三月の雪

 この頃、私の柔らかい毛がたくさん抜けている。

 たぶん、暖かい季節がやって来ると思う。

 だけど今朝は何だか冷え込んで、私は顔がむずむずするような気がしていた。

 少し前から、いつもは朝になるといなくなる大きくて馬鹿な猫がずっといて、私のご飯とトイレの時間以外、ずっと大きい布団の中にいる。

 私が元気のない時、大きくて馬鹿な猫は前足を私のおでこに当てるから、私もそうしてやった。

 私の肉球が熱くなったけど、あなたは笑ったみたい。

 いつもはなぜか後ろ足だけで歩くあなただけど、今日はちゃんと前足も使って窓まで歩いていく。その方がいいわ。あなたふらふらしてるもの。

 それからあなたが透明な壁を開けると、冷たい空気が髭を包んで、私は目をぱちぱちさせた。

「ユキダヨ」

 あなたが何か言ってこっちをみて笑ったから、私はここにいるから。と鳴いた。

 透明な壁の向こうの空から、白い、花びらみたいな水玉がぽろぽろと降っている。

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