の女の子が知らない男性の部屋でベッドに入っちゃいけません!」
「大丈夫、わたしたちは義兄妹、かぞく」
「あ、そっかー家族なら問題ないよね」
ならいいか、妹が寒がってるし早く一緒のベッドに入るか。
「いや入れるかっ!」
とりあえず二度寝しそうな寧々子を無理矢理起こした。
「あのな、兄妹と言っても義理なんだし、その…何か男女の間違いが起こったら困るだろ?」
今だって、スカートから伸びた足が気になって仕方がないんだよ。
「ぬー、あにじゃは頭が硬い」
「兄者って又古風な呼び方だな…じゃなくて
まいったな、それに制服も着たままじゃないか。
せっかく真新しいのに、ヨレるぞ?
「まず、シワになるから制服は脱ぐ!それで自分の部屋で寝る!おっけー?」
「わかった、あにじゃ。まず制服をぬぐ、そして寝る」
そうそう、それでいい…って最初と最後以外飛ばすな!!ココで脱ぐな!!
「おま、お前!!自分の部屋で着替えろ!!脱ぎ散らかすな!!」
そんで脱ぐの早いなオイ!!
上はキャミソールだから、ブラは肩紐くらいしか見えない…あれブラ付けてるよな?
まさか、慎ましい体形だからキャミだけってのは無いよな?あれ、先端…。
んで、下はもうパンツが…お尻小さくて可愛い、じゃないんだよ俺!
「俺はお兄ちゃん!俺はお兄ちゃん!!おおおおお!!」
そうだ、義理であっても俺はお兄ちゃんだ。
そして巨乳派だ、貧乳派じゃない、だから我慢できるはず!
ああっダメだ、俺には童貞というバッドステータスが付いてた!童貞には厳しい!!
誰がバッドステータスだ!余計なお世話だ!!
「お前もういいからぁ!早く布団にに入れよぉもうっ!」
「うにゃ~、おやすみ~Zzzz」
「ばかな、早すぎる…」
もう寝たのか、どうなってんだ。
「…床で寝るか」
ひざ掛けあるし、あれ被って寝よう…やっぱりちょっと寒いな。
まあ、寝れない事は無いだろ。
でも、毛布一枚くらいこっちにくれないかな…おっと、寧々子の布団がずれて肩が出てる。
かけ直してやらないと、俺の精神があぶない。
「ふう…これでよし」
しかし、とんでもない女の子が家族になったなぁ。
…寝顔だけ見ると、普通の女の子だな。
気が付いたけど、いま下着姿の女子高生が、俺のベッドで寝てるのか…。
いやいや、考えるな俺。さっきのパンツとか思い出してるんじゃない。
「…でも、可愛いんだよなぁ」
美夜さんも美人だったし、この義妹もその遺伝子の影響を受けてるんだよな。
ぶっちゃけ可愛い、でもポンコツ、いや小動物?
「…なんだろう、義妹と猫が一度に増えた感じ、か?」
玄関で噛みつかれてたの、この辺だったかな。
なんとなく、歯形が残ってた辺りをさすってみる…ちょっと変な気分だ。
なんだろうな、これは。
「俺は…なんでドキドキしてんだろう」
多分、心労だな。
不整脈が出て無いか心配だ、あまり長引くなら医者に行くか。
「よし、寝る。寝るぞもう」
本当に疲れた、眠い。
おやすみなさい~…。
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