黒猫少女が義理の妹になりました
taketen
第1話
俺の通う高校の、同じクラスには変わった女の子がいる。
天然で自由奔放、ジト目でネコっぽい仕草、無表情かと思えば不適に笑う。癖っ毛の髪をゆらゆら揺らし、たまに日向でぼーっとしてる。
小動物的な彼女の名前は【寧々子】、よく黒猫ちゃんと呼ばれてる、クラスのマスコットな存在だ。
そんな彼女は、俺の…義理の妹だったりする。
◇
「あれ?」
バイトから帰宅したら、玄関の廊下に知らない女の子がペタンと座ってた。
高校のブレザー、ブリーツスカートから小柄で華奢な足が伸びて、女の子座りしたまま不思議そうにこっちを見てた。
…俺、帰る家間違えたか?いや、そんな訳ないよな。
「ふぁぁ~」
「欠伸してる…」
少し癖っ毛の髪、眠そうな瞳だ。
俺の通う高校の制服を着てるけど…見たこと無いな、でもあの制服…同じ二学年だよな?まだ春休みだと思ったけど、今日登校日?
とか考えてたら目があった。
「…だーれ?」
「いや、ここの家の住人だけど…って、そっちこそ誰だよ、ここ俺の家…だよな…?」
「うん、多分そう?」
コテン、と首をかしげた。何かこの子…仕草が猫っぽいな。
あまり表情は変わらないが、上目遣いでこっちを見つめてくる。
あれ、結構可愛い…。
「じゃなくてな、キミはだれ?」
「ぬー?寧々子」
寧々子ちゃんね、名前は分かった。
他は何もわからん。
「…それで、キミは此処で何してるの?」
「何もしてないよ?」
そっかー。
いや、そうじゃなくて。
変わらず眠そうな目、でも視線をそらさないで、真っ直ぐこっちを見てる。
もしかして、この表情がデフォルト設定なのかな?
うーん、話が進まない…。
「とりあえず…上がってもいいのかな…?」
「仕方ない、いいよ」
「ありがとう。いや、何でだよ」
…まあいいや。
というか、多分だが親父が何か知ってるだろ。そっちに聞いた方が早い。
そういえば、玄関に見慣れない靴が二足ある。
片方は目の前にいる女の子…寧々子のだな。
もう片方は、大人の女性のかな。
「ぬう、待って」
「え、いや何?」
玄関に座り靴を脱いでると、寧々子ちゃんは俺の腕を取り、着てるパーカーの袖を勝手に捲る…この子は何をやってるんだ?
「スンスン…やっぱり匂う」
「マジか?いやバイト帰りだけど、そんなに汗臭いか…?」
「んん、ちがう、汗じゃない」
違うのか、じゃあ何故そんなに嗅ぐ。鼻先が肌に触れてくすぐったい。
「くんくん、ぬうー…」
ん?動きが止まった…なに?何故そんなに口を開けてるんだ?
「がうっ」
「は?何をしてるの!?」
腕に噛みつかれたんだが?!
いや、痛くはないけど、甘噛みだし。
「…何で噛みついてるんだ?」
「ん、おふぁかなのにほいかする」
…ああ、お魚の匂いね。
多分、バイトの仕事内容のせいだな。
うーん、ますます猫っぽい。
いや、そういう事じゃなくな?
何かもう、考えても仕方ない気がしてきた。
うーん…見てたら、頭撫でたくなってきたな。
「ほーらほらほら」
頭を撫でても、相変わらず俺の腕を噛み噛みしている寧々子ちゃん。少し癖っ毛だけど髪の指通りがいい。
最初は子供の頭を撫でるようにしてたけど、途中から猫の頭にするみたく、軽く爪でかりかり撫でてたら、気持ちよさそうな感じになってきた。
「んふー、んーふふふ」
「おーここが気持ちいいかーよしよし」
かなり気持ち良かったのか、俺の腕を噛んだまま、潤んだ瞳を上目遣いで向けてくる。
そこで、この子は猫じゃなく同い年の女の子だと思い出した。
うっ、なんだ…急に猫が美少女になったような錯覚だ。いや、元々人間なんだが。
小柄な子だな、中学生って言われても信じるぞ。
いや制服で判断したけど、本当に高校生だよな…?
小さな顔で腕にかじりついてる。歯と唇の柔らかい感触が。
寧々子本人の可愛いらしさもあり、いけない事してるみたいな罪悪感が出てきた…。
ん、何か近くに人の気配が…。
「…帰ってたのか、圭人。
それで、何だその状況は…?」
「親父!?いや待ってちがうんだって!!」
なんだその、息子のエロ本見つけてしまったみたいな顔は!
「圭人、お前…今日会ったばかりの義理の妹に、何をさせてるんだ…父さん引くぞ」
「させてねーよ!この子が勝手に…待って。
…いま、
え?この子…寧々子が?
俺のいもうと??
俺の腕をかみかみしてる、こいつが?
はああああ?!
「いや、キミもそろそろ離そうな?」
「はむはむ」
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