第36話 23年前の夢を見る真一…『真一と優香・それでも“幼なじみ”』①

(回想・夢の中)

真一がシャワーを浴びに風呂へ向かった。



真一が風呂でシャワーを浴びている。頭を洗うためにシャンプーをし始めた。泡が入らないように目を瞑って頭を洗っている真一。すると、後ろで風呂の扉が開く音がした。




優香「こんにちは」

真一「えっ…❗ ちょ、ちょっと優香ちゃん、オレ(風呂に)入ってるで」



優香が服を脱ぎ、全裸で風呂に入ってきた。

真一は目を瞑ったまま頭を洗っていて、優香から背を向けたままなので、真一は優香が全裸で風呂に入っていることは、この時わかっていない。



優香「知ってる。だから、一緒に入ろうかと…」

真一「いやいやいや、意味がわからん」

優香「何焦ってるの?(笑) ほら、頭そのままにして。シャンプー流してあげるから」




優香が真一の頭をシャワーで洗い流す。その後、リンス(コンディショナー)も優香が真一の頭につけて洗う。

シャワーでリンスを洗い流した後、真一が優香に背を向けたまま話す。




真一「なぁ、ナンボ幼なじみと言うても、オレ一応男なんやけど…」

優香「そうやで、真一くんは男の子や。私の『幼なじみで初恋の人』やもん。もう別に一緒にお風呂入ってもええやん。たった今、私ら付き合い始めたばかりなんやから、『裸の付き合い』してもいいんじゃない? それに、少しでもしんちゃんの『トラウマ』を解かさんとなぁ…」




真一と優香が一瞬沈黙する。

そして優香が後ろから、髪を洗い流した真一の背中にもたれながら抱いた。


真一は固まった。




真一「ちょ、ちょっと優香ちゃん…。まさかの全裸? あ、あまり刺激が強いのは、体に良くない…」

優香「別にええやん…。何か具合悪いことでも…?」

真一「あ、アカンのや…。男特有の問題や…」

優香「何? 私で興奮したん(したの)?(笑)」

真一「ゆ、優香ちゃん…。昔はこんなん(こんな人)やなかったのに…」

優香「ん? 今は、しんちゃんの『トラウマ』を荒療治してるの。普通男の子やったら、喜ぶと思うんやけどなぁ…。しんちゃんやから、仕方がないもんなぁ…。でも体は正直やで、ほら(笑)」

真一「ちょ、ちょっと優香ちゃん、どこ触ってんの?」

優香「(笑)。真一くん…」

真一「な、何?」



優香が真一を振り向かせ、お互いを向いている。

お互いに顔を真っ赤にしながらも、優香は長い目で真一をしっかり見ている。

真一は複雑な心境だったが、優香が自分の為に親身になってくれていることは何よりもわかっていた。




優香「しんちゃん、体まだ洗ってないでしょ? 洗ってあげる」

真一「別にいいって、自分で洗うから…」

優香「ダーメ、全部洗ってあげる」



優香は強引に真一の体を洗い始めた。真一は困惑していたが、これ以上優香に何も言えなかった。優香にされるがままに体全体を洗ってもらう真一だった。



真一「なぁ、嫌じゃないの?」

優香「しんちゃんやから、いいの。ほら、こんなになって…。後でいっぱいしてあげるね(笑)」

真一「ゆ、優香ちゃん…。無茶したらアカン…」



真一が終始赤面し困惑しているのに対し、優香は赤面していても、何食わぬ顔でシャワーで真一の体を洗い流した。




優香「じゃあ今度は、私の体を洗ってくれへん(くれない)?」

真一「オレが優香ちゃんを? 背中…流すの?」

優香「全部(笑)」

真一「え❗」

優香「私はしんちゃんの体全体を洗ったよ。今度はしんちゃんの番やで」

真一「ホンマに言うてんの?」

優香「うん、マジやで。見たかったでしょ、私の体(笑)」

真一「べ、別に…」

優香「顔に書いてあるで。『優香ちゃんの裸が見れる』って(笑)。普通、男の子なら喜ぶと思うけどなぁ…。まぁ大丈夫や。私の体を見るのは、しんちゃんだけやからね」

真一「わ、わかった…」

優香「本当は全部洗って欲しいけど、今の真一くんでは刺激が強いみたいやから、背中だけでもいいよ…」

真一「全部、あ…洗うから…」

優香「無理しなくていいよ」

真一「あ…洗ってあげるわ」

優香「ありがとう(笑)」



優香が真一の頭を撫でる。

真一は心の中で思った。



真一(夢の中とはいえ、まさか優香ちゃんの背中を流すことになるとは…。なんかえらい話になってきたなぁ…)




そう思いながらも、真一は黙々と優香の体をタオルとボディソープで洗った。そして、シャワーで洗い流す。




優香「私の体、どう?」

真一「え…、どう…って、どうなんやろなぁ…」

優香「見たくなかった?」

真一「何て答えたらいいか…」

優香「(笑)。しんちゃん、ありがとう。洗ってくれたから、さっぱりして気持ちよかったよ」

真一「そうか…」

優香「後でもっと気持ちいいことしよっか?」

真一「はい?」

優香「(笑)。顔は赤いし、ここは…ほら、こんなことになってるし(笑)」

真一「それは…、優香ちゃんが触るからやろ?」

優香「まだ顔が赤いなぁ…(笑)。じゃあ、先にあがってて。私、シャンプーするから」

真一「わかった」



優香は、風呂からあがる真一の頭を撫でた。真一が風呂からあがったあと、優香は自分で髪を洗い、しばらくして風呂からあがった。



その後真一と優香は、また話始める。



優香「しんちゃん、私とお風呂入って良かった?」

真一「え…、悪くはなかったけど…ホンマに良かったんかなぁ…」

優香「いいよ。だって私らは『幼なじみで初恋の人』で、今日から付き合ってるんやからね(笑)」

真一「なんか、ややこしいなぁ…」

優香「一言で言えば『恋人』やん(笑)」

真一「うん…」

優香「しんちゃんから告白してきたのに、顔真っ赤やし、しどろもどろやし…(笑)」

真一「…………」

優香「昔から優しくて、真っ直ぐで、純情で、不器用で、ウソつけなくて、すぐに顔に出るし…(笑) 仕方ないもんなぁ…。それが真一くんやからね(笑)」

真一「…………」

優香「でも嬉しかったよ、しんちゃん。ありがとね。さすがしんちゃんや。しんちゃんはそうでなくっちゃ、しんちゃんやないもん(じゃないもの)」



優香が真一にそっと左肩にもたれる。

真一は黙って受け入れる。



優香「やっぱり、しんちゃんが落ち着くなぁ…。幼稚園の卒園式の時にファミリーレストランで甘えてた時から変わらんわぁ…」

真一「そうか?」

優香「うん」

真一「どうしたん、甘えてるんか?」

優香「うん…。しんちゃん、安心するわ」

真一「そうか…」



真一はそれ以上何も言わなかった。ただただ、優香に左肩を貸していた。優香も何も言わずに真一の左肩にしばらくもたれていた。真一はゆっくりと優香の左肩に自分の左手を添えた。優香は目を瞑って真一の左肩にもたれている。真一が右手で優香の頭をそっと撫でている。すると、優香の顔は安心しきっていた。








優香「なぁしんちゃん、眠たくない?」

真一「オレは大丈夫やけど…。眠たいか?」

優香「ううん、大丈夫。今日も一緒に寝よ」

真一「何か1日でこんなに変わるもんなんか…」

優香「わざとちょっと大袈裟にしてるときもある。しんちゃんの『トラウマ』解かそうとしてるから(笑)」

真一「そうか…」

優香「なぁ、しんちゃん…」

真一「何?」

優香「……………」












浅田「なるほどね。夢の中とはいえ、リアルやね。そんでもって23年ぶりに夢の中で『リベンジ』か…。なんかやっぱり、あの時(23年前)にオレがあんたに忠告とかしといたら、今頃は…」

真一「まぁ、あくまでも夢の中、妄想の話や」

浅田「そやけど、高校入学の時からずっと時系列に夢で再度経験するとはなぁ…。このコロナ渦、あんたにとってはホンマに自分の人生を振り返る時間なんやなぁ…」

真一「そんなええもん(良いもの)やったらええけど…」

浅田「すごいなぁ…。やっぱりあんたは、高校の時から一味違う人間や…とは思ってた。不器用やけど、裏切れない男やもんなぁ…」

真一「ただの『不器用でアホな男』やって」

浅田「そういえば、夢の中であの人(優香)と風呂入ってから、ずっと話してたんか?」

真一「……………」

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