カーネーション
五月の風を髭で感じながら、君はじっと窓の外を見ている。
何かを思い出しているような、何も考えていないような、君がわからなくなる。
「ねぇ、どうしたの?」
優しく君に尋ねると、いつものように僕の指に頭を寄せるけど、今日の君はなんとなく違う気がする。
母に花を贈らなければ。
今日の君を見ていたら、なんとなくそう思った。
温かく優しく強く、遠く、近い母。
大きく窓を開けると網戸からびゅうっ、と風が入ってきた。
新緑の気持ちに包まれて、懐かしい気持ちで君を見つめていたら、君の舌が僕をざり、と撫でた。
何故だかまた、母を思い出した。
僕は一人では生きられない。
母を想い、君を想う。
明日のことを考える気持ちになって、僕は炊飯器のスイッチを押した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます