黒猫少女が義理の妹になりました

taketen

第1話

俺の通う高校の、同じクラスには変わった女の子がいる。

天然で自由奔放、ジト目でネコっぽい仕草、無表情かと思えば不適に笑う。癖っ毛の髪をゆらゆら揺らし、たまに日向でぼーっとしてる。

小動物的な彼女の名前は【寧々子】、よく黒猫ちゃんと呼ばれてる、クラスのマスコットな存在だ。


そんな彼女は、俺の…義理の妹だったりする。





「あれ?」


バイトから帰宅したら、玄関の廊下に知らない女の子がペタンと座ってた。

高校のブレザー、ブリーツスカートから小柄で華奢な足が伸びて、女の子座りしたまま不思議そうにこっちを見てた。


…俺、帰る家間違えたか?いや、そんな訳ないよな。


「ふぁぁ~」

「欠伸してる…」


少し癖っ毛の髪、眠そうな瞳だ。

俺の通う高校の制服を着てるけど…見たこと無いな、でもあの制服…同じ二学年だよな?まだ春休みだと思ったけど、今日登校日?

とか考えてたら目があった。


「…だーれ?」

「いや、ここの家の住人だけど…って、そっちこそ誰だよ、ここ俺の家…だよな…?」

「うん、多分そう?」


コテン、と首をかしげた。何かこの子…仕草が猫っぽいな。

あまり表情は変わらないが、上目遣いでこっちを見つめてくる。

あれ、結構可愛い…。


「じゃなくてな、キミはだれ?」

「ぬー?寧々子」


寧々子ちゃんね、名前は分かった。

他は何もわからん。


「…それで、キミは此処で何してるの?」

「何もしてないよ?」


そっかー。

いや、そうじゃなくて。

変わらず眠そうな目、でも視線をそらさないで、真っ直ぐこっちを見てる。

もしかして、この表情がデフォルト設定なのかな?

うーん、話が進まない…。


「とりあえず…上がってもいいのかな…?」

「仕方ない、いいよ」

「ありがとう。いや、何でだよ」


…まあいいや。

というか、多分だが親父が何か知ってるだろ。そっちに聞いた方が早い。


そういえば、玄関に見慣れない靴が二足ある。

片方は目の前にいる女の子…寧々子のだな。

もう片方は、大人の女性のかな。


「ぬう、待って」

「え、いや何?」


玄関に座り靴を脱いでると、寧々子ちゃんは俺の腕を取り、着てるパーカーの袖を勝手に捲る…この子は何をやってるんだ?


「スンスン…やっぱり匂う」

「マジか?いやバイト帰りだけど、そんなに汗臭いか…?」

「んん、ちがう、汗じゃない」


違うのか、じゃあ何故そんなに嗅ぐ。鼻先が肌に触れてくすぐったい。


「くんくん、ぬうー…」


ん?動きが止まった…なに?何故そんなに口を開けてるんだ?


「がうっ」

「は?何をしてるの!?」


腕に噛みつかれたんだが?!

いや、痛くはないけど、甘噛みだし。


「…何で噛みついてるんだ?」

「ん、おふぁかなのにほいかする」


…ああ、お魚の匂いね。

多分、バイトの仕事内容のせいだな。

うーん、ますます猫っぽい。

いや、そういう事じゃなくな?

何かもう、考えても仕方ない気がしてきた。


うーん…見てたら、頭撫でたくなってきたな。


「ほーらほらほら」


頭を撫でても、相変わらず俺の腕を噛み噛みしている寧々子ちゃん。少し癖っ毛だけど髪の指通りがいい。

最初は子供の頭を撫でるようにしてたけど、途中から猫の頭にするみたく、軽く爪でかりかり撫でてたら、気持ちよさそうな感じになってきた。


「んふー、んーふふふ」

「おーここが気持ちいいかーよしよし」


かなり気持ち良かったのか、俺の腕を噛んだまま、潤んだ瞳を上目遣いで向けてくる。

そこで、この子は猫じゃなく同い年の女の子だと思い出した。


うっ、なんだ…急に猫が美少女になったような錯覚だ。いや、元々人間なんだが。

小柄な子だな、中学生って言われても信じるぞ。

いや制服で判断したけど、本当に高校生だよな…?

小さな顔で腕にかじりついてる。歯と唇の柔らかい感触が。

寧々子本人の可愛いらしさもあり、いけない事してるみたいな罪悪感が出てきた…。

ん、何か近くに人の気配が…。


「…帰ってたのか、圭人。

それで、何だその状況は…?」

「親父!?いや待ってちがうんだって!!」


なんだその、息子のエロ本見つけてしまったみたいな顔は!


「圭人、お前…今日会ったばかりの義理の妹に、何をさせてるんだ…父さん引くぞ」

「させてねーよ!この子が勝手に…待って。

…いま、義妹いもうとって言った?」


え?この子…寧々子が?

俺のいもうと??

俺の腕をかみかみしてる、こいつが?

はああああ?!


「いや、キミもそろそろ離そうな?」

「はむはむ」



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